女性には、4つのライフステージ(思春期・性成熟期・更年期・ 老年期)があります。
更年期は、閉経前の5年間と閉経後の5年間を併せた10年間です。
更年期には、女性はさまざまな体の変化を自覚します。
更年期に認められるさまざまな症状の原因は、主に、女性ホルモン(エストロゲン)が低下していくことですが、この時期には、加齢に伴う身体の変化や、本人の性格などの心理的影響、ライフステージの変化に伴う職場や家庭における人間関係などの社会的変化などが関与していることも知られています。
今回は、更年期に認められる高血圧について解説します。
更年期になると、血圧はどうなりますか?
閉経前の女性は、同年齢の男性よりも血圧が低いことが知られていますが、女性は40代~50代に急激に血圧が上昇します。
閉経後の女性の高血圧の人の割合は、高齢者では男性の人と同程度になることが知られています。
男性と女性のそれぞれの高血圧の人の割合は次の通りです。
年代・男女別の高血圧の人の割合
- 20代 男性 5.4% 女性 2.4%
- 30代 男性 17.6% 女性 2.5%
- 40代 男性 39.2% 女性 9.5%
- 50代 男性 59.0% 女性 33.8%
- 60代 男性 72.3% 女性 50.6%
- 70代 男性 75.7% 女性 74.1%
男性は、年を経るにつれて、徐々に高血圧の人の割合は増えていきすますが、一方、女性では、40代~50代を境にして、高血圧の人の割合は急激に増えていきます。
20歳以上の成人における高血圧の人の割合は、男性では60%、女性では43%と報告されており、高血圧は、やや男性に多く認められる病気です。
更年期にはどのくらい血圧が上昇しますか?
先ほど、女性では、更年期を境に高血圧の人の割合が、急激に増えることを解説しました。
それでは、女性では、更年期になると、どのくらい血圧が上がるのでしょうか。
更年期に最も大きなホルモンの変化を生じ、女性の身体に影響を与えるイベントとして、閉経があります。
閉経によって血圧が上昇するかどうかを調べた研究があります。
この研究では、315人の女性を対象として、平均5.2年間の期間を観察し、閉経前後で血圧が上昇するかどうかを検討しました。
結果としては、閉経した女性では、収縮期血圧が4‐5mmHg上昇し、閉経しなかった女性では、血圧は変わらなかったと報告されています。
ただし、一部の研究では、閉経の前後で血圧が変わらず、閉経は血圧上昇に関与しないと報告されています。
閉経に伴う血圧上昇は、個体差があり、生活環境や遺伝等の影響を受ける可能性があることに注意が必要です。
更年期に血圧が上がるのはなぜですか?
更年期に血圧が上がる明確な理由は明らかになっていません。
同年代の男性の血圧上昇と比較した際に、更年期の女性の血圧の変化が急激であることから、更年期の女性特有の変化が血圧上昇に大きな影響を与えているのは明白です。
女性の更年期のさまざまな症状は、主として、女性ホルモン(エストロゲン)が関与しており、血圧の上昇もエストロゲンの影響が考慮されています。
女性ホルモンが減少して、血圧が上昇するメカニズムとして、次のものが考えられています。
女性ホルモンが減少すると、血圧が上昇する推定メカニズム
- 血管の内側の壁(内皮)の機能が障害される
- 動脈硬化が進行しやすくなる
- レニン―アンジオテンシン―アルドステロン系(RAA系)が亢進する
- 酸化ストレスの増加する
- 塩分感受性が変化する
- 体重が増加する
女性ホルモンが減少すると、血圧の上昇を生じるだけでなく、コレステロールの上昇も引き起こすため、高血圧の合併症を生じやすくなります。
更年期に女性ホルモンを補充する(ホルモン補充療法(HRT))と、血圧はどうなりますか?
更年期にホルモン補充療法を行うと、閉経後にホルモン補充療法を行わなかった場合と比較して、収縮期血圧の上昇が少なくなったと報告されています。
ただし、エストロゲンなどを補うホルモン補充療法には、不正性器出血が生じたり、乳がんや子宮体がんなどのリスクが上昇する場合があるため、高血圧の治療として行うべきではないでしょう。
高血圧と更年期の解説は、以上です。
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。