Dr simpty(三栄メディシスの電子カルテ)の特徴とは - 実体験をふまえた解説
Dr simpty(三栄メディシスの電子カルテ)の特徴とは - 実体験をふまえた解説
公開日: 2019年4月28日
最終更新日: 2020年4月29日
今回は、電子カルテの導入を考えているクリニックの先生の参考になればと思い、当院における三栄メディシス社のDr simtpy(ドクターシンプティ―)の使用経験から得られた特徴について解説します。
当院は、2019年6月に名古屋市名東区に落下傘開業した内科・糖尿病内科のクリニックです。
名古屋市名東区は、過去何件も糖尿病内科が閉院した東京都世田谷区を超える糖尿病内科の激戦区です。
(単純に人口当たりの標榜科数で計算すると、おおよそ、1.5倍厳しいエリアです。)
電子カルテの選択は、開業前の重要な決断です。
電子カルテの良し悪しによって、開業後の開業医生活における診察の快適さや、クリニックの運営コストに大きく影響します。
現在、開業を考えている先生には、大別すると、
の3通りの方がみえると思います。
私は、病院の勤務医から直接、開業しており、大学病院の勤務時代に、クリニックにアルバイトに行っていた以外には、クリニックの常勤の勤務経験はありませんでした。
そのため、電子カルテの展示会に足を運びましたが、電子カルテの良し悪しは、ちょっと触ってみただけでは、正直、分からず、低価格、デザイン性が高い、サーバー型であることを重視して、Dr simtpyを選びました。
これから、電子カルテを導入しようと考えている先生方にDr sipmtyの実際の使用経験を踏まえて、解説します。
目次
Dr simpty(ドクターシンプティー)は、2018年に三栄メディシス社より発売されたサーバー型の電子カルテです。
Dr simptyのコンセプトは、シンプル(simple)に美しく(beauty)です。
三栄メディシス社は、京都市に本社を置く会社で、電子カルテ、及び、レセプトコンピューターの実績は35年あり、レセコン・電子カルテメーカーとしては、黎明期から存在する老舗と言えます。
(*電子カルテの会社の所在地は、トラブル時のサポート体制に影響を及ぼしうるため、ご自身が購入しようと考えている電子カルテの会社の所在地は把握しておいた方が良いです。)
近年、都市部では、新規開業のクリニックが増えつつあり、開業前は、開業後にたくさん患者さんが来るだろうと予想していても、蓋を開けてみると、閑古鳥が鳴いていることはよくあります。
(*開業前に、東京都などの都市部の激戦地区の新規に開業したクリニックの受診者数が知りたい場合には、クリニックのホームページから、オンライン予約システムに入り、待ち人数・受診患者数・予約表を見てください。
そうすると、コンサルタントが提示する希望的観測ではなく、現実の人数が分かります。(*´Д`))
開業後、外来患者数が思ったよりも少ない場合を考慮して、初期投資額とランニングコストを抑え、リスクを低減しておくことが望ましいです。
下図は、三栄メディシス社のホームページから抜粋した導入費用とランニングコストを含めた総費用の図です。
三栄メディシス社のホームぺージより引用
他社製品との見積もりをとってみると、分かりますが、電子カルテの本体はかなりお値打ちです。
それに加えて、導入時には、他社機器の連携費用(当院なら、検査会社:LSIメディエンス、予約システム:メディウェブ、POSレジ・自動釣銭機:POSCO社)、操作指導、機器設置、ネットワークソフト組み込み費用などがかかります。
開業後に、経営が軌道にのるまで、ボディーブローのように効くランニングコストとなる保守費用は、デジカルより若干高い程度です。
はじめに、病院とクリニックの電子カルテの違いを説明すると、クリニックの電子カルテは、病院のものと比較し、かなりシンプルな作りになっています。
病院の電子カルテは、外来・入院の両方の機能があり、画像情報処理システムなども付属されていることが多いと思いますが、クリニックの場合には、外来機能のみで十分事足ります。
では、画像情報処理のシステムをどうするかというと、電子カルテとは、別にPACSシステム(医療用画像管理システム)と医療用モニターを導入すれば問題ありません。
(ちなみに、当院は、画像については、PACSシステムは導入せず、別の方法を採用しています。)
操作性については、何かしらの電子カルテを扱ったことのある方なら、まず大丈夫だと思います。
(クリニック用の他社製の電子カルテを使用したことがないため、どの電子カルテの操作方法が優れているのかは分かりません。)
電子カルテを使用する上での、病院とクリニックの最大の違いは、医師がある程度は、診療報酬の入力、保険算定、会計までの入力・操作手順を把握しなければいけない点だと思います。
当院には、60歳以上の医療事務のスタッフも働いていますが、Dr simptyは、彼女たちが扱える程度の操作性です。
(マーケットのシェアは低いため、採用時にDr simptyの使用経験がある人はほとんどいないため、最初は、電子カルテの使用方法を教える必要があります。)
次に、カルテの特徴に移ります。
Dr simptyのカルテは、紙カルテの2号紙をイメージして頂ければよく、左半分が過去のカルテ、右半分が現在入力中のカルテになります。
入力方法は、次の三通りです。
処方や点滴は、文字をタイピングで何文字か打ち込むと、検索一覧がでますので、それを選択します。
昔、使っていた東芝のHOPE EGMAINシリーズなどの病院の電子カルテのオーダーシステムとは少し異なってますが、慣れれば簡単です。
過去カルテをそのままdo処方することもできます。
インフルエンザのシーズンなどで同じ検査・処方・診療報酬・病名の入力が必要な場合には、予めセット登録をしておけば、ワンタッチで入力可能です。
他の機能としては、過去のカルテ全てから、年齢、住所、病名などを指定して、患者名一覧を検索できる機能がついています。
当院には、どのような病気の方が来院しているのか、何月にはどんな病気が多いのか、どの地域からどの程度の人数が来院しているのかなどが分かります。
Dr simptyの問題点には、次の点が挙げられます。
使い方に慣れると問題ありませんが、生理検査の時などは、カルテをこまめに保存しましょう。
外注の検査結果をそのまま貼る機能がないため、外注の血液検査結果は、必要データ、及び、異常値などを、カルテにタイピングしています。
ちなみに、当院は、院内迅速検査の機器と電子カルテの連結はしてません。
(連結する機器を増やすほど、トラブルが生じやすくなり、管理コスト・ランニングコストも上昇するため、必要になったら、造設するつもりです。)
最初は、総合病院では、院内迅速検査の結果は、電子カルテ内で参照できるように設計されているため、不便に感じますが、そのうち慣れます。
電子カルテの安定性については、当院開業後より、電子カルテのトラブルにより診療不能となったことはありません(2020年4月時点)。
電子カルテのデータは、一日の診療終了後にハードディスクにバックアップします。
電子カルテのデータは、受付のサーバー機に保存されており、院内LANを介して、診察室などの子機から、サーバー機に保存されたデータを検索したり、新しいデータを入力することができます。
サポート体制は、一般的なサポートはあり、特段困る事はありませんが、メディコムのような手厚いサポートはありません。
その分、ランニングコストが安くなっていると考えます。
購入を検討される方は、自身のエリアのサポート体制を問い合わせましょう。
サポート体制で気になる事としては、日曜日に問い合わせ窓口が開いていない点です。
当院も日曜に診療していますが、最近は、日曜日に診療するクリニックも増えてきています。
電子カルテを選択する際には、何かあったときの問い合わせ窓口の時間も確認しましょう。
当院がDr simptyに導入、あるいは、連携したシステムは下記の通りです。
この中で、ESETインターネットセキュリティーは自分でインストールし、保険証リーダーは、三栄メディシスに依頼し、その他のシステムは、最初に、販売会社と協議してから、三栄メディシスの担当者に相談し、連携を開始しました。
電子カルテは、外部のインターネット回線に接続するため、ウイルス対策にセキュリティーソフトを導入した方が良いです。
当院では、ESETインターネットセキュリティーを導入しました。
ESETインターネットセキュリティーは、高性能、かつ、動作が軽い上に、パソコン5台で3年間で9000円(税抜)(1台あたり年600円)と他社よりも非常に安く、オススメです。
→ Canon社のESET紹介ページ(外部リンク)
初診時に、保険証を手入力で入力するのは、時間がかかり、ミスが発生する可能性が高まります。
そのため、当院では、東和ハイテック社の保険証リーダーを導入しました。
→ 東和ハイテック社 保険証リーダー(外部リンク)
保険証リーダーの仕組みは、富士通イメージスキャナ fi-65Fと言う小型のスキャナで、保険証を読み取ります。
企業ホームぺージをみると、数千種類ある保険証の中の、どの保険証も問題なく読み取れるとのことです。
ただし、毎回、保険証の文字が正確に読み取られ、正しく入力されているかどうかを確認する必要があります。
(将来的に、カードタイプの保険証か、個人番号カードに保険情報が記録されるようになると、カードリーダーがあれば、本システムは、不要になる可能性がありますが。)
一般的に、POSレジ・自動釣銭機の導入には、次のようなメリットがあります。
当院がPOSレジ・自動釣銭機を導入した目的は、会計業務の間違いを減らし、毎日のレジ締めにかかる時間(10分~15分)をなくすためです。
POSレジ機能がついているため、売上の管理も簡単になります。
当院は、電子カルテと連携が必要なため、病院・クリニックの実績の多いPOSCO社を採用しました。
→ POSCO社ホームページ(外部リンク)
(当院の自動釣銭機:グローリー 自動つり銭機 300シリーズ 硬貨・紙幣釣銭機セット RT-300 + RAD-300 )
ちなみに、POSレジ・自動釣銭機は、上記の自動釣銭機のみで、90万円弱する事から、安くありません。
ちなみに、導入される際には、自動釣銭機のサイズはかなり大きく重い(サイズ:横480mm × 奥行540mm × 高さ140mm 重さ 22kg)ため、内装の設計段階から、どこに置くのかを決めておいた方が良いでしょう。
オンライン予約システムは、導入されている医院も多いです。
説明は省きます。
当院が開業した時点は、電子カルテは、サーバー型が主体であり、クラウド型が、ボチボチと出始めた時期でした。
開業した当初は、クラウド型の導入初期費用が安価な点は魅力的ですが、情報漏洩のリスクを考えると、サーバー型が安全だと考え、サーバー型にしました。
開業後には、サーバー型にも、サーバーパソコンや院内LANの故障というリスクがあるため、実際の経営上のリスクは、さほど変わらないなという印象です。
クラウド型の電子カルテは、光回線がつながらない時の予備として、Wifiのモバイルルーターを設置するなどにより、院内のシステムダウンに備えることができます。
導入費用が安価なクラウド型の電子カルテは、ソフト以外は自分で用意する必要があり、連携機器とのセットアップも自分で行うものが多い気がします。
現行の維持費の安価なクラウド型の電子カルテは、クリニックに直接来院して作業してもらうタイプのサポート体制はなさそうですので、基本は、パソコンに詳しく、電話等でやり取りをすれば、連携機器とのトラブル時も含めて、トラブルシューティングを、自分で何とかできる人が対象になると思います。
システムを、24時間365日正常に稼働し続けるのは、以外に大変なんだなと、開業してから感じてます。
(現在のサポート体制などについては、各会社にお問い合わせ下さい。)
Dr simptyの解説をする理由ですが、頼まれたからとか、そういうわけではありません。
普段は、患者さん向けの糖尿病の記事を書いていますので、たまには別の記事を書いてみただけです。
皆さんのお役に立てば幸いです。
Dr simptyは、シンプルでデザイン性の高いクリニック用の電子カルテです。
日常診療を省力化し、円滑に行うための一連の機能は搭載されています。
他のサーバー型電子カルテと比較すると、導入費用はお手頃で、保守費用も安価です。
サポート体制は、そこそこですが、特段困ったことはありません。
お手頃価格のサーバー型の電子カルテをお探しなら、選択肢の一つに加えてみるのはいかがですか?
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生