ピオグリタゾン(先発品 アクトス)とは - 作用機序、薬価、副作用(心不全、浮腫、膀胱がん)を含めた解説
ピオグリタゾン(先発品 アクトス)とは - 作用機序、薬価、副作用(心不全、浮腫、膀胱がん)を含めた解説
公開日: 2019年12月6日
最終更新日: 2022年12月29日
ピオグリタゾン(先発品 アクトス)は、PPARγ・PPARαに作用して、脂質・塩分・水分などを体に貯めやすくする血糖降下薬です。
ピオグリタゾンのHbA1cの改善効果は、0.5% ~ 1.0%程度です。
副次的効果としては、
脂質を改善したり、脳梗塞や心筋梗塞などの血管系イベントのリスク低減効果があります。
副作用としては、
塩分・水分・脂質を蓄積するため、心不全、浮腫、体重増加をきたします。
また、膀胱がんや骨折のリスクを上昇させることも報告されています。
これらの副作用は、ピオグリタゾンの投与量を7.5mgに減らすことで、軽減する事が可能です。
ピオグリタゾンを使用する場合には、常用量 15mg ~ 30mgよりも、少量の7.5mgを使用しましょう。
目次
ピオグリタゾン(先発品名 アクトス)は、1999年に武田薬品工業から発売されたチアゾリジン系の内服の血糖降下薬です。
チアゾリジン系の血糖降下薬には、ピオグリタゾンとロシグリタゾンがありますが、ロシグリタゾンは、日本では発売されていません。
2011年には、ピオグリタゾンの膀胱がんなどのリスクが、メリットを上回る懸念があり、フランスとドイツでは販売が中止されています。
ピオグリタゾンは、脂肪細胞、筋肉、肝臓に作用して、糖分(グルコース)の産生を抑え、インスリンの効き(インスリン感受性)を改善させることにより、血糖降下作用を発現します。
ピオグリタゾンの作用機序は、完全には解明されていませんが、核内受容体のPPARγ、PPARαを介していると考えられています。
と考えると分かりやすいです。
PPARγは、脳にも発現しており、刺激されると、食欲が増えて、体重増加を促します。
まとめると、ピオグリタゾンは、体に糖分や脂肪をため込みやすくする薬と言えます。
2型糖尿病の患者さんが適応です。
添付文書上は、インスリン抵抗性が推定される場合(例:肥満)に限定されています。
食事、運動療法などの他の治療で効果不十分な場合に使用します。
ピオグリタゾンは、成人には、通常、15mg 〜 30mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与し、45mgが上限となる薬です。
理由は、後述しますが、7.5mg、15mg、30mgの血糖降下効果は大差なく、副作用が軽減されるため、7.5mgを用いた方が良いでしょう。(1)
ピオグリタゾンの薬価は、次の通りです。
半量で使用する事が多いため、7.5mgでは、10割負担で、1カ月 900円 ~ 300円 になります。
ピオグリタゾン投与により、HbA1cは、0.5% ~ 1% 低下します。(2)(3)(4)
東南アジア人では、ピオグリタゾン 7.5mgの少量投与でも、15mg、30mg投与時と同じく有効であり、投与量を少なくした方が、副作用は軽減されると、報告されています。
(5)
日本人女性を対象にして、ピオグリタゾン 7.5mgと15mgの効果と副作用を比較した研究では、血糖降下作用は、7.5mg、15mgで同等であり、7.5mg投与群の方が副作用は少なかったと報告されています。(6)
ピオグリタゾンには、血糖降下作用以外にもさまざまな副次的効果があることが報告されています。
ピオグリタゾンを投与すると、中性脂肪(TG)が低下し、HDL-Cが上昇する事が報告されています。
効果は、ピオグリタゾン 7.5mg、15mg投与時の効果は、ほぼ同等であり、中性脂肪(TG)は、約20mg/dl低下し、HDL-Cは、約3mg/dl上昇します。(7)(8)
ピオグリタゾンは、明らかな心血管疾患をもつ糖尿病患者の心血管死、心筋梗塞などの心血管イベント、脳卒中、心筋梗塞のリスクを低下させます。(9)
ただし、ピオグリタゾンは、全死因死亡のリスクを低下させることはありません。
ピオグリタゾンには、血糖降下作用をもちますが、同時に、さまざまな副作用が出現することが報告されています。
ピオグリタゾンの投与すると、浮腫が認められます。
浮腫は、女性やインスリン併用時に多く認められます。(10)
浮腫の発症は、女性に多く、ピオグリタゾンの投与量が多いほど、浮腫の頻度も増加します。
日本人2型糖尿病の女性を対象にした研究では、ピオグリタゾン7.5mg投与した人では、3.7%、15mg投与した人では、26.8%の人に浮腫が出現したとの報告されています。(11)
PPARγ刺激により、腎臓のナトリウム再吸収が促されます。
ピオグリタゾンを投与すると、心不全のリスクが上昇します。(12)
ピオグリタゾンをインスリンと併用すると、心不全のリスクが高まるため、推奨されません。
ピオグリタゾンを投与すると、膀胱がんのリスクが高まることが報告されています。(13)
フランスの研究では、ピオグリタゾンを投与した群の膀胱がんのリスク上昇を認め、累積投与量が28000mg以上、投与期間が2長くなる(24カ月以上)ほど、膀胱がんのリスクが高くなることが報告されています。(14)
ピオグリタゾンを投与した群では、骨折のリスクが上昇することが報告されています。(15)
ピオグリタゾンを投与することで、骨折の増加する理由は完全には解明されていません。
ピオグリタゾンの投与により、骨密度が中等度低下します。(16)
ピオグリタゾンは、PPRAγを活性化することで、食欲を増進し、脂質の蓄積を促します。(17)(18)
また、塩分や水分も体内に蓄積させます。
そのため、ピオグリタゾンを投与すると、体重が増加します。
欧米人の肥満者では、6カ月以内に、平均2.7kg増加し、小太り(平均BMI 25)の日本人では、平均0.73kg増加したと報告されています。(19)
どうして体重が増えたのかを調べた研究では、増えた体重 3.1kgのうちの75%は 水分の貯留が原因だったと報告されています。(20)
日本人に2型糖尿病の女性を対象にしたピオグリタゾン少量投与の研究では、15mgでは顕著な体重増加を認めたものの、7.5mgでは体重増加を抑制できたことが報告されています。
ピオグリタゾンは、HbA1cの改善効果も0.5%~1.0%と少なく、体重増加、浮腫、心不全などの副作用の多い薬剤です。
ピオグリタゾンの標準用量は15mg~30mgですが、7.5mgの少量投与でも血糖降下作用を認めます。
また、ピオグリタゾンの投与量を減らすことで、副作用を減じる事が可能です。
以上から、ピオグリタゾンを使用する場合には、7.5mgの少量投与が良いと考えます。
以上が、ピオグリタゾン(先発品 アクトス)の解説です。
皆さんの参考になれば幸いです。
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