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低血糖症って何? - 症状・原因・検査・治療から、救急車を呼ぶタイミング

低血糖症って何? - 症状・原因・検査・治療から、救急車を呼ぶタイミング

公開日: 2019年10月8日

最終更新日: 2020年12月1日

 
糖尿病を治療中の方の中には、「低血糖に気をつけて下さい。」と言われている方も多いと思います。
 
では、この低血糖とは、どのようなものなのでしょうか。
 
今回は、低血糖について、糖尿病の専門家が解説します。
 
 
低血糖症
 
 
低血糖は、血液中のブドウ糖が少なく(=血糖値が低く)なり、血糖値を正常範囲に戻すための措置(例:ブドウ糖の内服)が必要となる状態です。
 
分かりやすく言うと、低血糖とは、血糖値が低くなりすぎて、血糖値を上げないとマズい状態です。
 
低血糖は、糖尿病の治療薬に伴う副作用として認められることが多いのですが、糖尿病のない方にも低血糖は生じる場合があります。
 
健常者の空腹時の血糖値は、70mg/dlから99mg/dlの間に維持されています。
 
血糖値が70mg/dl未満に低下すると、ほとんどの人は、低血糖の症状を認めます。
 
低血糖の代表的な症状としては、空腹感、動悸、発汗、振戦などが挙げられます。
 
これらの自覚症状の一部は、血糖値を上げるために分泌されたアドレナリンなどのホルモンが関与しています。
 
血糖値がさらに低下し、50mg/dlを下回ると、脳が十分なエネルギーを確保できなくなります。
 
その結果、反応が鈍くなったり、錯乱などの症状をきたし、さらに重症になると、意識障害をきたします。

 
低血糖の治療には、ブドウ糖の粉やタブレット、糖分を含む食べ物や飲み物、血糖値を上昇させるグルカゴンなどの薬物が用いられます。
 
長期間にわたり、低血糖を繰り返すときには、糖尿病の治療内容に問題がある場合や、血糖値を下げる他の原因がある場合があるため、低血糖の原因の精査が必要です。
 
 
 
 

 
 
 
 

低血糖とは

 
低血糖とは、血液中のブドウ糖が少なく(=血糖値が低く)なり、血糖値を正常範囲に戻すための措置(例:ブドウ糖の内服)が必要となる状態です。
 
これは、通常、血糖値が、70mg/dl未満の場合に生じます。
 
(*健常者では、空腹時の血糖値は、70mg/dl~99mg/dlの間に保たれています。)
 
血糖値が70mgを下回ると、ほとんどの人では、動悸や振戦などの様々な低血糖の症状をきたし、ブドウ糖の摂取などの対応が必要になります。
 
 
 
 

低血糖の症状

 
血糖値が、70mg/dl未満に低下すると、次のような自覚症状を認めます。

  • 空腹感
  • 動悸
  • 発汗
  • 眠気
  • めまい
  • 不機嫌
  • 過敏性
  • 不安
  • 疲労感

 
これらの症状の一部は、下がり過ぎた血糖値を上げるために分泌された血糖上昇ホルモンであるアドレナリンなどの働きによって起こります。
 
さらに低血糖が悪化し、50mg/dlを下回ると、脳の主なエネルギー源であるブドウ糖が不足するため、脳がエネルギー不足に陥り、次のような中枢神経症状が出現します。

  • 傾眠
  • 混乱
  • かすみ目
  • けいれん
  • 意識障害
  • 昏睡

 
重度の低血糖の場合には、意識障害が遷延し、呼びかけ等にも全く反応しなくなります。
 
次に、低血糖域まで血糖値が下がっても、低血糖の自覚症状がなくなってしまう「無自覚性低血糖」について解説します。
 
低血糖を頻回に繰り返している方では、徐々に、体に慣れが生じ、低血糖への体の反応が弱くなり、動悸・発汗などの低血糖の自覚症状が乏しくなっていきます。
 
また、糖尿病による重度の自律神経障害のある方も、低血糖時の体の防御反応が乏しい場合があります。
 
低血糖時の自覚症状が乏しくなると、軽症の段階では、低血糖に気が付くことできなくなります。
 
こういう方は、血糖値がかなり低下し、意識障害などの中枢神経症状が出現するまで、低血糖を自覚できません。
 
無自覚性低血糖のある方は、意識障害や昏睡などを伴う重症低血糖をきたしやすくなります。
 
 
 
 

低血糖の原因

 
低血糖は、糖尿病治療中の方に多く認められます。
 
糖尿病の中でも、1型糖尿病、または、特定の薬を使用している2型糖尿病に認められます。
 
 

低血糖をおこしやすい血糖降下薬の種類

 
糖尿病の薬(=血糖降下薬)には、様々な種類のものが認可されていますが、低血糖をおこしやすい薬とおこしにくい薬があります。
 
低血糖をおこしやすい薬か否かは、薬の作用機序によって決まります。
 
低血糖をおこしやすい薬は、インスリン製剤、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬です。

  • 各種のインスリン製剤
  • スルホニル尿素薬(2世代:グリベンクラミド、グリクラジド、3世代:グリメピリド)
  • 速効型インスリン分泌促進薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド)

 
スルホニル尿素薬・速効型インスリン分泌促進薬は、膵臓のβ細胞に直接作用し、インスリン分泌を促すことで血糖を下げる薬のため、インスリンの分泌量が過剰になる場合があります。
 
一方で、次の血糖降下薬は、低血糖を起こしにくいです。

  • ビグアニド
  • チアゾリジン
  • αグルコシダーゼ阻害薬
  • DPP-Ⅳ阻害薬
  • SGLT2阻害薬
  • GLP-1製剤

 
低血糖を起こしにくい薬でも、インスリンやスルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬と併用すると、低血糖をきたす可能性が上がります。
 
 

低血糖をおこしやすいシチュエーション

 
低血糖をおこしやすいシチュエーションについて説明します。
 
感染症に罹患し食欲がないとき、食事を食べずにアルコールを飲んだときなど、食事の炭水化物の量に対して、インスリンや血糖降下薬を過剰に使用すると、低血糖をおこす場合があります。
 
インスリンを使用中の方は、食事がとれないときに、インスリンの単位数をどうすべきか、主治医の先生に予め確認しておきましょう。
 
(インスリンには全体的に血糖を押し下げる基礎インスリンと、食事の糖分を体に取り込ませるための速効型・超速効型インスリンの2種類があります。
 
食事用の速効型・超速効型のインスリンは、食事中の糖分を体に取り込むためのインスリンのため、食事がとれないときには、単位数の調節が必要です。)
 
運動により筋肉にグルコースが取り込まれるため、運動中、または、運動後に低血糖をきたす場合があります。
 
この現象は、インスリン分泌の枯渇した1型糖尿病でよく認められます。
 
重度の労作や運動をする場合には、体を動かす前に、補食をすべきかを、主治医の先生に確認しましょう。
 

糖尿病のない人の低血糖の原因

 
 
糖尿病でない方が、低血糖をきたした場合について説明します。
 
 

反応性低血糖

 
反応性(食後)低血糖は、食事に応じて分泌されたインスリンが過剰になり、一旦上昇した血糖値が食後数時間後に下がりすぎる事で生じる低血糖です。
 
胃を切除した人に発生する事がありますが、この手術を受けたことがない人にも起こります。
 
 

空腹時低血糖

 
空腹時低血糖は、次のような原因で生じます。

  • アスピリン・サルファ薬などの薬物
  • アルコールの飲みすぎ
  • 肝臓、腎臓、心臓、膵臓の病気
  • 血糖を上昇させるホルモン(例:コルチゾール)が低い場合
  • 特定の腫瘍 他

 
空腹時低血糖は、長時間の絶食後(例:朝食前)に生じることが多いです。
 
絶食後や朝食前に、低血糖の症状を認めたら、医療機関を受診しましょう。
 
→ 糖尿病ではない低血糖の原因 の記事
 
 
 
 

低血糖の診断と精査

 
低血糖の診断の基本は、低血糖の自覚症状が出現している時に、血糖値を測定することです。
 
通常、インスリンを導入されている方は、自己血糖測定を指導されています。
 
1型糖尿病やインスリン使用中の高齢者等の意識障害を伴う低血糖をきたすリスクの高い方の場合には、家族が血糖測定の手技を習得しておくのが望ましいです。
 
低血糖が頻回に生じる場合には、皮下連続式グルコース測定システム(Continuous Glucose Monitoring system; CGMS)を用いて、日内の血糖推移を調べます。
 
反応性低血糖を疑った場合には、他国では混合食負荷試験が行われていますが、日本では保険適応がありません。
 
そのため、日本では、経口血糖負荷試験(75gOGTT)を、通常の120分から、180分、240分と延長して、血糖値を測定し、低血糖の有無を確認します。
 
ただし、健常者の10パーセントの方でも、4〜6時間のOGTT中に50mg/dL未満の血糖値を認めるため、経口血糖負荷試験の意義は懐疑的です。
 
空腹時低血糖を疑った場合は、問診、身体診察、内服薬の確認、ホルモン検査などを行います。
 
空腹時低血糖の精密検査として、絶食時間が長くなると低血糖発作をきたすかどうかを調べる絶食試験を行う場合があります。
 
 
 
 

低血糖の治療

 
低血糖の自覚症状をきたし、血糖測定が可能な場合には、血糖値が70mg/dl未満であることを確認します。
 
次に、血糖値が70mg/dl未満の場合には、ブドウ糖10g、または、20gを内服します。
 
(ブドウ糖が手元にない場合には、清涼飲料水(ゼロキロカロリーを除く)でも代用可能です。
 
例えば、コカコーラであれば、100mlあたり11.3g の砂糖が含まれています。
 
内服15分後に再度、血糖値を測定し、血糖値が少なくとも70mg/dl以上になり、自覚症状が消失するまで、ブドウ糖の内服を繰り返します。
 
低血糖を治療する際には、炭水化物の選択は重要です。
 
消化吸収に時間のかかる炭水化物(例:玄米や米など)ではなく、血糖値の上がりやすい、グルコース、または、砂糖を含む食品を摂取して下さい。
 
糖尿病でない方の低血糖への対処方法は、原疾患により異なるため、原因の精査が必要です。
 
追記:2020年10月に低血糖時の救急対応薬として、バクスミーというグルカゴンの点鼻粉末が発売されました。
 
バグスミーの薬価は、一回分 8368円と高額であり、ブドウ糖で代用可能なため、使用する機会はないでしょう。
 
 
 
 

救急車を呼ぶタイミング

 
意識障害を伴う重症低血糖のとき、ブドウ糖を何回内服させても低血糖を繰り返すときには、救急車を呼びましょう。
 
 

低血糖により、意識障害、錯乱、混乱等をきたしているとき

 
低血糖により意識障害をきたしている場合には、無理に口を開けて糖分を摂取させずに、救急車を呼びましょう。
 
(家人がグルカゴン注射を打つことも可能ですが、日本ではほとんど行われていません。)
 
これは、次のことが考えられるからです。

  • 意識障害の原因として、脳卒中などの低血糖以外の病気の可能性がある。
  • 意識障害をきたすほどの重症低血糖の場合は、低血糖が遷延することがある。
  • 意識障害をきたしている人に、ブドウ糖を無理に飲ませると誤嚥するリスクがある。

 
 

ブドウ糖を何回内服させても、低血糖を繰り返すとき

 
低血糖への対応を繰り返しても、再度、低血糖を繰り返すときには、インスリン・血糖降下薬の過剰投与や、胃腸炎による脱水等のために血糖降下薬が体内に蓄積している場合が考えられます。
 
この場合には、血糖降下薬の効果が消失するまでに、薬の種類にもよりますが、1日~3日程度の時間がかかる場合があります。
 
そのため、一旦、入院して、血糖管理をするのが安全です。
 
 
 
 

低血糖の予防

 
糖尿病治療中の低血糖予防のためには、次のことを行いましょう。

  • 毎日、食事を決まった時間に食べる。
  • 規定通りの食事の量(食後の高血糖は、糖質が重要です。)を食べる。
  • 運動は、食後30分~1時間に運動する。
  • 薬を投与する前にインスリン量(特に食事により変更する場合)や、血糖降下薬を確認する。
  • 運動をする前に、補食の必要性を主治医に確認する。

 
→ 糖尿病の運動療法 - 効果・種類・禁忌・必要性から低血糖までの解説 の記事
 
 
 
 

低血糖の長期的な悪影響

 
低血糖は、短期的に動悸・発汗を覚えたり、重篤になると、意識障害や昏睡に至る事を説明しました。
 
では、低血糖には、他に悪影響はないのでしょうか。
 
低血糖は繰り返すと、徐々に体が低血糖に慣れていきます。
 
そして、自覚症状が乏しくなり、無自覚低血糖をおこします。
 
痛みなどの自覚症状は、生体の防御反応ですので、これが生じないのは、大変な問題となります。
 
例えば、血糖値が下がったときに、血糖値を上げる働きがうまく作動せず、そのまま意識障害をきたしてしまいます。
 
また、低血糖を繰り返すと、認知症になりやすくなったり、心臓血管死のリスクになる事が知られています。
 
 
 
 
今回は、低血糖の基本的なメカニズムや対応について解説しました。
 
糖尿病でお困りのことがあれば、糖尿病の専門家にご相談下さい。
 
文責・名古屋市名東区の糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔
 
 
<参考文献>
 
Hypoglycemia NCBI Book
 
Hogan MJ. et al. Oral glucose tolerance test compared with a mixed meal in the diagnosis of reactive hypoglycemia. A caveat on stimulation. Mayo Clin Proc. 1983
 
S Kalra. Hypoglycemia: The neglected complication Indian J Endocrinol Metab. 2013
 
Rhee SY. Hypoglycemia and Dementia. Endocrinol Metab. 2017
 
 
 
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
 
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