糖尿病と心臓の病気
糖尿病と心臓の病気
公開日: 2019年5月1日
最終更新日: 2022年12月31日
本日は、糖尿病と心臓の病気について解説します。
糖尿病は、インスリンの作用不足によって高血糖をきたす病気です。
糖尿病による高血糖と過剰なインスリン作用は、全身の血管に損傷を与えます。
また、高血糖にさらされた臓器は不具合が生じやくなり、これらの状態が、長期間継続すると、全身の臓器に合併症が生じます。
心臓は、全身に血液を送るポンプの働きをしている臓器です。
心臓が故障すると、全身に血液を送る能力が不十分となり、体のあちらこちらで、酸素や栄養素の供給が不十分になってしまいます。
糖尿病と心臓病は、しばしば密接に関係しています。
日本人の2019年度の死因の第2位は、心疾患であり、日本人の死因の多くを占めています。
(第1位は、悪性新生物(いわゆる、がん)です。)
糖尿病を患っている人が、心血管疾患で死亡するリスクは、糖尿病のない人の1.8倍から2.5倍高くなることが知られています。
また、日本糖尿病学会の「糖尿病の死因に関する委員会」の調査では、日本では、糖尿病患者の約9人に1人が心血管疾患で亡くなっていることが報告されています。
心臓の病気は、一般的に高齢になるほど、多くなりますが、糖尿病を患っている人は、糖尿病のない人と比較し、若い年齢で発症する可能性が高くなります。
また、糖尿病の期間が長ければ長いほど、心臓の病気を発症しやすくなります。
心臓の病気といっても、様々な病気が含まれますが、糖尿病で最も問題となるのは、狭心症や心筋梗塞などの病気を引き起こす冠動脈疾患です。
冠動脈疾患は、心臓に酸素と血液を供給している血管である冠動脈の壁にプラークと呼ばれるコレステロールの沈着物が蓄積することによって、引き起こされます。
動脈の壁に、プラークが沈着すると、動脈の内腔が狭くなり、血液が流れにくくなります。
このプロセスは、動脈硬化(アテローム性動脈硬化)と呼ばれます。
心臓への血流が少なくなり、心臓が必要とする十分な血液が供給できなくなると、初めは、激しい運動をしたときなどの負荷がかかった時に、胸痛を認めるようになります。(狭心症)
冠動脈にあるプラークが破裂し、冠動脈が閉塞した場合には、心臓への血流が完全に途絶えてしまうため、心臓の細胞(心筋)が壊死してしまう心筋梗塞をおこします。
心筋梗塞をきたした時の胸の痛みは、前胸部を締め付けられるような痛みが30分以上続きます。
糖尿病を長期間患っている方で神経障害の強い方では、心臓の痛みを感じる神経が故障してしまい、心筋梗塞をおこしても、胸痛を認めない場合があり、注意が必要です。(無痛性心筋梗塞)
糖尿病は初期には自覚症状に乏しいのですが、放置すると怖い合併症をひきおこす病気です。
糖尿病の治療は、糖尿病の専門家にお任せ下さい。
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文責・名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生