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尿糖(糖尿)の解説 ー 尿糖 プラス 1+ 2+ 3+ 4+ の意味とは|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

尿糖(糖尿)の解説 ー 尿糖 プラス 1+ 2+ 3+ 4+ の意味とは

尿糖(糖尿)の解説 ー 尿糖 プラス 1+ 2+ 3+ 4+ の意味とは|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

尿糖(糖尿)の解説 ー 尿糖 プラス 1+ 2+ 3+ 4+ の意味とは

公開日: 2019年9月27日

最終更新日: 2022年12月31日

 
健康診断や人間ドックの尿検査で「尿糖は陽性です。」と告げられると、衝撃を受けます。
 
尿糖陽性とは、尿中に糖分(=ブドウ糖・グルコース)が漏れている状態 です。
 
糖尿病は、「糖尿 + 病気、つまり、尿に糖がおりる病気。」と表記します。
 
そのため、尿糖の検査は、糖尿病のスクリーニング目的だろうと思う方もみえると思います。
 
では、尿に糖がおりるとは、一体、どういう状態なんでしょうか?
 
今回は、尿糖陽性を指摘された方に向けて、医療知識がない方にもわかりやすく、ポイントをまとめて説明していきたいと思います。
 
 
 
尿検査で尿糖陽性
 
 
 

 
 
 

尿糖陽性ってどういう状態?

 
 

尿は腎臓で作られる。

 
皆さんは、尿がどのようにして、作られているか、御存じでしょうか?
 
尿は、血液を腎臓で濾過することで作られています。
 
イメージとしては、水道の蛇口につける濾過機を想像して下さい。
 
濾過機は、汚水をフィルターに通すことで、不純物を除き、キレイな水にする事ができます。
 
腎臓は、体内の血液中の不要物を尿として体外にだす働きがあり、その働きは、濾過機に似ています。
 
濾過機は、ただ液体をろ過してして、不要物を除去しているだけですが、
 
腎臓は、蛇口につける濾過機よりも、ずっと高性能であり、多くの機能をもちます。
 
腎臓が尿を作る際には、下記の順番で作っています。
 
① 血液を毛細血管のかたまりである糸球体で濾過して、原尿(=ろ過した血液)を作ります。
 
② 原尿(=ろ過した血液)を、尿細管と呼ばれるところなどで、体にとって大切な物質(例:水分・電解質・栄養素など)を再吸収します。
 
③ 残った老廃物・水分を尿として体外にだします。
 
原尿を、そのまま体外にださずに、再吸収している理由は、
 
健常者では、原尿は、1日あたり約150リットルに及ぶため、水分を再吸収せずに、そのまま排泄すると死んでしまうからです。
 
また、原尿の中には、ブドウ糖や電解質などの生命維持に必要な物質が多量に含まれており、それらも再吸収しています。
 
→ 腎機能の詳細な情報は、日本腎臓学会のホームページ参照 
 
参考文献:(1) (2) (3) 
 
 

尿糖陽性となるメカニズム

 
尿は、腎臓で血液を濾して作っていることを説明しました。
 
血液が濾されて、原尿ができた時には、ブドウ糖はたくさん含まれていますが、体外にでるまでに、再吸収されて、尿は無糖に近い状態になります。
 
(健常者でも、尿には2-20mg/dlの少量のブドウ糖は含まれており、完全な無糖ではありません。)
 
では、どうして、尿中にブドウ糖が漏れてくるのでしょうか?
 
その理由は、原尿から大切な物質は再吸収しているものの、この再吸収する能力には限界があるからです。
 
例えば、ブドウ糖であれば、血液中のブドウ糖の濃度(=血糖値)が、160〜180mg/dl を超えて高くなると、尿細管で再吸収しきれなくなり、尿にブドウ糖がもれてきます。
 
つまり、尿糖陽性は、血糖値が160~180mg/dlを超えた時点があるという事を意味しています。
 
(* 血糖値が正常範囲でも、生来体質的に、尿糖を再吸収する閾値が低く、尿中にブドウ糖が漏れる腎性糖尿の方もいます。)
 
参考文献:(4)
 
 

試験紙法の尿糖陽性とは?

 
尿糖の有無を調べる場合には、尿中のブドウ糖の量を測定することも可能ですが、一般的には、簡便な試験紙法を用います。
 
試験紙法の原理は、グルコースオキシダーゼ法が一般的です。
 
尿糖検査の結果は、(-)(+-)(+=1+)(2+)(3+)(4+)などと表記されます。
 
+の数が多いほど、尿中のブドウ糖が多いことを示します。
 
どのくらいのブドウ糖が尿中に漏れているのかは、尿試験紙のメーカーによって、+の基準が異なるため、一概には言えません。
 
多くの試験紙では、(+-)以上は異常である、つまり、健常者でみられるよりも多くのブドウ糖が尿中に漏れていることを示します。
 
尿試験紙の例として、
アークレイ社 オーションスティックスのブドウ糖の表記を確認すると、
 
尿糖:
(+-) 50mg/dl、 (+)100mg/dl、
(2+)200mg/dl、(3+)500mg/dl、
(4+)1000mg/dl となっています。
 
健常者の尿中のブドウ糖の量は、20mg/dlまでですので、(+-)は、異常と判断されます。
 
→ オーションスティックスの説明書はこちら
 
その他のメーカーとして、テルモが販売しているウリエースKcがあります。
 
ウリエースKcでは、
尿糖:
(+-)50mg/dl、 (+)100mg/dl、
(++)500mg/dl、
(+++)2000mg/dl
となります。
 
(+-)以上だと、尿糖は基準値よりも多くなります。
 
→ ウリエースKcの説明書はこちら
 
血糖値が高くなるほど、尿中へのブドウ糖の排泄量は多くなります。
 
そのため、尿中にブドウ糖が多く漏れている(=+が多い)ほど、血糖値が高いと考えても差し支えないでしょう。
 
最後に、尿糖の検査は、
 
① 尿は濃くなったり、薄くなったりする。
 
② ビタミンC(アスコルビン酸)を多量摂取すると、陰性化することがある。
 
ため、あくまでスクリーニングであり、正確な値を知ることはできません。
 
実際の血糖値や一日の尿糖の量を知るためには、別の検査が必要です。
 
 
 
 

健康診断で尿糖の検査をおこなう理由

 
次に、健康診断で尿糖の検査をおこなう理由を説明します。
 
尿糖は、血糖値が、160~180mg/dlを超えた場合に陽性になります。
 
言い換えると、尿を取る前のどこかで、血糖値が160~180mg/dlより高くなると、尿糖が陽性になります。
 
(*妊娠中は血糖値が正常でも尿糖陽性になります。)
 
→ 妊娠中の尿糖の記事
 
では、血糖値が、160mg~180mg/dlを超える状態とはどういう状態でしょうか?
 
健常者の血糖値は、一日を通して、100mg/dl前後に維持されています。
 
しかし、糖尿病になり、血糖値が高くなると、160mg/dlを上回ることがおこります。
 
初期の糖尿病で血糖が上がりやすいのは、糖分をたくさん摂取した食後です。
 
一日の血糖のうちで、食後血糖値が160mg/dl〜180mg/dlを超えると、尿糖陽性になります。
 
この状態、つまり、食後高血糖は、初期の糖尿病の可能性があります。
 
尿糖検査は、健康診断での糖尿病の早期発見のために行っているというわけです。

 
 
 
 

尿糖陽性を放置するとどうなるの?

 
尿糖陽性の方には、3つの可能性が考えられます。
 
① 正常
② 腎性糖尿
③ 糖尿病、あるいは、糖尿病予備群
 
腎性糖尿の方は、体質的に尿糖は漏れていますが、治療の必要はありません。
 
問題は、③の糖尿病、あるいは、糖尿病予備群であった場合です。
 
この場合の尿糖陽性は、高血糖の存在を疑います。
 
尿は濃くなったり、薄くなったりするため、尿糖の量から、正確な血糖値を推定することはできません。
 
しかし、経験的には、尿糖(++)以上の方は、糖尿病を発症している場合が多く、一度、外来に受診されるのをお勧めします。
 
加えて、尿糖が多いと、ブドウ糖が水をひきつけますので、尿量が多くなります。
 
そのため、昼間の口渇感、水分の多量摂取、頻尿、夜間にトイレに何度も起きるなどの自覚症状がおきます。
 
特に、昼間に口渇感があり、水分を多量に飲み、深夜にトイレに行くようになった方、
 
最近、ダイエットをしてないないのに痩せてきた方などの自覚症状のある方では、
 
経験上、糖尿病は非常に悪くなっています。
 
(通常は、HbA1c(ヘモグロビンa1c)8~9%以上の方がほとんどです。)
 
糖尿病内科で糖尿病を指摘され放心している人
 
さらに、長年にわたり、尿糖(3+)~(4+)などの強陽性を放置されている人は要注意です。
 
初診時に、すでに
 
糖尿病性網膜症で失明寸前、
神経障害のために足の感覚がない、
腎臓が悪くなり、腎症で透析直前 など
 
の重篤な合併症を発症していたり、動脈硬化等の他の疾患が進行していることがあります。
 
さらに、著明な高血糖の治療のために、インスリン治療(インスリン注射)の導入や病院への入院が必要になる場合があります。

 
(尿糖陽性の方は、全員一度、医療機関での血液検査を含めた精査をお勧めします。)
 
→ 糖尿病ってどんな病気? の記事リンク
 
→ 糖尿病の三大合併症 ~網膜症・腎症・神経症~ の記事リンク
 
 

尿糖陽性の方の精査・治療について

 
 
尿糖陽性の方の精査は、初めに、問診、身体診察、血液検査(血糖値など)の評価を行います。
 
検査結果をみて、明らかに糖尿病のある方の場合には、治療にうつります。
 
糖尿病が疑わしい場合には、経口ブドウ糖負荷試験を行い、糖尿病の確定診断を行います。
 
→ 経口ブドウ糖負荷試験の詳細はこちら
 
 

尿糖についてのQ&A

 
ここからは、尿糖についてのQ&Aです。
 
 

妊娠中の尿糖

 
「質問」
妊娠中に尿糖を指摘されました。
これって異常ですか?
 
「回答」
妊娠時には、約50%の人で尿糖が陽性になる事が報告されており、健常妊婦にも認められます。
 
そのため、妊娠中の糖尿病や妊娠糖尿病のスクリーニングには、血糖測定やブドウ糖負荷試験などの血液検査が用いられます。
 
詳しい説明はこちら → 妊娠中の尿糖の意味 - 妊娠中に尿糖 プラスを指摘された方へ
 
 

飲酒(お酒・アルコール)と尿糖

 
「質問」
アルコールを飲むと尿糖は陽性になりますか?
 
「回答」
健常者がアルコールを飲むと、
腎臓でのブドウ糖の再吸収が変化するか、尿糖はでやすくなるか、を検討した研究は見つけられませんでした。
 
ただし、アルコールを常習している方だと、お酒のつまみなどのカロリーの取りすぎで、肥満がある。
 
アルコールの慢性的な飲みすぎのために、膵臓がダメージを受けて、膵臓が傷んでしまい、慢性膵炎がある。
 
などの糖尿病を発症するリスクがある方がみえます。
 
心配なら、一度、外来を受診しましょう。
 
 

尿の泡立ちと尿糖

 
「質問」
尿が泡立っています、これって尿糖がでているってことですか?
 
「回答」
尿の泡立ちと尿糖との関連について報告された文献はありません。
 
また、尿が泡立つからと言って、尿を一度調べてみないと、病気であるかどうかは何とも言えません。
 
一般的に、尿は濃くなったり、薄くなったりします。
 
尿がいつも泡立つときには、尿糖・尿蛋白などの異常が生じている可能性は否定できません。
 
心配なら、一度、外来を受診しましょう。
 
 

食事と尿糖

 
「質問」
朝食前と朝食後で尿糖の結果って変わりますか?
 
「回答」
理論上は、尿糖の排泄量は、血糖値の影響を受けるため、一日の中で血糖値が最も高くなりやすい朝食後に尿糖を測定した方が陽性になる可能性は高くなります。
 
さらに、膀胱内にたまっている尿がいつ作られたものかにも影響を受けます。
 
血糖値の正常値はいくつ? ー 1日の血糖値の推移を含めた解説
 
 

腎臓で尿糖を再吸収できる量って変化するの?

 
腎臓で尿糖を再吸収できる閾値は、160mg/dl~180mg/dlと説明しました。
 
この腎臓で再吸収できる尿糖の閾値は、病気や状態によって上下します。
 
例えば、糖尿病患者さんでは、54mg/dl~300mg/dlに変化するという報告があります。
 
加えて、年齢、心不全、腎疾患(例、糖尿病性糸球体硬化症)、慢性高血糖は、グルコースの腎閾値を上昇させます。
 
一方で、妊娠、甲状腺機能亢進症、発熱、運動は減少させます。
 
尿糖検査は、安価であり、高血糖のスクリーニング検査に使用していますが、
 
尿糖では正確な血糖値は分からないため、血糖値の測定が必要です。
 
 

尿糖が強陽性でも、HbA1cは6%未満でした。これはどういうこと?

 
尿糖の検査は、あくまで糖尿病のスクリーニング検査です。
 
尿は濃くなったり、薄くなることもありますし、血糖値は食事内容による影響を受けます。
 
さまざまな原因で尿糖の量は変化するため、糖尿病かどうかは、血糖値を測定してみないと分かりません。
 
スクリーニング検査の目的は、多くの人々の中から糖尿病の可能性が高い人を絞ることです。
 
そのため、尿糖が3+・4+など強陽性のために精査し、糖尿病でなかった場合には、病気でなくてよかったと考えましょう。
 
→ HbA1c 5.6%では、糖尿病の可能性はどのくらい? の記事
 
 
 
 

まとめ

 
血糖値が一定以上にあがり、腎臓でブドウ糖を再吸収しきれなくなると、
 
尿中にブドウ糖が漏れてきて、尿糖は陽性(プラス)になります。
 
血糖値が一番高くなる時間は食後であり、
 
健常者で尿糖が陽性になる血糖値の閾値は、160mg/dl~180mg/dlです。
 
つまり、尿糖が陽性の方は、つまり、一日のどこかに高血糖が疑われる方は、糖尿病の可能性があります。
 
また、血糖が高くなるにつれて、尿糖の量は多くなります。
 
尿糖は、年齢、病気などの状態を受けますが、
 
尿糖が強陽性の方は、非常に悪い糖尿病がある可能性があるため、放置せずに外来に受診しましょう。
 
2型糖尿病患者さんのみならず、膵臓からのインスリン分泌の低下している糖尿病患者さん(=インスリン依存型糖尿病・1型糖尿病)でも、
 
糖尿病食の食事療法、運動療法、経口血糖降下薬、インスリン療法等を使用し、
 
血糖コントロールが正常化できれば、尿糖は消失する場合があります。
 
(尿糖による合併症よりも、低血糖を避けるべきですが。)
 
ご心配なことがあれば、当院にご相談頂けたら幸いです。
 
文責・名古屋市名東区の糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔
 
 
参考文献:NCBI Bookshelf Chapter 139 Glucoseuria
 
 
 
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