花粉症ってどんな病気? - 診断から治療までの解説
花粉症ってどんな病気? - 診断から治療までの解説
公開日: 2020年2月5日
最終更新日: 2021年9月22日
花粉症は、日本人の約3割が罹患している一般的な病気です。
花粉症は、症状の出現する時期(季節性)があることから、別名、季節性アレルギー性鼻炎と呼ばれています。
花粉症の自覚症状には、さらさらとした鼻水、くしゃみ、鼻閉(鼻づまり)、目のかゆみなど様々な症状を認めます。
花粉症の治療は、花粉への暴露を避け、薬によってアレルギー反応を抑えることで、症状を緩和します。
今回は、花粉症の診断から治療の流れについて解説します。
目次
花粉症は、本来、無害な花粉に対して、体の免疫が過剰に反応してしまうことで、鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどの自覚症状をきたす病気です。
花粉は、花の咲く季節に、風に乗って飛散するため、自覚症状の出現時期には、季節性があります。
また、無害な花粉への過剰な反応は、アレルギー反応と呼ばれます。
過剰な免疫反応が生じると、鼻の粘膜が腫れて、鼻づまりを起こしたり、鼻水やくしゃみを認めます。
そのため、花粉症は、別名、季節性アレルギー性鼻炎と呼ばれます。
花粉は、体のあちこちに付着するため、眼に付着した際には、目のかゆみや充血などの眼の症状が出現する人もみえます。
(季節性アレルギー性結膜炎と呼ばれます。)
花粉症で認められる一般的な症状は、次の通りです。
この中でも良く認められる症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりです。
花粉症による鼻水は、風邪のときに認められるようなネバネバとした鼻水ではなく、さらさらとした鼻水になります。
また、花粉症では、発熱しません。
発熱がある場合には、ウイルス性の風邪などの別の病気が考えられます。
一年を通じて、咲いている花は少ないため、花が咲く時期のみに認められる季節性があるのも特徴です。
当院では、花粉症を疑った方には、次のような診察を行っていきます。
問診では、現在の症状(自覚症状の有無、症状の出現した時期、咳等の有無)、持病、投与薬、既往症、家族歴(=血縁者の病気・顔が似るように病気が似るため)、アレルギーの有無(薬、食物、病気)などを聴取します。
身体診察では、発熱の有無、頭頚部・胸部、必要に応じて、腹部・下肢・皮膚等の診察を行います。
花粉症などのアレルギー性鼻炎でも全身を診察する理由は、他のアレルギー疾患をもっている可能性が高いからです。
例を挙げると、アレルギー性鼻炎に気管支喘息を合併している人の割合は、約20 ~ 38%と報告されています。(1)
花粉症を診断する際には、次のような検査を行います。
内科では、耳鼻科と異なり、鼻鏡検査は行いません。
そのため、問診や身体診察から、花粉症を疑った方に対して、どんな花粉や物質にアレルギーがあるのかの検査をします。
(* 鼻づまりが強い人の場合には、鼻の骨や軟骨の変形など(鼻中隔湾曲症、腫瘍、ポリープなど)を確認する必要があるため、鼻鏡検査等の可能な耳鼻科受診をお勧めします。)
アレルギーの検査には、皮膚テスト、誘発テスト、血清特異的IgE抗体検査がありますが、当院では、3つの中で一番、簡便な血清特異的IgE抗体検査を行います。
→ 皮膚テストの解説 Qlife(外部リンク)
血清特異的IgE抗体検査とは、血液中に、スギ花粉などの特定のものに対して、アレルギー反応をおこすIgE抗体というものがあるかを確認する検査です。
特異的IgE抗体検査が、とある花粉に対して陽性になる場合には、その花粉にアレルギーがある可能性があるという事です。
→ 特異的IgE抗体の説明(CRC)外部リンク
花粉症・鼻炎で測定する血清特異的IgE抗体検査の項目は、次のセットを用いる事が多いです。
CAP16 花粉症・鼻炎セット(LSIメディエンス社)
ハウスダスト、ダニ、スギ、ヒノキ、ハンノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、ネコ、イヌ、ハムスター、ゴキブリ、ユスリカ、ガ、カビ、トマト の計16種類です。
初回受診の方は、上記の検査に加えて、肝臓、腎臓、白血球数などの一般血液検査を行います。
これまでの検査で、自分が何の花粉や物質にアレルギーがあるのかが判断できました。
次に、花粉症の治療を説明します。
花粉症の治療は、基本的に、花粉症の治療ガイドラインに沿って行っています。
鼻アレルギー 診療ガイドライン ―通年性鼻炎と 花粉症― 2016年度版 より引用
花粉症の治療は、花粉への暴露の回避、薬物療法、免疫療法が基本になります。
当院では、花粉症の軽症から中等度の症状の方を対象にしております。
ステロイドの内服が必要な方などの重症な方については、必要に応じ専門医療機関にご紹介させて頂いております。
はじめに行う花粉症の治療の基本は、花粉への暴露を避ける事です。
マスク・メガネの着用から始めましょう。
詳細は、下の記事を参照して下さい。
花粉症対策の基本 2020 - 花粉への暴露を避ける方法
当院の花粉症の薬物療法では、次の薬剤を使用します。
第2世代の抗ヒスタミン薬は、働いている方が多くみえますので、眠気が少なく、1日1回タイプのクラリチン、もしくは、ビラノアを処方しています。
クラリチン(ロタラジン)は後発品があるため、薬価が安価になります。
(2020年2月 クラリチン10mg 73.0円/錠 ロタラジン10mg 27.6円/錠 ビラノア20mg 72.5円/錠)
その他の薬も、症状に応じて処方します。
アレルゲン免疫療法は、からだをアレルゲン(例:スギ花粉)に慣らすことで、症状を和らげたり、根本的な体質改善が期待できる治療法です。
スギ花粉症の場合は、スギ花粉の成分を含む治療薬を用います。
アレルゲン免疫療法の具体的な方法としては、希釈したアレルゲンを皮下投与する方法が用いられていましたが、近年では、舌下投与による方法も用いられています。
スギ花粉症のアレルゲン免疫療法は、一般的に、シダキュアと呼ばれるスギ花粉を原料とするエキスから作られた舌下錠が用いられています。
シダキュアは、当院では採用しておりません。
→ シダキュアの解説(鳥居薬品 ホームページ外部リンク)
花粉症の症状が重篤な場合に、症状を緩和するために手術療法が用いられる事があります。
手術方法には、次のような様々な治療法があります。
これらの手術は、鼻の粘膜にアレルギー反応が起こりにくくしたり。アレルギーが起こっても鼻づまりや鼻水、くしゃみが起こりにくくすることを目的としています。
花粉症の自覚症状や重症度、鼻の状態によって、手術適応がかわります。
ご興味のある方は、耳鼻咽喉科の先生にご相談下さい。
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文責・名古屋市名東区 内科・糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生