新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特徴と考察 2020年2月
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特徴と考察 2020年2月
公開日: 2020年2月14日
最終更新日: 2020年12月28日
2019年12月に中国の武漢市で発生した新型コロナウイルス肺炎は、日本国内の各地で、中国への渡航歴のない人にも散発的に報告されるようになり、水際での食い止めに失敗しています。
→ 日本経済新聞ニュース(外部リンク)
今後、新型コロナウイルスが、どの程度まで拡大するのかが、不透明な状況になっています。
その一方で、徐々に、新型コロナウイルス感染症の特徴は明らかになりつつあります。
今回は、2020年2月13日に発表された日本環境感染学会「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第1版」の情報の紹介と、
新型コロナウイルスに対する私見を書きたいと思います。
→ 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対策ガイド 第1版(日本環境感染学会)
コロナウイルスは、これまでは、次の6種類が知られていました。
今回の新型コロナウイルス(ウイルス名:COVID-19)は、新しいコロナウイルスになります。
臨床症状
新型コロナウイルスは、主に呼吸器に感染するウイルスです。
ウイルスに感染した人の全てに自覚症状がでるわけではなく、無症状の人もいると考えられます。
感染者の症状としては、発熱、咳、筋肉痛・倦怠感、呼吸困難が多く認められます。
頭痛、痰、血痰、下痢などを伴う人もいます。
上気道炎の症状が主体でも、肺炎の存在を認める例や、1週間以上の上気道炎症状が続いた後に肺炎を認める事があります。
感染経路
感染は、ヒトーヒトの間でも起きると考えられています。
感染経路としては、次の二つが考えられています。
ウイルスなどを包んでいた唾液などの水分が蒸発した後に残った、非常に細かい粒子(直径0.005mm以下の粒子)が空気中を漂うことで、感染が広がる空気感染は否定的と考えられています。
(空気感染の例:結核、麻しん、水ぼうそう)
感染力
新型コロナウイルス感染の感染力は、1人の感染者から2人 ~ 3人程度に感染させると言われています。
強さの比較として、例を挙げると、インフルエンザは、1.4人 ~ 4人、感染力の非常に強い麻しんでは、12人 ~ 18人です。
インフルエンザでも年齢・持病・症状・時期などによって、ウイルスの排出量は変化します。
そのため、いつの時期にウイルスが排出されていのかが、気になるところです。
インフルエンザでは、発熱する前日から、ウイルスが排泄されます。
→ インフルエンザとは – 症状(熱、咳、頭痛等)、流行る時期、潜伏期間、検査、治療などの解説 の記事
発生状況
2020年2月12日の時点では、新型コロナウイルスの感染者数は、全世界で約4万4千人、死亡者数は約1100人となっています。
感染者の大多数は、発生国である中国であり、中国以外の世界20か国以上で感染者が報告されています。
国内では、2020年1月3日に最初の感染例が報告され、2020年2月12日時点で感染者数は203人となっています。
国内死亡例は、2月13日に1名が報告されています。
致死率
中国湖北省では、致死率は2%を超えるものの、中国湖北省以外の地域では低い数値となっています。
治療法・予防
新型コロナウイルス感染症に対して、現在、有効性が証明された治療法はありません。
抗HIV薬などの投与が有効であったという報告があります。
ワクチンはありません。
服部先生の考察
ここからは、考察です。
基本的に状況から推察されることを書きますので、疫学や科学的な裏付けはありません。
意見の一つとして、読んでください。
毎年、鼻水や咳、微熱などのウイルスによる感染症は、世界中の多くの人が感染しています。
インフルエンザが毎年流行する理由は、インフルエンザに一度感染して抗体などの免疫ができても、インフルエンザの遺伝情報(RNA)が変化しやすく、抗原性が変化してしまうためです。
(抗体は、ウイルスの特定の部位に対する誘導ミサイルだと考えて下さい。
ウイルスが変異し、ウイルスの形が少し変わると、抗体がウイルスを認識できなくなります。)
次に、インフルエンザの年齢別の発症率をみると、小児から青年に多く、逆に高齢者では発症が少ない事に気が付きます。
→ インフルエンザの解説記事
免疫力は、加齢とともに低下するため、免疫力の観点から見れば、インフルエンザも高齢者が多く、青年では少なくなるはずです。
これは、人混みに出かけるのが少なくなるという社会的な要因も考慮されますが、インフルエンザウイルスへの感染を繰り返すことで、様々な抗原性に対する抗体ができ、多少変異しても何とか対応できるようになるのではないかと考えます。
次に、一般的な風邪のウイルスでも、少なからず、世界のどこかでは、変異を起こしていると推定されますが、これらの新型ウイルスが、大きな問題となることはありません。
この理由は、おそらく、感染力、及び、毒性が低いためだと思います。
では、なぜ、今回の新型コロナウイルスの感染症が問題になっているのでしょうか?
それは、次の理由でしょう。
ウイルスの感染源が動物由来かどうかは分かりませんが、既存のコロナウイルスのRNA配列に変異が生じた結果、新型コロナウイルスが誕生したと推測できます。
新型のウイルスが人に感染すると、完全一致する抗体・免疫を持っている人は少ないため、急速に社会に広がっていきます。
持病のない若い人にとっては、インフルエンザ等のウイルスに初回感染した場合と同じため、自己の免疫力により、重症化することなく、自然治癒します。
しかし、高齢者や糖尿病などの持病のある人の場合は、重症化することがあります。
これは、若い頃から蓄積された免疫情報を利用して、ウイルスへの感染防御を行っている部分があるものの、新種のウイルスに対しては、一致する場合が少ないからだと考えます。
次に、咽頭に感染せずに、肺のみに感染すると重症化しやすい理由は、あくまで推測ですが、気道感染症の重要な防御関門である咽頭部のリンパ組織(ワルダイエルの咽頭輪)が反応しづらいからと考えます。
(城攻めに例えると、からめ手から攻め込まれて、いきなり、本丸に奇襲を受けるようなものですね。)
最初の1週間程度は、下気道(気管支・肺胞)でウイルスの増殖を押しとどめるために、免疫細胞が頑張りますが、
高齢者や基礎疾患がある人などの免疫力の弱い方では、肺胞部で増加するウイルスの増殖が食い止められなくなると、一気に悪化して、肺炎になるというわけです。
では、新型コロナウイルス感染症の治療ってどうすれば良いのでしょうか?
現在は、同じRNAウイルスである抗HIV薬が試験的に使用されています。
ここで着目したいのが、新型コロナウイルスに高齢者で感染しても軽症で済む人になります。
今回のコロナウイルスが、これまでのコロナウイルスの形状から、全く別のものになってしまっているというのは考えにくいです。
そのため、完全一致する抗体はなくとも、多少効果のある抗体をもっている人はいるのではないでしょうか?
以上のことから、免疫グロブリンが効果があると思います。
しかし、新型コロナウイルスによる肺炎が重症化した人に、免疫グロブリンを投与しても、効果は乏しいでしょう。
免疫グロブリンを投与するタイミングは、肺炎の前、もしくは、肺炎が重症化する前に投与する必要があるでしょうね。
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生