高血圧の薬の解説 – 降圧薬の種類と特徴について
高血圧の薬の解説 – 降圧薬の種類と特徴について
公開日: 2021年10月1日
最終更新日: 2022年12月28日
高血圧の薬は、一般的に、降圧薬と呼ばれており、血圧を下げるために用いられます。
降圧薬には、次のように、さまざまな種類の薬があり、各薬にはそれぞれ異なった特徴があります。
医師は、これらの降圧薬を、それぞれの薬の特徴をふまえつつ、個々の年齢や病状に応じて、処方しています。
今回は、日本で使用されている代表的な降圧薬の種類と特徴について解説します。
日本で使用されている代表的な降圧薬は次の通りです。
降圧薬にはさまざまな薬があります。
薬の種類ごとに、薬の効くメカニズム、血圧を下げる力、効果時間、副作用、副次的効果(血圧を下げる以外に得られる良い効果)などの特徴が異なっています。
Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)は、カルシウムが心臓や動脈などの平滑筋細胞に流入するのを阻害する薬です。
カルシウムが細胞内に流入すると、平滑筋は収縮するため、カルシウムの流入を抑えると、血管は弛緩し、血圧が下がります。
Ca拮抗薬は、さまざまな降圧薬の中で、最も降圧作用が強力であり、副作用も少ないため、日本で最も多く使われている降圧薬です。
薬の効果時間は、薬によって長短があり、作用時間が長く、1日1回の内服で済む薬から、作用時間が短く、1日3回飲む薬などがあります。
薬の効果時間が短く、内服回数が多い薬だと、飲み忘れが発生したり、血圧の変動が激しくなるため、主に、1日1回飲むだけで一日中効果が持続する長時間作用型の薬が使用されています。
一部のCa拮抗薬には、脈拍が遅くする作用をもつ薬もあります。
Ca拮抗薬の副作用は、他の降圧薬と比較すると少なく、安全性が高い薬が多いのですが、動悸、頭痛、ほてり感、足首や四肢の浮腫、歯肉肥厚、めまい、便秘などを認めることがあります。
糖代謝、脂質代謝、電解質などに悪影響を与えないため、糖尿病や脂質異常症の患者さんにも使いやすい薬です。
ACEはアンジオテンシン変換酵素の略です。
アンジオテンシン変換酵素は、血圧上昇作用を持たないアンジオテンシンⅠを血圧上昇作用をもつアンジオテンシンⅡへの変換する働きを持っています。
ACE阻害薬は、アンギオテンシンⅡの合成を減らすことにより、血圧を下げます。
ACE阻害薬は、Ca拮抗薬やARBと同じく、使用されることの多い薬です。
ACE阻害薬の中には、腎臓や心臓などの臓器保護作用、尿蛋白の減少作用をもつものがあり、心不全、腎臓病、糖尿病などをもつ患者に適しています。
ACE阻害薬の代表的な副作用としては、良く認められるものとして、空咳(乾いた咳)があります。
空咳は、薬を継続的に飲み続けることで軽快することがあります。
稀ですが、血管浮腫(特に口の周辺(口唇、口腔、咽頭など)が腫れる)、電解質異常(高カリウム血症など)、腎障害、低血糖なども認められます。
ACE阻害薬は、胎児に悪影響を及ぼすため、妊娠中は内服できません。
妊娠中、もしくは、妊娠を予定している、妊娠の可能性がある人は、医師にご相談下さい。
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)は、アンジオテンシンⅡの受容体への結合を阻害することで、血圧を下げます。
ARBの血圧を下げる効果は、ACE阻害薬と同等またはそれ以上であり、ACE阻害薬よりも副作用が少ないため、よく使用されている薬です。
ARBは、腎臓などの臓器保護作用や蛋白尿の減少作用をもつことが知られており、心不全、腎臓病、糖尿病などをもつ患者に適しています。
ARBの副作用としては、めまい、動悸、電解質異常(高カリウム血症など)、腎機能悪化などが挙げられます。
妊娠中は、ACE阻害薬と同じく、胎児に悪影響を及ぼすため、使用できません。
妊娠中、妊娠予定、妊娠の可能性のある方は、医師にご相談下さい。
直接的レニン阻害剤は、比較的、新しいタイプの降圧薬です。
レニンは、アンギオテンシノーゲンからアンギオテンシンⅠを合成します。
直接的レニン阻害剤は、このレニンをブロックすることで、血圧を下げます。
利尿薬は、古くから用いられている降圧薬です。
利尿薬は、体内の過剰なナトリウム(塩分)と水分を取り除くことで、降圧作用を発揮します。
利尿薬には、サイアザイド系利尿薬、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿薬の3種類があります。
それぞれの薬ごとに、作用機序や降圧効果などの特徴が異なっているため、病状によって使い分けています。
利尿薬の降圧効果は比較的強く、腎不全や心不全などの塩分が貯留しやすい状態で塩分や水分を排泄するために使用されたり、使用頻度の高いCa拮抗薬やARB、ACE阻害薬等の他の降圧薬に追加されて使用されます。
利尿薬の副作用として多いものとして、尿中へのカリウムの喪失による低カリウム血症などの電解質異常があります。
カリウムは、ナトリウムと共に、尿中に排泄されます。
カリウムは、筋肉の収縮や細胞の活動に必要であり、カリウムが不足すると、脱力、足のけいれん、全身倦怠感等が生じる場合があります。
サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬には、カリウム喪失の問題があったため、その後、カリウム保持性利用薬が開発されました。
カリウム保持性利尿薬では、尿へのカリウムの排泄が抑制され、逆に、高カリウム血症をきたす場合があります。
一部の利尿薬では、血糖値の上昇を引き起こすことがあるため、糖尿病の方は注意が必要です。
その他の副作用としては、尿酸値の上昇による痛風のリスク上昇、のどの渇き、脱水症、頻尿などがよく知られています。
α遮断薬は、血管壁の平滑筋の緊張を和らげ、血圧を低下させます。
α遮断薬は、男性の前立腺肥大症の治療に用いられることもあります。
α遮断薬の副作用には、頻脈、めまい、起立性低血圧(起立した時に血圧が下がり、立ちくらみなどを生じます。)などがあります。
β遮断薬は、心臓に直接作用し、心拍数や心臓のポンプの力を低下させることで、血圧を低下させます。
β遮断薬は、心臓の負荷を下げて、長期的な予後を改善するため、慢性心不全で使用されています。
β遮断薬は、糖代謝や脂質代謝に悪影響を及ぼすため、糖尿病、高齢者などでは、第一選択として使用されません。
β遮断薬の中には、副作用として、徐脈、喘息発作、うつ病、低血糖、体重増加などをきたす場合があります。
糖尿病の治療中(特にインスリン使用中)の方は、低血糖に対する反応が減弱する可能性があるため、注意が必要です。
β遮断薬を突然中止すると、狭心症などの心臓発作や不整脈を引き起こす場合があるため、危険です。
β遮断薬を中止する場合は、徐々に減量して中止します。
αβ遮断薬は、α受容体とβ受容体の両方を阻害することで、降圧効果を発揮します。
カルベジロール(アーチスト)には、心保護作用があり、心不全などの患者ではよく用いられています。
αβ遮断薬の副作用として、起立性低血圧を生じる場合があります。
α2遮断薬のメチルドパは、現在も使用されている最も古い降圧薬の一つです。
脳などの中枢にあるα2受容体を刺激すると、末梢における交感神経の活動が抑制され、血管が広がり血圧が下がります。
α2受容体刺激薬は、中枢のα2受容体を刺激することにより、血圧を低下させます。
α2受容体刺激薬の副作用として、眠気やめまいを生じる場合があります。
メチルドバは、胎児への影響が少ないとされており、妊娠中に発症する高血圧で使用されることが多い薬です。
配合剤は、数種類の薬を一まとめにすることにより、飲みやすさを増した薬です。
配合剤は、初回から使用すると、血圧が下がりすぎる可能性があるため、はじめは、単剤で治療を開始します。
その後、降圧効果が不十分な場合に、二剤を併用したり、配合剤に切りかえます。
Ca拮抗薬とARBの合剤、Ca拮抗薬と利尿薬、ARBと利尿薬、Ca拮抗薬とARBと利尿薬、Ca拮抗薬とスタチン(コレステロールを下げる薬)の合剤が市販されています。
以上です。
アスクレピオス診療院では、生活習慣病の専門家が高血圧の治療に当たっています。
高血圧でお困りなら、当院にご相談ください。
糖尿病内科 アスクレピオス診療院(名古屋名東区)のホームはこちら
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」のブログ記事一覧
関連記事
高血圧の原因とは
高血圧の症状の解説
高血圧の症状 – めまいと血圧の関係とは
高血圧の症状 – 頭痛と血圧の関係とは
マスクと高血圧の関係とは
文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生