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GLP-1のダイエット(体重減少)効果とは リバウンドを含めた解説

GLP-1のダイエット(体重減少)効果とは リバウンドを含めた解説

公開日: 2019年11月26日

最終更新日: 2020年8月19日

 
GLP-1受容体作動薬は、糖尿病の治療薬(血糖降下薬)の一つです。
 
GLP-1には、食欲を抑制し、食事摂取量を減らし、体重を減らす効果があると言われています。
 
欧米人の肥満者や肥満2型糖尿病の人に、GLP-1製剤を20週~56週間投与すると、3%~7%程度の体重減少効果が認められます。
 
しかし、日本人の2型糖尿病の人の場合は、セマグルチド(オゼンピック)以外のGLP-1製剤を常用量で投与しても、ほとんど体重減少効果は期待できません。
 
(セマグルチドには、日本人(平均体重70kg)に30週間投与した際に、平均2kg-4kg程度の体重減少を認めた報告があります。)
 
また、GLP-1製剤を投与して、体重が一旦減少しても、投与を中止すると、体重はリバウンドする事が報告されています。
 
日本人は、欧米人と異なり、GLP-1製剤による体重減少効果は乏しく、現時点で、日本人に投与した場合に、明らかな体重減少効果が期待できるGLP-1製剤は、セマグルチドだけです。
 
(ただし、セマグルチドも2020年に発売したばかりの薬のため、今後のさらなる調査が必要です。)
 
 
GLP-1受容体作動薬のダイエット効果
 
 
 

 
 
 
 

GLP-1って何?

 
GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)は、小腸の末端(遠位部)から、糖分や脂質などの栄養素に反応して、分泌されるホルモンです。
 
GLP-1が分泌されるときは、小腸の終わりの方まで、栄養素が行った時、つまり、食後でしばらく時間が経ち、食物の消化吸収が進んできた時です。
 
そのため、GLP-1の代表的な働きには、次のようなものがあります。

  • 食物中の糖分を、体の細胞に取り込むために、インスリン分泌を促進する。
  • 小腸にゆっくり食物を送るために、胃の運動を抑える。
  • 食欲を抑える。

 
GLP-1の働きは、GLP-1が、GLP-1受容体に結合し、刺激することで発現します。
 
 
 
 

GLP-1製剤の種類と薬価

 
GLP-1製剤(=GLP-1受容体作動薬)は、GLP-1受容体を刺激することで、効果を発揮します。
 
GLP-1受容体作動薬には、ヒトのGLP-1を参考にして作ったもの、人間以外の生物(例:トカゲの唾液)などを参考にして作ったものなど、いろいろな種類があります。
 
GLP-1受容体作動薬の効果の持続時間は、半日から1週間までと様々です。
 
日本で、2020年8月の時点で、使用されている製剤は下記のものになります。

  • リラグルチド(商品名:ビクトーザ)
  • エキセナチド(商品名:バイエッタ、ビデュリオン)
  • リキシセナチド(商品名:リキスミア)
  • デュラグルチド(商品名:トルリシティ)
  • セマグルチド(商品名:オゼンピック)

 
上記の中でいくつか抜粋して説明すると、
 
エキセナチド(バイエッタ、ビデュリオン)は、トカゲの唾液由来のGLP-1受容体作動薬です。
 
それぞれの用量・薬価は、次の通りになります。

  • バイエッタ皮下注5㎍・10㎍300:1日2回 5㎍、もしくは、10㎍皮下注 薬価:10026円
  • ビデュリオン皮下注用2mg:1週1回 2mg皮下注 薬価:3586円

 
リラグルチド(ビクトーザ)、デュラグルチド(トルリシティ)、セマグルチド(オゼンピック)は、ヒトのGLP-1由来のGLP-1受容体作動薬になります。

  • ビクトーザ皮下注18mg  :1日1回 0.9mg皮下注 最高1.8mg/日まで 薬価:10396円
  • トルリシティ0.75mg皮下注:1週1回 0.75mg皮下注 薬価:3396円
  • オゼンピック0.5mgSD :1週1回 0.5mg皮下注 最高1.0mg/週まで 薬価:3094円

 
GLP-1製剤は、標準用量 1カ月分だと 10000円 ~ 15000円 になります。
 
保険の3割負担だと、1カ月 3000円 ~ 5000円 です。
 
 
 
 

GLP-1製剤でどのくらい痩せるの?

 
GLP-1製剤(GLP-1受容体作動薬)を使用すると、どのくらい体重が減るのでしょうか?
 
欧米人と日本人のデータをそれぞれ見ていきたいと思います。
 
 

欧米人の肥満者・2型糖尿病の場合

 
 

欧米人のリラグルチド・エキセナチドの体重減少効果

 
下の図は、GLP-1受容体作動薬(リラグルチドとエクセナチド)を肥満、あるいは、2型糖尿病を対象に、少なくとも20週間、使用した際の体重変化の値です。(1)
 
調査対象になった2型糖尿病の人は、平均体重 82kg 〜 111kg、BMI 29〜41とかなり肥満です。
 
欧米人の2型糖尿病は、日本人の2型糖尿病とは違い、肥満の人が多いです。
 
リラグルチドは、1日1.2mg~1.8mg(肥満者を対象にした一つの試験では、3.0mgまで)を投与し、日本の常用量の約2倍です。
 
エクセナチドは、少なくとも、1日10㎍、もしくは、1週間に2mg以上を投与しています。
 

GLP-1作動薬の体重減少効果の一覧表

左:論文の著者名・年
中央:患者数
右:体重変化(kg)
GLP-1R agonist group:
GLP-1製剤投与した人
control group :
コントロール群(投与してない人)


Vilsbøll T et al. BMJ. 2012より引用
 
GLP-1製剤を投与した結果は、糖尿病のない肥満者では 平均3.2kg、糖尿病の人では、平均2.8㎏の体重減少を認めました。
 
各臨床研究の最高用量での体重減少効果は、平均0.2kg ~ 7.2kgと報告されています。
 
副作用としては、悪心・下痢・嘔吐などの胃腸症状を認めています。
 
以上より、欧米人では、リラグルチド・エクセナチド等のGLP-1製剤を20週間以上使用すれば、約3%前後の減量効果が期待できそうです。
 
このGLP-1製剤の体重減少効果は、リラグルチドでは、食後の満腹感が増加したり、食欲が低下することにより、食事摂取量が減る事により生じます。(2)
 
GLP-1製剤を投与しても、カロリー消費は増えません。
 
リラグルチド投与後の食事摂取量と基礎代謝

左:エネルギー消費量
右:カロリー摂取量
Placebo:プラセボ
Lirglutide:リラグルチド


van Can J et al. Int J Obes (Lond). 2014より引用
 
 

欧米人のセマグルチドの体重減少効果

 
セマグルチドは、日本では、2020年6月に発売された新しいGLP-1状態作動薬です。
 
セマグルチドは、リラグルチドやエクセナチドなどの他のGLP-1製剤よりも体重減少効果が強いことが報告されています。
 
セマグルチドは、0.5mg、1.0mgの投与量が用いられますが、どちらの用量でも、投与した約65%の人に、約5%以上の体重減少を認めました。
 
臨床試験で認められた体重減少効果をざっくり説明すると、平均89kg~96kgの人に、セマグルチド0.5mgを投与した場合には、平均3.5kg~4.6kg、セマグルチド1.0mgを投与した場合には、平均4.5kg~6.5kgの体重減少を認めました(投与期間は30週間~56週間)。
 

セマグルチド 体重減少効果グラフ

縦:体重変化量(kg)


Goldenberg RM et al. Can J Diabetes. 2019より引用
 
(*上記のグラフには、各臨床研究の名称と他の種類のGLP-1製剤を含む血糖降下薬を投与した場合の体重減少効果が記載されています。)
 
セマグルチドは、最も体重減少効果の強いGLP-1受容体作動薬です。
 
 

日本人の2型糖尿病の人の場合

 
欧米人では、GLP-1受容体作動薬を20週以上投与した際には、約3%~7%の体重減少効果を認めました。
 
では、日本人に、GLP-1受容体作動薬を投与した場合にも、欧米人と同様の体重減少効果を認めるのでしょうか?
 
結論から言うと、日本人では、GLP-1製剤の体重減少効果は、薬の種類によって、大きく異なります。
nbsp;
具体的には、常用量のリラグルチド・デュラグルチド・エクセナチドを投与しても、体重減少作用は認めません。
 
高用量のエクセナチド、セマグルチドを投与した際には、体重減少効果が報告されています。
 
 

日本人のエキセナチドの体重減少効果

 
エクセナチドを日本人2型糖尿病患者さんに使用した場合には体重は減るのでしょうか?
 
下図は、エクセナチド(バイエッタ)の医薬品インタービューフォームから抜粋した図です。
 
バイエッタのインタビューフォームの体重推移
 
投与24週投与時の体重は、プラセボ群で−0.47 kg、 バイエッタ5μg 2回群で−0.39kg、10μg 2回投与群で−1.54kgです。
 
プラセボ群と比べて、バイエッタ5μg2回投与では体重は減りません。
 
バイエッタ10μg 2回投与した群では、体重が1kg程度減ります。

 
→ Wikipedia プラセボ(偽薬)の説明
 
また、他の研究でも、バイエッタ5㎍2回投与群では体重減少を認めず、10μg2回投与群では、体重減少を認めたと報告されています。(3)
 
別の研究では、バイエッタ10μg2回投与による有意な体重減少効果は認めませんでした。(4)
 
バイエッタ投与量別の体重変化
Kadowaki T et al. Endocr J. 2009より引用
 
上図がその研究の体重推移のグラフです。
 
バイエッタ2.5㎍2回投与群、5μg 2回投与群では、プラセボ群より体重が増えてしまいました。
 
バイエッタ10㎍ 2回投与群では、一見、差があるようにみられますが、統計上の有意差はありません。
 
次に、1日2回タイプのバイエッタと、1週間1回タイプのビデュリオンの体重減少効果を比べてみます。
 
バイエッタ 1日2回 10㎍とビデュリオン 1週2mgの体重減少効果を比較したデータでは、ビデュリオンの体重減少は、バイエッタ 1日2回 10㎍よりも劣っていました。
 
バイエッタとビデュリオンの体重推移
ビデュリオンの医薬品インタビューフォームより引用
 
上のデータの裏付けとしては、バイエッタ10㎍2回投与からビデュリオンに切り替えると体重が増える事が報告されています。(5)
 
また、他の研究では、ビデュリオンの体重減少効果は認めなかったという報告もあります。(6)
 
 
以上をまとめると、バイエッタは、1日5㎍ 2回投与では体重減少効果はありません。
 
バイエッタを1日10㎍ 2回投与の最高用量で継続使用すれば、半年後には、1kg~2kg(約2%)程度の体重を減らせる可能性がある。

 
というところですね。
 
 

日本人のリラグルチド・デュラグルチドの体重減少効果

 
ヒトGLP-1由来のリラグルチド・デュラグルチドでは、日本人を対象にした多くの研究で、体重減少効果は認めていません。
 
デュラグルチドの薬剤承認時の2型糖尿病の人(体重 約71kg BMI 25.5)を対象にした3相試験では、デュラグルチド 0.75mg/週・リラグルチド 0.9mg/日を投与しても、ともに体重減少作用は認めません。
 

デュラグルチドの三相試験の体重減少の図

縦:体重変化(kg)
横:時間(週)


 
上図の点線がプラセボ群ですが、リラグルチド・デュラグルチドを投与した人では、逆に体重が増えています。
 
Miyagawa J et al. Diabetes Obes Metab. 2015より引用
 
他の研究でも、デュラグルチド・リラグルチドは、日本人2型糖尿病患者では、有意な体重減少を認めていません。(7)(8)(9)(10)
 
ただし、第3相試験の結果を集めて、男女別に解析しなおすと、男性には体重減少効果は認めませんが、女性には体重減少効果がある可能性がある事が報告されています。
 
男女別のデュラグルチド・リラグルチドの体重減少効果の図
(10)
 
上図の説明:
男性:デュラグルチド(DU 0.75mg)で0.09kg増加、リラグルチド(LIRA 0.9mg)で、0.03kg減少。
 
女性:デュラグルチド(DU 0.75mg)で1.32kg減少、リラグルチド(LIRA 0.9mg)で、0.51kg減少。
 
以上から、常用量のリラグルチド・デュラグルチドでは、2型糖尿病の小太りの女性であれば、体重減少効果(26週以上投与して、平均1.5kg程度)が期待できるかもしれません。
 
しかし、リラグルチド・デュラグルチドは、日本人の小太りの2型糖尿病の男性では、体重減少は期待できません。
 
 

日本人のセマグルチドの体重減少効果

 
セマグルチドは、2020年6月に発売された1週間に1回投与するタイプのGLP-1受容体作動薬です。
 
海外では、体重減少作用が最も強いGLP-1製剤として知られています。
 
発売されたばかりなので、日本人を対象とした研究報告は少ないですが、国内の第3相試験の結果を参照すると、
 
セマグルチド0.5mg、セマグルチド1.0mg、シタグリプチン100mgを、30週間投与した試験では、セマグルチド0.5mgでは、平均69.3kgから2.2kg、セマグルチド1.0mgでは、平均69.3kgから3.9kgの体重減少を認めました。(シタグリプチン100mgでは体重は増減しませんでした。)
 

セマグルチド・シタグリプチン投与後の体重変化

縦軸:体重変化量(kg)
Semaglutide:セマグルチド
Sitagliptin:シタグリプチン


Yutaka Seino et al. Diabetes Obes Metab. 2018
 
DPPⅣ阻害薬は、体重減少作用のない薬であることを考慮すると、セマグルチドには、体重減少効果がありそうです。
 
 
 
 

GLP-1製剤をやめると、リバウンドする。

 
GLP-1製剤を中止すると、一度、減少した体重はどうなるのでしょうか?
 
答えは、GLP-1製剤を投与する前の体重に徐々に戻る傾向があります。
 
下の図は、エクセナチドとグラルギン(長時間作用型インスリン)を52週目まで投与したのちに、一旦中止し、64週目から再開したときの体重推移を示したグラフです。
 
エクセナチド・グラルギン投与中止した時の体重推移
Mathijs C. Bunck et al.Diabetes Care 2011より引用
 
上の黒丸がグラルギン(インスリン)で、下の白丸が、エクセナチドです。
 
52週から両薬剤とも中止されていますが、薬剤の中止後に、体重は元の水準に戻る傾向があります。
 
64週からエクセナチドを再開すると、また体重は減少していきます。

 
 
 
 
以上が、GLP-1製剤の体重減少効果のまとめになります。
 
セマグルチドを除くGLP-1製剤の体重減少効果は、欧米の肥満者や肥満糖尿病の人と比較して、日本人の小太りの2型糖尿病の人では、体重減少の効果は乏しいか、認められません。
 
セマグルチドは、一部の臨床研究で体重減少効果が指摘されているものの、今後のさらなる調査が必要です。
 
また、GLP-1製剤の投与中は、食欲抑制効果により、体重減少作用を認めますが、使用をやめるとリバウンドします。
 
興味があれば、他の記事も読んで頂けると幸いです。
 
 
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生

 

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