妊娠糖尿病の診断基準とは
妊娠糖尿病の診断基準とは
公開日: 2019年10月18日
最終更新日: 2022年12月30日
今回は、妊娠糖尿病を含む妊娠中の糖代謝異常の診断基準について解説します。
昔は、妊娠糖尿病には、妊娠前に発症した糖尿病が含まれていましたが、
2010年の日本糖尿病・妊娠学会の妊娠糖尿病診断基準検討委員会にて、
妊娠糖尿病は、「妊娠糖尿病(GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。あきらかな糖尿病は含めない。」と定義されました。
2010年7月から妊娠中の糖代謝異常に関する新診断基準が使用されていたものの、日本糖尿病学会、日本産婦人科学会、日本糖尿病・妊娠学会の診断基準は統一されていませんでした。
そのため、2015年に、日本糖尿病学会と日本糖尿病・妊娠学会との間で合同委員会が立ち上げられ、両学会、および、日本産婦人科学会の3学会の合意を得て、改訂診断基準が作成されました。
現在の改訂診断基準では、妊娠中の糖代謝異常は、次のように分類されています。
妊娠中に取り扱う糖代謝異常(hyperglycemic disorders in pregnacy)には、次の三つがあります。
1) 妊娠糖尿病 gestational diabetes melltus (GDM)
2) 妊娠中の明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnacy
3) 糖尿病合併妊娠 pregestational diabetes mellitus
妊娠糖尿病 gestational diabetes mellitus (GDM)は、「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常である」と定義され、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠は含めません。
次は、妊娠中の各種の糖代謝異常の診断基準を記載します。
妊娠糖尿病(GDM)の診断基準は次の通りです。
妊娠糖尿病は、75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断します。
妊娠中の明らかな糖尿病の診断基準は下記の通りです。
以下のいずれかを満たした場合に診断します。
注意点が2点あります。
一つ目は、妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、および、妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれます。いずれも分娩後は診断の再確認が必要です。
二つ目は、妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して、糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示します。
そのため、随時血糖値や75gOGTTの負荷後血糖値は、非妊時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめる事ができません。
(一般的に、診断基準は、疫学調査において、検査値がある一定の値を超えた場合に、有害事象が増える閾値を基準値に設定します。
糖尿病の診断基準は、糖尿病網膜症等の糖尿病性細小血管合併症が発症リスクが上昇する血糖値の閾値を基準値として採用しています。
妊娠の影響によって、高血糖をきたしやすくなり、高血糖のために周産期合併症がでやすい状態を、糖尿病と診断するのは妥当ではないという事なのでしょう。)
糖尿病合併妊娠の診断基準は次の通りです。
以上です。
上記の基準は、妊娠中の基準であるため、出産後は使用できません。
出産後は改めて、非妊時の「糖尿病の診断基準」に基づき、再評価することが必要です。
「参考文献」
妊娠中の糖代謝異常と診断基準の統一化について 日本糖尿病学会(外部リンク)
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」のブログ記事一覧
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