カリウムは、ナトリウム(塩)と同じく、生命維持に必要なミネラルです。
カリウムは、野菜や果物などの生鮮食品に多く含まれていますが、カリウムは水に溶けやすく、食品に含まれるカリウムの量は、食物を加工するにつれて、少なくなります。
カリウムとナトリウム(塩)は、血圧に対して、反対に作用します。
塩分を多く摂取すると血圧は上がりますが、逆に、カリウムを多く摂取すると、血圧は下がることが知られています。
カリウムの血圧を下げる作用は、塩分の摂取量が多い人や、カリウムの摂取量が少ない人で強くなります。
日本人の食生活では、カリウムの摂取量は不足しがちなため、高血圧の人や血圧が高めの人は、新鮮な生野菜や果物を食べて、カリウムを積極的に摂取しましょう。
カリウムは、体の中でどんな働きをしていますか?
カリウムは、人体にとって生命維持に必要なミネラルの一つです。
カリウムは、ナトリウム(塩)と同じく、水分と血液量を維持したり、筋肉等の細胞の活動、細胞の内側と外側の浸透圧などの調整に用いられている電解質です。
カリウムを摂取すると、血圧は下がりますか?
カリウムは、血圧と密接な関係があります。
血圧と深いかかわりのある電解質には、ナトリウム(塩)がありますが、カリウムとナトリウム(塩)は、血圧に対して、反対に作用します。
ナトリウム(塩)を摂りすぎると、血圧が上昇しやすくなる一方で、カリウムの摂取量が少ないと、血圧が上昇しやすくなります。
高血圧の人では、カリウムの摂取量を増やすと血圧が下がる場合があります。
ナトリウム(塩)の摂取量が多い人では、カリウムの摂取量を増やすと、ナトリウム(塩)の摂取量が少ない人と比べて、血圧がより多く下がることが報告されています。
カリウムと脳や血管の病気のリスクとの関係を教えてください。
高血圧の代表的な合併症には、脳卒中や心筋梗塞などの脳や心臓の血管の病気があります。
カリウムの摂取量を増やすと、これらの病気のリスクを下げることができます。
これらのカリウムによる病気の予防効果は、血圧が下がるために生じます。
脳卒中は、日本人に多い高血圧の重篤な合併症です。
2016年に発表された研究によると、カリウム摂取量を増やすほど、脳卒中のリスクは低下する傾向があり、1日3510mgのカリウムを摂取していた人では、脳卒中のリスクが最も低かったと報告されています。
日本人のカリウム摂取量の目安を教えてください。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人1人1日当たりのカリウム摂取の目標量は、男性3000mg以上、女性2600mg以上となっています。
2012年に公表されたWHOのガイドラインでは、男女とも1日3510mgの摂取が推奨されています。
日本人の食生活では、一日どのくらいのカリウムを摂取していますか?
平成28年国民健康・栄養調査では、日本人の成人の一日当たりのカリウム摂取量の中央値は、男性 1893mg~2505mg、女性1685mg~2294mgと報告されています。
日本人のカリウム摂取量は、男女ともにやや不足しているようです。
日本人の塩分の摂取量は多く、減塩すべきですが、カリウムは積極的に取るようにした方が良いでしょう。
カリウムが多く含まれる食品を教えてください。
カリウムは、野菜、果物、シーフード、乳製品などに含まれています。
カリウムは、生鮮食品には多く含まれていますが、加工や精製が進むと、食品に含まれているカリウムは減少します。
これは、カリウムは水に溶けるため、煮たりゆでたりすると、食物中のカリウムが、水の中に溶け出してしまうために生じます。
カリウムを摂取する場合は、野菜や果物は、なるべく生で食べましょう。
カリウムのサプリメントを内服すると、血圧は下がりますか?
2017年に発表された複数の研究を集めた解析(メタアナリシス)の報告では、カリウムサプリメントなどによるカリウム補給は、本態性高血圧の治療に有効であることが報告されています。
1213人が参加した23の臨床試験の結果では、カリウムを補給した人では、カリウムを補給しなかった人と比べて、収縮期血圧が平均4.25mmHg、拡張期血圧が平均2.53mmHg低下したと報告されています。
本論文では、カリウムの補給は、血圧を中程度下げる効果があり、副作用がなく、安全であり、本態性高血圧の患者への補助として推奨されると結論づけています。
別の研究でも、カリウム補給による血圧低下効果は認められ、カリウム補給による血圧の低下作用は、カリウム摂取量が1日3.5g未満と少なかった人と、塩分の摂取量が1日4g以上の人で、特に認められたと報告されています。
カリウムを取りすぎることによる副作用はありますか?
カリウムは多くの食品に含まれており、腎機能が正常であれば、過剰摂取になるリスクは低いと考えられています。
そのため、カリウムの摂取の上限量は設定されていません。
海外の治療ガイドラインでは、1日当たりのカリウム摂取量は、3500mg~5000mgが推奨されており、この摂取量であれば問題ないと思われます。
カリウムを摂取するときに注意が必要な人はどんな人ですか?
カリウムは、腎臓から尿の中へ排泄されています。
腎臓の機能が低下している人では、カリウムが体内に溜まりやすくなり、血液中のカリウム濃度が上がりすぎる場合があります。
血液中のカリウムが高くなりすぎると、胃の調子が悪くなったり、危険な不整脈をおこす場合があります。
重度の糖尿病性腎症や、慢性腎不全などの腎臓病のある人では、主治医の先生にカリウムの摂取量について相談しましょう。
カリウム制限が必要になる腎機能とカリウム制限の目安
カリウムの摂取制限は、血液中のカリウム濃度が基準値を超えて上昇したとき、もしくは、腎臓の血流量を示す「eGFR」という指標が30未満になったときに考慮します。
腎機能が悪い人のカリウムの摂取量は、1日1500mg~2000mg以下に制限されます。
カリウムを制限する場合には、生鮮野菜や果物から摂取されるカリウムを減らすため、野菜や果物の煮汁を捨てるなどの工夫をします。
ただし、日本人のカリウムの1日あたりの平均摂取量は、男性 1900mg~2500mg、女性1700mg~2300mgであり、もともと日本人のカリウム摂取量は不足気味なため、カリウム制限を行う場合には、管理栄養士さんに食事内容を相談しましょう。
慢性腎不全と糖尿病性腎症におけるカリウム制限の目標値
腎機能が低下したときのカリウム制限の目標値は、次の通りです。
- 慢性腎不全(3b期):eGFR 30~44 カリウム制限 2000mg/日以下
- 慢性腎不全(4期) :eGFR 29未満 カリウム制限 1500mg/日以下
- 糖尿病性腎症4期 :eGFR 30未満 カリウム制限 1500mg/日未満
- 血液透析 カリウム制限 2000mg/日以下
- 腹膜透析 カリウム制限なし
上記は、糖尿病専門医研修ガイドブック 改定第6版、慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版を参考にしています。
高血圧とカリウムの関係についての解説は以上です。
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。