原発性アルドステロン症の解説
原発性アルドステロン症の解説
公開日: 2019年5月1日
最終更新日: 2022年12月31日
原発性アルドステロン症は、アルドステロンという血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌されることにより、高血圧をきたす病気です。
今回は、原発性アルドステロン症について解説します。
高血圧患者の9割以上は、明らかな原因を認めない本態性高血圧です。
しかし、一部の高血圧の原因として、血圧を上昇させるホルモンの異常(内分泌異常と呼ばれます)が認められる場合があります。
原発性アルドステロン症は、アルドステロンという血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌されることにより、高血圧をきたす病気です。
原発性アルドステロン症は、かつては高血圧患者に占める割合は、約1%程度と考えられていました。
しかし、近年では、高血圧の原因精査をおこなう事が推奨された結果、原発性アルドステロン症は発見されることが多くなり、高血圧患者の約5%を占めると考えられています。
アルドステロンは、副腎から分泌されているホルモンです。
アルドステロンは、腎臓でナトリウムと水分の再吸収を促すことで、体を循環する血液の量(=循環血漿量)を増やし、血圧を維持する働きを持ちます。
健常者では、副腎からのアルドステロンの分泌は、体液量に応じて分泌されるレニンというホルモンによってコントロールされています。
原発性アルドステロン症では、このアルドステロンが、自律的に(=勝手に)過剰に分泌されてしまい、血圧が高くなります。
高血圧患者の20人に1人は原発性アルドステロン症の可能性があることを説明しました。
では、高血圧患者さんの中で、原発性アルドステロン症の可能性が高い人は、どのような特徴をもつ人でしょうか?
原発性アルドステロン症を合併している可能性の高い高血圧の人には、次の特徴があると報告されています。
まとめると、40歳未満の若年に高血圧を発症し、血圧が150/90mmHg以上と高く、降圧薬が効きづらい人は、原発性アルドステロン症の可能性があるため、積極的に検査をした方が良いということですね。
原発性アルドステロン症の代表的な症状には、次のものがあります。
アルドステロンには、血圧を上昇させる働きがあり、アルドステロンが過剰に分泌されると、血圧は高くなり、高血圧をきたします。
血圧には、収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)がありますが、原発性アルドステロン症の場合には、収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)の両方が高くなります。
血圧がどの程度上昇するかは、アルドステロンの分泌量などさまざまものの影響を受けるため、症例によって異なります。
また、アルドステロンには、腎臓でナトリウム(塩)を吸収し、カリウムを外に出す働きがあるため、アルドステロンが過剰に分泌されると、カリウムが欠乏してきます。
そのため、原発性アルドステロン症では、低カリウム血症と呼ばれる電解質異常を生じる場合があります。
電解質異常が深刻な場合には、倦怠感や不整脈が生じたり、筋力低下や四肢の麻痺をきたすこともあります。
原発性アルドステロン症の診断は、初めに、自宅で血圧測定をしていただき、一日を通して、血圧が高いかどうかを調べます。
→ 家庭での正しい血圧測定の方法の解説
家庭での血圧測定が必要な理由は、外来に受診した時だけ血圧が高くなる白衣高血圧の人がいるからです。
一日を通して血圧が高いことが確認できたら、次に、血液検査を行います。
血液検査で評価する項目としては、レニン、アルドステロン、カリウムが挙げられます。
レニンやアルドステロンなどの血圧に関係するホルモンは、ストレスや興奮、体位、脱水などのさまざまな影響を受けるため、早朝の空腹時に30分以上の安静臥床後に採血するのが望ましいです。
安静時のレニン値とアルドステロン値を測定したら、レニンとアルドステロンの比率をみます。
アルドステロンが勝手に分泌されている場合には、レニンが分泌されていないのにも関わらず、アルドステロン値が高くなります。
アルドステロン/レニン比が200以上の場合には、アルドステロンが勝手に過剰に分泌されていることを疑い、精密検査を行います。
精密検査には、薬物負荷試験、腹部CT、副腎静脈サンプリングなどを行います。
薬物負荷試験は、アルドステロンやレニンの分泌に影響を及ぼす薬物を投与し、アルドステロンとレニンの分泌が変化するかどうかを調べます。
負荷の方法には、カプトプリル負荷、生理食塩水負荷、フロセミド立位負荷など様々な方法があります。
それぞれの検査には一長一短がありますが、当院では、負荷の少ないカプトプリル負荷試験を行っています。
腹部CTは、副腎と呼ばれる臓器にできものがないかを調べるために行います。
最後に、副腎静脈サンプリングは、血管にカテーテルを入れ、副腎の近くに流れている血液を採取し、左右にある副腎のどちらかからアルドステロンが過剰に分泌されていないかどうかを確認します。
原発性アルドステロン症の治療には、大きく分けて、アルドステロンの作用を抑えるアルドステロン拮抗薬を用いる薬物療法と、アルドステロンを過剰に分泌している腫瘍を切除する手術療法があります。
どちらの治療法が用いられるかは、原発性アルドステロン症の原因、本人の年齢、手術希望の有無により変わります。
原発性アルドステロン症の原因には、両側の副腎が大きくなり、アルドステロンが過剰に分泌される「両側副腎過形成」と、片側の副腎にできものができ、そのできものからアルドステロンが分泌される「副腎腺腫」の2種類があります。
原発性アルドステロン症に対する手術療法は、アルドステロンを過剰に分泌している側の副腎を切除します。
両側の副腎を切除すると、副腎から分泌されている様々なホルモンが欠乏するため、片側の副腎にのみできものがある人が適応になります。
薬物療法は、手術療法をしない人、つまり、両側副腎過形成の人、副腎腺腫の人のうち手術を希望しない人、手術ができない人に行われます。
具体的にはアルドステロンの作用を抑えるアルドステロン拮抗薬(例、スピロノラクトン(商品名アルダクトン)エプレレノン(商品名セララ)、エセキセレノン(商品名ミネブロ))を使います。
原発性アルドステロン症は、若年者でも発症することの多い病気です。
そのため、
以上に当てはまる方は、一度、ホルモン異常のチェックを行った方が良いでしょう。
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文責・名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生