1,5-AG(1,5-アンヒドログルシトール) - 短期的な血糖変動を反映する血糖管理の指標
1,5-AG(1,5-アンヒドログルシトール) - 短期的な血糖変動を反映する血糖管理の指標
公開日: 2019年9月30日
最終更新日: 2022年12月30日
1,5-AGは、糖尿病で使用される血糖コントロールの指標であり、HbA1cのような平均血糖値よりも、食後高血糖や血糖変動を評価する目的で使用します。
今回は、1,5-AG(1,5-アンヒドログルシトール)について説明します。
目次
1,5-AGは、グルコースによく似た構造をもつ単糖です。(1)
1,5-AGは、ごく少量が体内で合成されていますが、主に食物から摂取されます。
1,5-AGの働きは、ほとんど解明されておらず、体内ではほとんど代謝されずに、すべての臓器や組織にプールされています。
1,5-AGは、尿中への排泄によってコントロールされており、1,5-AGの99.9%は、SGLT4により腎臓で再吸収されます。
(SGLT4(sodium-glucose cotransporter 4)は、ナトリウムとグルコースを輸送する蛋白ですが、マンノースやフルクトース,1,5-AG,ガラクトースなどの輸送にも関与しています。)
1,5-AGの再吸収は、グルコースにより阻害されるため、血液中のグルコースレベルが腎臓の糖吸収閾値(約180mg/dl)を超えると、1.5-AGが尿中に排泄されます。
→ 尿糖(糖尿) の記事
→ 腎性糖尿 の記事
→ 妊娠中の尿糖 の記事
すると、血液中の1.5-AGの濃度が低下します。
尿糖の排泄閾値以上に血糖値が上昇した場合には、血液中の1.5-AGが低下するため、高血糖の有無を把握できるというわけです。
しかし、常時尿糖が排泄されるようなHbA1cが高い人の場合だと、尿糖とともに1,5-AGが排泄されてしまい常に低値となってしまいます。
そのため、初期の糖尿病など食後高血糖のみが存在する方や、HbA1cが比較的良好な方の食後高血糖などの血糖変動の有無の把握に有用なマーカーとなります。
(HbA1cが良好でも、血糖値のバラツキがある場合があります。詳細は下記を参照下さい。)
→ HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)って何?
以上から、1.5-AGは、主として血糖値の変動(特に耐糖能障害や早期の糖尿病の食後高血糖)を反映するマーカーとして利用するのが良いと考えます。
1,5-AGの基準値は、14μg/ml以上です。
1,5-AGの濃度は、正常の血糖値では、1日0.3μg/mlづつ上昇し、約5週間で正常範囲に戻ります。
1,5-AGの半減期が、1~2週間のため、短期的な血糖変動をみるのに適しています。
1,5-AGと平均食後血糖値の関係は以下の通りです。(2)
上記の結果は、持続血糖測定装置(CGMS)を用いて測定されたものではないので、今後の研究が望まれます。
1,5-AGを上昇される因子
1,5-AGを低下させる因子
以上が知られています。
1,5-AGは、早期糖尿病、または、糖尿病の発症前の食後高血糖の検知が可能なため、HbA1cの正常域でも食後高血糖がリスクになりうる心血管疾患などで臨床研究がされています。(3)
以上が、1,5-AGの記事になります。
皆さんの参考になれば幸いです。
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生