インターネット時代のベストな立地 – 機能店と目的店の違いとは?
インターネット時代のベストな立地 – 機能店と目的店の違いとは?
公開日: 2019年4月1日
最終更新日: 2020年6月5日
本コラムは、ビジネスパーソン向きのコラムです。
店舗型のサービス業を行う上で、店舗の場所、つまり、立地は、最も重要な問題です。
一度、開業する場所や開業形態を決めてしまうと、開業後に立地を変更することは困難なため、立地の選定は慎重に行う必要があります。
今回は、自分自身が起業した経験をふまえて、インターネット時代のベストな立地について考察します。
立地についての一般論を書きますので、飲食店等の他のサービス業にも当てはまると思います。
興味があれば読んでください。
目次
新しく店舗型のサービス業を行う上で、ベストな立地ってどこでしょうか?
おそらく、〇〇駅前の徒歩1分などの人通りの多い通りのビルの1階が良いのではないかなと考える方は多いのではないでしょうか。
昔は、自分もそう考えていました。
ですが、駅前のような商業地区の一等地での開業は、出店を希望する企業も多く、テナント料は高くなります。
テナント料は、事業を運営していく上で大きなウエイトを占める固定費となりますが、お店の経営が軌道に乗った後には、問題になりません。
(お店の経営が軌道に乗っても、固定費で赤字になるなら、事業計画がおかしいです。)
コンビニなどのチェーン店を除き、多くの個人経営のサービス業では、自分のお店が認知され、リピーターなどの固定客が付くまでに、数か月から数年程度の年月が必要です。
多額の運転資金が用意できる場合を除き、零細事業主にとっては、経営が軌道にのるまでのテナント料は重い負担になります。
次に、駅前などの一等地に店を構えることのメリットを考えてみると、
以上の3点が挙げられます。
逆に、駅前で店舗を構えるメリットが上記の3つであれば、
以上を、別の方法で行う事ができれば、家賃の高い駅前の一等地に出店する必要はない事になります。
店舗型のサービス業は、機能店と目的店の2種類に分類されます。
両方とも言葉の定義はありませんが、大体、次のような意味になります。
同じ店でも、人や状況により、機能店と目的店のどちらにもなりえます。
例を交えて、それぞれについて説明していきます。
機能店とは、空腹を満たす、食品を買うなどの一般的な機能を満たす目的で利用する店です。
では、代表的な機能店にはどんなものがあるのでしょうか?
機能店の代表的な例としては、コンビニエンスストアが挙げられます。
コンビニエンスストアは、年中無休で長時間の営業を行い、小規模な店舗において、主に食品、日用雑貨類など多数の品種を扱う小売店を指します。
→ wikipedia より引用
コンビニは、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなどのさまざまな企業が運営しています。
コンビニに行く必要がある場合には、〇〇丁目のセブンイレブン等の特定のコンビニ以外は利用しないという方はおらず、近くの使いやすい場所にあるコンビニで用を済ますのではないでしょうか。
機能店には、ある欲求が生じた際に、欲求を満たす方法として、その店でなくとも必ずしも良いという特徴があります。
そのため、機能店の競合店は、生じた欲求を満たすことができる店舗すべてになります。
機能店の競合店の例を挙げると、空腹を満たす欲求であれば、あるコンビニの競合店は、自社・他社のコンビニ、ファーストフード店、ファミレス、個人飲食店などの全てが、競合店になりえます。
以上のことをふまえると、
機能店の最適な立地とは、欲求が生じたそのタイミングで利用しやすい場所、つまり、人通りや交通量が多く、人や車が入りやすい場所になります。
次に、目的店について説明します。
目的店とは、その店でしか解消できない欲求を満たすなどの明確な目的があり利用する店です。
目的店の分かりやすい例としては、アイドルグッズの専門店が挙げられます。
自分が〇〇アイドルの熱狂的ファンだとして、ファングッズが欲しいとします。
近くに別のアイドルのグッズの店があるからといって、知らないアイドルのグッズを買うかというと、そんなことはないですよね。
アイドルなら誰でもよいというわけではないため、〇〇アイドルのグッズを買う目的をもって、〇〇アイドルのグッズ専門店に行くことになります。
そのグッズの専門店が日本に一件しかない場合は、熱烈なファンであれば、例え、辺鄙な場所にあろうと、山の上にあろうとも、深夜にしか営業していなくとも、その場所と時間を目指して、買いに行くことになるのではないでしょうか?
(説明の都合上、ネット通販は除きます。)
日本で唯一のアイドルグッズの専門店であれば、多少辺鄙な所(=家賃が安い所)にあっても、問題なさそうです。
このように目的店なら、欲求の強さや店の希少性に応じて、遠方まで足を運んでもらうことができます。
そのため、店舗が一等地にある必要は、必ずしもありません。
先ほど、コンビニを機能店として、アイドルグッズ専門店を目的店として、説明しました。
ここで、話が難しくなりますが、人の状況・欲求内容によっては、同じ店でも、機能店になったり、目的店になったりすることがあります。
例えば、コンビニでも、〇〇という新商品がセブンイレブンしか買えない場合には、他のコンビニに行っても欲しい商品は買えないため、コンビニであるセブンイレブンに、目的店の要素が含まれてきます。
飲食店なら、機能店であるラーメン屋さんでも、テレビで取り上げられれば、一時的に「その店のラーメン」を食べたい人が増えて、機能店から目的店へと変化します。
医療機関の場合なら、ある病気の治療が得意な内科クリニックがあるとします。
風邪の人にとっては、別にどこで診てもらっても大差ないため、機能店になる一方で、ある病気を診てもらいたい人にとっては、目的店になります。
このように、同じ店でも、人や状況に応じて、機能店か、目的店かは変化します。
以上のことから、
立地を決める場合には、自分のビジネスが、どのような人や状況では、機能店になるのか、目的店になるのかをよく考える必要があります。
先ほど、
を説明しました。
機能店では、人通り・交通量が多く、目立つ立地が必須ですが、目的店ではどうでしょうか?
目的店と言っても、同じようなサービスを提供している競合他社は、ほとんどの場合、存在しています。
そのため、目的店の場合は、多くの人が次の順番で来院することになります。
グーグルの検索システムは、現在地が大きく検索結果に影響を及ぼすため、業種によっては、検索場所も考慮した方が良いでしょう。
実際に来て頂けるかどうかは、自社の競合と様々な要素を比較検討されたのちに、決まることになります。
目的店の立地を考える場合には、来院される方の様々なタイプのペルソナ(年齢・性別・欲求内容・交通手段など)を想定し、競合他社と比較した際に自社の優れている点はどこか、どういうシナリオで選択されるのかのシナリオを、予め考えておく必要があります。
(一般的な競合調査・市場調査等の説明は省略します。)
ここまでで、目的店の特徴と、目的店に来店するまでの経緯について説明しました。
機能店では、立地がすべてですが、目的店では、ネットで検索し、比較検討した後に来院することから、ネット上の認知度や検索数を増やすことで来店を促すことが可能です。
自分のビジネスに、機能店と目的店の要素がどのあるかは計測できませんが、業種によっては、必ずしも一等地の1階に店を構える事がベストであるとは言えない時代になったのだと考えます。
1つだけいえる事は、
「一等地のテナント料と、二等地・三等地のテナント料とネット等の広告費を加えた金額のどちらが高くなるのか?」
を検討する必要がでてきたという事です。
どちらが有利なのかを立地を決める前に考えた方が良さそうですね。
テナント料は、固定費になりますが、ネット広告費は、状況に応じて変動させることもできる点もメリットです。
目的店を作るためには、USP(uniqu selling point)と市場におけるポジショニングを考える必要があります。
簡単に言うと、「そのお店の売りって何? 他の店とはどう違うの?」ということですね。
令和時代のクリニックの院長は、プロフェッショナルな医師であるともに、プロの経営者です。
普段は糖尿病などの生活習慣病の記事を書いていますが、今回は、ビジネスパーソン向けに経営コラムを書きました。
皆さんの参考になれば幸いです。
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生