甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症とは
公開日: 2020年7月1日
最終更新日: 2022年12月29日
甲状腺機能亢進症は、甲状腺が甲状腺ホルモンを過剰に産生している状態です。
甲状腺ホルモンは、新陳代謝を司るホルモンです。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、体の代謝が亢進し、頻脈、血圧上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、体重減少などの自覚症状を認めます。
甲状腺機能亢進症をきたす原因としては、バセドウ病が最もよく認められます。
甲状腺機能亢進症の治療方法には、原疾患により異なりますが、いくつかの方法があります。
バセドウ病では、チアマゾール(商品名:メルカゾール)、プロピロチオウラシル(商品名:プロパジール)と呼ばれる甲状腺薬、放射性ヨウ素を使用して、甲状腺ホルモンの産生を抑制します。
甲状腺の全部、または、一部を切除する手術を行う場合があります。
目次
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、体のさまざまな臓器の代謝速度を調節しています。
甲状腺機能亢進症の症状は人によって異なりますが、次の症状を認めます。
高齢者の甲状腺機能亢進症は、若年者とは症状が異なる場合があります。
高齢者で最もよく認められる症状は、体重減少と疲労です。また、不整脈や心不全、便秘などの症状も比較的よく認められます。
60歳以上の高齢者では、これらの症状を認めず、錯乱、引きこもり、抑うつなどの無欲性甲状腺機能亢進症、または、潜在性甲状腺機能亢進症をきたす場合があり、うつ病や認知症と間違われることがあります。
甲状腺機能亢進症の身体的な特徴として、甲状腺機能亢進症では、甲状腺の腫大を認めることが多く、甲状腺機能亢進症の原因によって、甲状腺全体が腫脹したり、甲状腺ホルモンを分泌する結節ができたります。
甲状腺の腫大によって、頚部を走行する気管や食道が圧迫され、呼吸や嚥下に問題を生じる場合があります。
亜急性甲状腺炎では、甲状腺に圧痛や自発痛が生じます。
バセドウ病の場合には、甲状腺を刺激する自己抗体によって、眼窩後方の組織が肥大し、バセドウ眼症と呼ばれる眼病をきたすことがあります。
目が前方に突出するため、複視、光過敏、目の痛みをきたす可能性があります。
甲状腺機能亢進症の原因にはいくつかの疾患が含まれます。
バセドウ病では、甲状腺に対する免疫異常により、甲状腺に対する自己抗体が産生されます。
バセドウ病は、その自己抗体によって甲状腺が刺激されることで、甲状腺から過剰なホルモンが分泌される自己免疫疾患です。
→ バセドウ病の解説
甲状腺にできる結節は多くは良性です。
しかし、時々、甲状腺ホルモンを自律的に分泌する結節ができることがあり、プランマー病と呼ばれます。
プランマー病は、別名、
と呼ばれることがあります。
甲状腺にウイルスや細菌が感染すると、甲状腺の組織が壊されて、保存されていた甲状腺ホルモンが血液中に漏出します。
亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、化膿性甲状腺炎などさまざまな病気があります。
→ 無痛性甲状腺炎の解説
ヨウ素は、海藻、一部の医薬品(アミオダロン、インターフェロンα、リチウム)、ヨウ素を含有する造影剤などに含まれています。
過剰に摂取すると、甲状腺が甲状腺ホルモンを過剰に分泌することがあります。
甲状腺ホルモンの薬を多量に内服すると、甲状腺機能亢進症の症状をきたすことがあります。
下垂体からは、甲状腺からの甲状腺ホルモン分泌を促す、甲状腺刺激ホルモンが分泌されています。
下垂体腫瘍等により、甲状腺刺激ホルモンが過剰に分泌されると、まれに、甲状腺機能亢進症をきたす場合があります。
甲状腺機能亢進症にはさまざまな疾患が含まれていますが、一般的に、リスクが高い人は、次の方です。
甲状腺機能亢進症を診断する場合には次の検査を行います。
甲状腺機能亢進症の治療は、甲状腺ホルモンの作用を減弱する対症療法と、甲状腺ホルモンが過剰分泌されている原因の治療に分けられます。
甲状腺ホルモンの作用を減弱するための対症療法としては、βブロッカーが使用されます。
βブロッカーには、半減期が短く1日3回内服するプロプラノロール塩酸塩(先発品:インデラル)と、長時間作用型の1日1回内服するビソプロロールフマル酸塩錠(先発品:メインテート)等が用いられます。
原因治療は、甲状腺機能亢進症の原因により異なります。
頻度の最も多いバセドウ病では、抗甲状腺薬(チアマゾール(商品名:メルカゾール)、プロピロチオウラシル(商品名:プロパジール))、放射線ヨウ素内用、甲状腺の全切除、一部切除などを行います。
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生