インフルエンザとは – 症状(熱、咳、頭痛等)、流行る時期、潜伏期間、検査、治療などの解説
インフルエンザとは – 症状(熱、咳、頭痛等)、流行る時期、潜伏期間、検査、治療などの解説
公開日: 2019年11月19日
最終更新日: 2020年2月27日
今年も徐々に寒くなり、インフルエンザが流行するシーズンが近づいてきました。
今回は、インフルエンザについての解説です。
インフルエンザの自覚症状、流行する季節、合併症、予防、治療などの基本的な情報について、なるべく分かりやすくまとめました。
興味があれば読んでいただけると幸いです。
目次
インフルエンザは、鼻、咽頭、時に肺に感染するインフルエンザウイルスによって引き起こされる伝染性の呼吸器疾患です。
主に冬季に世界中で発生と流行を繰り返しています。
ヒトに感染するインフルエンザには、A型、B型、C型がありますが、症状が強く問題となるのは、A型、B型です。
まれですが、インフルエンザは1シーズンに1回だけではなく、A型とB型の両方にかかることがあります。
インフルエンザの自覚症状としては、発熱、咳、関節痛、筋肉痛、頭痛などを認めます。
インフルエンザにかかっても、全員が高熱をきたすわけではなく、約3割の人では、高い熱がでないことが報告されています。
インフルエンザは、ほとんどの方は自然に治癒しますが、重度の症状を引き起こすこともあり、時には死に至る場合もあります。
インフルエンザは、感染した人のつばや痰などの呼吸器の分泌物に、ウイルスが存在するため、くしゃみや咳などを介して、広がっていきます。
インフルエンザウイルスの排出期間は、平均約5日間です。
しかし、小児、高齢者、慢性疾患の患者では、最大10日間以上続くことがあります。(1)
治療としては、全身状態の管理(安静、解熱薬、栄養補給、脱水予防)がメインです。
他の国では、インフルエンザの合併症のリスクが高い人に、抗ウイルス薬を投与していますが、日本では一般的に使用されています。
インフルエンザは、一般的な風邪とは異なり、突然発症します。
インフルエンザの自覚症状は、次の通りです。
健常成人(平均年齢35歳)では、約9割の人には、咳・全身倦怠感・筋肉痛・食思不振・頭痛、約8割の人には咽頭痛が認められると報告されています。
ただし、インフルエンザに感染しても、全員が発熱するわけではなく、37.8度以上の発熱は、68%の人しか認めません。(2)
インフルエンザの予防接種を受けた方では、症状は軽減されることがあります。
→ インフルエンザと風邪(感冒)を見分ける方法 の記事
インフルエンザウイルスは、主に咳やくしゃみ、会話の際に生じる飛沫により広がると考えられています。
感染するためには、密接な接触(1m未満)が必要です。
まれですが、インフルエンザウイルスの混入した唾液などに触れたのち、自分の口や鼻等に触れると、インフルエンザにかかることがあります。(3)
インフルエンザウイルスに感染しても、全員に症状がでるわけではなく、症状が出現するのは、約50%と言われています。
また、症状のない人もインフルエンザウイルスを排泄します。(4)
感染後に、発熱や咳などの自覚症状が出現するまでには、約2日間(1日~4日)かかります。(5)
インフルエンザウイルスの排泄は、健常成人では、症状の出現する1日前から始まり、発症後、5日~7日後まで続きます。(6)
インフルエンザの伝染力は、症状出現後、3日~4日がピークです。
ウイルスの排泄は、子供、高齢者、慢性疾患のある人、免疫能の低下している人の場合には、さらに長期間続く場合があります。(7)
インフルエンザのウイルスが最も排泄される症状出現後の3日から4日目は、他の人にうつす可能性が高いため、人混みへの外出を控え、会社や学校は休みましょう。
インフルエンザは、感染症法に基づき、日本国内のインフルエンザの発生動向が監視されています。
下記は、国立感染症研究所のインフルエンザの発生動向調査からの抜粋です。
インフルエンザウイルスは、冬に流行する疾患です。
2018年には、12月3日~12月9日(第48週)より、流行が始まりました。
(2017年は、第47週に流行開始しています。)
2019年の1月21日~1月27日(第4週)に流行のピークとなり、5月頃に収束しています。
インフルエンザは、温帯地域においては、湿度と気温が流行に関与していると言われています。(8)
インフルエンザは、症状が軽微で発熱せず、自然治癒する人もいるため、正確な発症人数は不明です。
そのため、医療機関を受診した人から患者数などを推定します。
日本では、2018年秋から2019年春までにインフルエンザのために医療機関を受診した推定患者数は、約1200万人とされています。
(2016/2017年シーズン:1585万人 2017/2018年シーズン:2209万人 両年とも推定方法が異なるため、参考値です。)
2018/2019年のシーズンは、日本国民の10人に1人がインフルエンザで医療機関を受診した計算になります。
受診者には男女差はなく、男性:女性でほぼ1:1となっています。
インフルエンザの受診者の年齢分布は、次の通りです。
20歳未満の若年者で約半数を占め、60歳以上は比較的少なくなっています。
高齢者の方が少ないのには、学校・仕事などの集団生活や人込みへの外出などの活動性の影響も考えられます。
インフルエンザウイルスには、A型、B型が存在します。
インフルエンザにかかった人の中でA型の人の割合は、次の通りです。
(残りがB型です。)
例年、A型が過半数を占めており、B型は少数派です。
インフルエンザのA型、B型の主な違いについては、インフルエンザA型と異なり、インフルエンザB型は人間にのみに認められる点です。
臨床症状は、A型の方が、B型よりも重症化すると言われていますが、実際の研究結果では違いは明らかではありません。(9)
インフルエンザB型はサブタイプ別に分類されておらず、世界的な大流行を引き起こしません。
2018/2019年シーズンでは、耐性ウイルスの頻度は下記の通りです。
オセルタミビル(タミフル)・ペラミビル(ラピアクタ)の耐性株は、AH1pdm亜型で 1%に検出されています。
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤(ゾフルーザ)の耐性株は、AH1pdm亜型で 1.7%、 AH3亜型で9.5%に検出されています。
2019/2020年シーズン(2019年11月現在)では、オセルタミビル(タミフル)・ベラパミル(ラピアクタ)の耐性株は、AH1pdm亜型で 0.9%に検出されています。
→ インフルエンザの耐性株情報(外部リンク)はこちら
だいたい、インフルエンザを発症した100人のうち、1人に抗ウイルス薬(ゾフルーザ除く)が効かない人がいるのかなという程度です。
健常者では、薬が効果なくても、ほとんど自然治癒します。
(*アマンタジンは、耐性化が進んでいますが、抗インフルエンザ薬としては、ほとんど使用されていません。)
インフルエンザによる入院は、2018年度は約2万人とされており、小児と高齢者が多数を占めます。
経験上、高齢者のインフルエンザによる入院には、全身状態不良のために入院となった症例以外にも、1人暮らしで世話をする人がいない、介護施設に入所できなくなるなどの社会的入院が、多数ある気がします。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザに感染したときに発症する意識障害を主な症状とする致死率が約30%の重篤な病気です。(10)
2018/2019年のシーズン(2019年4月まで)では、223例が報告され、10歳未満が69%を占め、60歳以上は、全体の9%でした。
インフルエンザの罹患者数が、1200万人以上とすると、6万人に1人未満の確率です。
インフルエンザ脳症になる可能性は、交通事故にあって死ぬよりも、低い確率です。
インフルエンザの死亡者数の推計は、インフルエンザの流行により増えたであろう死亡者数を推定する超過死亡という概念を用いています。
→ 国立感染症研究所のホームページへ
死亡診断書のインフルエンザによる死亡者数を用いない理由には次のようなことが挙げられます。
持病のない若年者がインフルエンザにより死亡した場合には死因がはっきりします。
しかし、超高齢者などの場合には、インフルエンザにより経口摂取ができなくなり、誤嚥などによる肺炎で死亡するなどの他の原因により死亡することがあり、死因が不透明になります。
そのため、インフルエンザによる健康被害の影響を過小評価する可能性があるからとされています。
インフルエンザの最も重要で一般的な合併症は肺炎です。
肺炎は、インフルエンザウイルスによって生じる場合と、細菌が感染する場合があります。
その他としては、頻度がまれですが、次のような疾患を認める事が報告されています。(11)
インフルエンザの重篤な合併症をきたすリスクが高い人は、次の通りです。(12)(13)
まとめると、
高齢者、免疫力の低下している人はどんな感染症も悪くなりやすいです。
もともと、肺に持病がある人は、感染症になると、重症化するリスクが高くなります。
妊娠中については、インフルエンザによる入院や死亡のリスクが上昇することが報告されています。(14)
また、インフルエンザ罹患により、胎児への有害事象が増加したという報告がされています。
出産後4週間までは、インフルエンザによる死亡リスクが高くなりますので、予防接種をしておいた方が良さそうです。
インフルエンザが重篤化しやすい人は、インフルエンザの予防接種を行った方が良さそうですね。
インフルエンザは、一般のかぜ症候群と臨床症状から鑑別するのは困難です。
一般的に、インフルエンザの迅速抗原検査が行われ、インフルエンザのA型、B型まで判定可能です。
インフルエンザAの詳しいタイプ(例:H1N1など)を同定する際には、PCR増幅法などが用いられることがあります。
→ インフルエンザと風邪(感冒)を見分ける方法 の記事
インフルエンザは、予防により発症率を低下させることができます。
インフルエンザの予防には、インフルエンザの予防接種が有効です。
インフルエンザは常に変化している(抗原ドリフト)ため、毎年、インフルエンザワクチンの組成は、必要に応じて毎年変える必要があります。
ときどき、インフルエンザウイルスが大きく変化する(例:動物から人に感染できるようになる)ことがあり、その場合は、新しいウイルスに対する免疫をもつ人がいないため、大流行を起こす場合があります。
毎日の予防としては次が推奨されます。(15)
学校保健安全法により、インフルエンザの出席停止期間は、下記の通りに定められています。(16)
「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」
インフルエンザの感染性は、発症前1~2日前から、症状出現後、3日から4日目が最大となり、5日~7日(幼児では最大10日間以上)続きます。
インフルエンザの予防投薬としては、次の薬が使用可能です。
抗ウイルス薬の予防投与が推奨される投与者は、次の方です。(17)
1)過去のインフルエンザワクチン接種に関わらず、インフルエンザアウトブレイク中の介護入所中の高齢者
2)過去48時間以内にインフルエンザ感染者にさらされたインフルエンザ合併症のリスクが高い非ワクチン接種者
3)過去48時間以内にインフルエンザに感染者と濃厚接触したインフルエンザ合併症のリスクが高いワクチン接種者で、特定の年にワクチンと循環ウイルスの適合性が合わない場合 など
治療には、全身状態の管理(安静、解熱薬、栄養補給、脱水予防)が必要です。
インフルエンザの治療としては、抗ウイルス薬が使用可能です。
抗ウイルス薬は、症状発現から48時間以内に投与する必要があります。
外国では、インフルエンザ合併症のリスクの高いや基礎疾患のある方に抗ウイルス薬が投与されていますが、日本では一般的に使用されます。
解熱薬としては、確定はできないもののNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)によりインフルエンザ脳症等が悪化する可能性があり、アセトアミノフェンの使用が推奨されています。 (18)
現在の日本では、インフルエンザにNSAIDを処方する人がいないため、因果関係は立証できないんでしょうね。
以上が、インフルエンザのまとめになります。
ご興味があれば、他の記事も読んでいただけると幸いです。
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