高血圧は、日本人の3人に1人が罹患している非常に多い病気です。
日本人の高血圧の約9割は、明らかな原因を認めない本態性高血圧です。
本態性高血圧は、高血圧になりやすい体質が遺伝することが報告されており、遺伝が高血圧の発症に与える影響は、30%~60%と言われています。
両親や親族が高血圧の人では、将来的に高血圧を発症するリスクが高くなります。
高血圧の発症に、遺伝の影響は大きいですが、同時に、生活習慣の影響も受けます。
両親が高血圧がある人など、将来の高血圧の発症のリスクが高い人は、減塩、野菜の摂取、適性体重の維持、運動など、高血圧の予防に努めましょう。
高血圧は遺伝しますか?
高血圧には、明らかな原因を認めない本態性高血圧と、他の病気や薬の副作用によって生じる二次性高血圧があります。
約9割以上の人の高血圧は、明らかな原因の認められない本態性高血圧です。
本態性高血圧は遺伝することが知られており、両親が高血圧を患っている人や親族に高血圧のいる人では、高血圧を発症しやすくなることが知られています。
両親が高血圧なのですが、将来、高血圧になりますか?
高血圧の発症に遺伝が影響する割合は、30%~60%と言われています。
そのため、両親が高血圧だからと言って、必ずしも、将来高血圧を発症するわけではありません。
高血圧の発症には、両親から受け継いだ体質である遺伝素因と、食生活、運動状況、喫煙などの生活環境である環境素因の両者の相互作用によって発症します。
両親が高血圧の人は、親族に高血圧のいない人と比較し、将来の高血圧の発症リスクが高いため、若いころから、生活習慣の改善に取り組みましょう。
高血圧の発症に生活環境が与える影響を教えてください。
高血圧の発症には、遺伝と環境の両者が関与しています。
生活環境が血圧にどの程度影響を与えているのかは、日本人の遺伝情報が1~2世代ではそれほど変化しないと考えられることから、日本人の年代別の平均血圧の推移をみると分かります。
下に、日本人の30代の平均血圧の推移を示します。
日本人の30代の平均血圧の推移
- 1961年 男性 130/76 mmHg 女性 127/75 mmHg
- 1990年 男性 126/79 mmHg 女性 118/73 mmHg
- 2016年 男性 123/79 mmHg 女性 111/71 mmHg
年代が進むにつれて、徐々に平均血圧が低くなっているのがお分かりでしょうか?
30代では、降圧薬を内服している人はそれほど多くないため、血圧が年々低下している原因としては、生活習慣の変化が大きく関与していると考えられます。
血圧の低下の原因になりうる生活習慣の変化としては、塩分摂取量の減少や喫煙率の低下などが考えられます。
高血圧の発症には、どんな遺伝子が関与していますか?
ヒトの遺伝子数は、2万数千個程度だと考えられています。
この2万数千個のさまざまな機能をもつ遺伝子が複雑に作用することによって、ヒトは形作られています。
一般的な高血圧である本態性高血圧は、一つの遺伝子(単一遺伝子)の異常によって生じるのではなく、複数の遺伝子(多遺伝子)が影響しあうことで発症すると考えられています。
高血圧の発症に影響を与える遺伝子には、交感神経に関係するアドレナリン受容体の遺伝子や、レニン・アンジオテンシン系に関係するアンギオテンシンの遺伝子などさまざまな遺伝子が発見されています。
単一遺伝子の異常により発症する高血圧は稀です。
単一遺伝子異常による高血圧にはどんな病気がありますか?
一つの遺伝子に突然変異が起こることによって生じる高血圧をきたす病気には、次のものが挙げられます。
単一遺伝子異常により高血圧をきたす病気
- グルココルチコイド反応性アルドステロン症
- Apparent mineralocorticoid excess症候群
- 先天性副腎過形成症
- リドル症候群
- ゴードン症候群
単一遺伝子異常に伴う高血圧の多くは、電解質に異常があり、小児期より症状が認められます。
遺伝子異常に伴う機能低下が軽度なときには、著明な症状を認めない場合があります。
高血圧と遺伝の関係についての解説は以上です。
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。