人口減少時代のクリニックの院長先生に求められる仕事と技能とは
人口減少時代のクリニックの院長先生に求められる仕事と技能とは
公開日: 2019年4月28日
最終更新日: 2020年6月3日
当院は、2019年6月に名東区で開業した糖尿病内科のクリニックです。
開業する前は、すぐに外来が患者さんで一杯になるという甘い考えを持っていましたが、
現実には、開業した当初は、外来に受診して頂ける患者さんは少なく、胃の痛む日々が続きました。
起業する前は夢(理想)を見て、起業後は、現実を知ると言いますが、経営者として自分は素人である事を思い知りました。
その後、日々の勉強をしながら、トライ&エラーを繰り返し、紆余曲折を経て、
2020年6月の現在では、当院に通院して頂ける患者さんの人数も徐々に増えつつあるという状況です。
昔は、開業すると、すぐに外来が患者さんで一杯になったそうですが、
現在では、新規開業したクリニックで、外来に通院して頂ける患者さんはなかなか増えていきません。
その理由は、クリニックも、他の業界(飲食業やコンビニなど)と同じく、医療サービスの供給量が、需要を上回ったことが大きいと考えます。
将来的に人口減少社会が到来すると、地域によりますが、この傾向はますます強くなっていくでしょう。
今回は、実体験をふまえて、これからの人口減少時代に生きる院長先生に必要となる仕事や技能を書いていきます。
飲食店や士業などで起業された個人事業主や企業の社長さんにもほぼ同じようなスキルが必要となると思いますので、参考にして頂ければ幸いです。
医療サービスの需要が供給を上回っていた高度経済成長期したなどの過去の時代や、競合するクリニックが少ない郊外では、開業すれば、直後は、患者数は少ないものの、誠実な診療を心がけていれば、徐々に良い口コミが広がり、外来に通院される患者さんは増えていきました。
そのため、クリニックの院長先生は、毎日の診察、職員の採用、教育、マネージメント、社労士・税理士さんなどとのやり取り、学校健診や医師会等の地域の仕事に真面目に従事していれば、経済的には問題なく、過ごすことができていました。
しかし、人口減少社会が到来し、絶対的な外来患者数が減少しはじめたり、クリニックがどんどんと開業し、過密になった都市部では、クリニックの医療サービスの供給量が、医療需要を大幅に上回り、需要の獲得競争が始まります。
クリニックには、患者さんが通院される範囲である診療圏というものが存在します。
都市部のクリニックの診療圏は、特定分野に特化した専門のクリニックの場合には数km~数10kmとなる場合もありますが、一般内科なら、半径 500m ~ 1km、郊外で半径 3kmと比較的狭い範囲です。
また、医療機関への受療行動には、飲食業などの他の分野では認められない特徴があります。
それは、新規のクリニックができても、大きな魅力度の差や不満がなければ、定期通院しているクリニックを変更する事はあまりないという点です。
そのため、ある診療圏の中に、複数のクリニックが存在したと仮定すると、新規の患者は、それぞれのクリニックの魅力度に応じて、分散して受診することになります。
新規患者数が少なければ、当然、口コミの発生も少なくなるため、その後の患者数の増え方も少なくなります。
同じ診療圏内の内科クリニックでも、昔から存在するクリニックは受診者数が多く、新規のクリニックは受診者が少ないという現象は、これで説明がつきます。
経営の視点から見ると、内科クリニックというのは、競合が少ない時代に開業した側が圧倒的に有利ということです。
外来の患者数が増えて収益が増えて、黒字化するまでに、追加融資を受けられず、運転資金が枯渇してしまうと倒産です。
これからの時代で、競合クリニックの多い都市部で開業する場合には、実家が資産家か、数年分の運転資金(開業後は思ったよりも広告費・人材募集費等の出費が増えます。)を用意しなければ、難しいかもしれません。
(都市部では、内科が何件も撤退しています。)
医療サービスの供給量が不足する社会では、患者さんが人に聞くなり、ネットを検索するなりして、自院に来院して頂けます。
そのため、院長先生の最も重要な仕事は、自分の医療技術を研鑽し、患者さんに対して最善の医療を施すことでした。
しかし、医療サービスの供給が需要を上回った社会では、まず、はじめに数多あるクリニックの中で、自院を選択してもらわなければ、医療技術の高低は関係ありません。
どれだけ医療技術が高くても、医師が他科の先生の技量の高低が分からないように、患者さんからは、自分の技術がどう凄いのかは分かりません。
そのため、クリニックの院長先生の最初にすべき仕事は、他の業種の個人事業主の社長さんと同じく、仕事を取ってくる=もの・サービスの売れる仕組みづくり、つまり、マーケティングになります。
人口減少社会の院長先生の仕事は、次の通りです。
現段階でパッと思いついたこと、やっている事を記載しています。
開業当初は、予算の都合上、事務長は雇えませんので、院長に負担がかかります。
グーグルの検索システムは、作成後、半年間経過しないと、上位表示されません。
その間も、人件費・家賃などの固定費がかかるため、リスティング広告を出稿し、CPAを考慮しつつ、PDCAサイクルを高速で回します。
黒字化する前に運転資金が尽きたら終了です。
1 外来診療・往診
2 経営戦略の策定
2-1 診療圏調査
2-2 競合調査
2-3 自院のUSP(uniqu selling point)、ポジショニングの設定
2-4 集患戦略の策定
2-4-1 集客ファネルの策定(トップファネル、ミドルファネル、ボトルファネル)
2-4-2 広告予算の設定
2-4-3 広告媒体・方法の設定
(ホームページ(SEO対策・MEO対策)・ネット広告(リスティング広告・ディスプレイ広告)・野立て看板・駅看板・電柱看板・バス広告・電車広告・雑誌 他)
2-4-4 広告の効果測定方法の策定(外来・ネットのアンケート調査、CPA計測 他)
2-5 リピーター戦略
2-5-1 患者満足度の向上計画の策定
2-6 採用戦略の策定
2-6-1 運営人員計画(職種・雇用形態等)の策定
2-6-2 採用マーケティングの策定
2-6-3 人材募集方法の策定
2-6-4 人材採用基準の策定
2-7 人材教育戦略の策定
2-7-1 自分自身の医療技術の研鑽
2-7-2 スタッフ教育計画の策定
2-7-3 職種別のマニュアル作成
2-7-4 院内安全対策教育
2-8 財務戦略の策定
2-8-1 銀行への借入・返済計画
3 集患マーケティングの実務
3-1 ホームページ制作
3-1-1 ホームページのコンセプト設計・修正
3-2 ブログ制作
3-2-1 医療コンテンツ制作
3-3 広告出稿
3-3-1 ネット広告の設定(キーワード・単価・エリア・CPC・CVR・CPA)
3-3-2 各種の広告媒体との契約
3-4 広告のリスポンスの調査
3-5 患者さんへの広報活動
4 採用マーケティングの実務
4-1 出稿媒体の選定(ハローワーク、Indeed、ジョブメドレーなど)
4-2 出稿原稿の作成(女性向け・男性向け)
5 人材教育の実務
6 会計の実務
6-1 給与・諸費用等の振り込み
6-2 領収書の整理
6-3 税理士さんとの打ち合わせ
7 医療機器のメンテナンス
8 院内環境の整備
8-1 院内清掃
8-2 ネット環境の整備・管理
8-3 電子カルテのシステム管理
8-4 トラブル時の対応
9 医師会の仕事
9-1 休日診療所の当番医 など
1 診療能力(他院の専門医の先生が治せない病気を治せるレベル)
2 専門医の資格
3 難しい事を分かりやすく説明する能力
4 グーグルの検索システムへの深い理解
5 SEOライティング
6 コピーライティング(男性向け・女性向けのコピーの書き分けを含む)
7 デザインのセンス・美しいクリエイティブを作る能力
8 院内の電子機器のトラブル対応能力
(*論文は不要です。)
以上です。
・・・・これに加えて、法定の安全対策などがあります。
そのうち、大都市部で開業する場合には、クリニックの新規開業プロジェクトとして、銀行やファンドから数億円を調達して、院長、副院長、マーケッターが協力して開業するのが普通になる日が来るかもしれませんね。
人口と需要が増え続けた高度経済成長期っていい時代でしたね。
これからの人口が減少していく社会は、既存のスモールビジネスにとって、非常に大変な時代になりそうです。
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生