平均HbA1cが良いからと言って、医師の技量が良いとは限らない?
平均HbA1cが良いからと言って、医師の技量が良いとは限らない?
公開日: 2019年10月1日
最終更新日: 2021年9月22日
時々、「当院の患者さんの平均HbA1cは〇〇%です。」と、誇らしげにホームページに記載しているクリニックを時々見かけます。
しかし、外来通院中の患者さんの平均HbA1cがよい事と、その医療機関の医師の技量が優れていることの間には、何の関係もありません。
それはどうしてでしょうか?
今回は、その理由を説明します。
クリニックのホームページをみると、
よく「当院には、〇〇人が通院しており、平均HbA1cは、〇〇です。」
という広告をみかけます。
一見、このクリニックには、大勢の人が通院しており、通院中の患者さんのHbA1cも良く、治療も上手ではないかなと思われる方もみえると思います。
ですが、平均HbA1cが良いという事は、本当に、医師の技量が高いためなのでしょうか?
平均HbA1cが良い、つまり、HbA1cが正常値に近いことは、一見、医師の技量が高いことを示しているように見えます。
ですが、実際には、全く関係がありません。
その理由としては、次の二点が挙げられます。
前者については、HbA1cというのは、なんでもかんでもただ下げればよいというものではありません。
HbA1cを下げるだけなら、血糖降下薬を多量に使用するか、インスリンをどんどん増やし、低血糖のリスクを考慮しなければ達成できます。
血糖管理は、糖尿病の合併症の予防のために行うため、高齢者では、低血糖を避けるために、HbA1cを高めに設定する事があります。
→ HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) の解説記事
→ 低血糖症 の解説記事
次に、後者については、糖尿病の血糖管理の難易度は、糖尿病の病態、年齢、罹患年数によって大きく変化します。
もう少し、分かりやすく言うと、HbA1c 5.8%の糖尿病の初期の患者さんしかいなければ、平均HbA1cは正常値になります。
逆に、糖尿病の罹患年数が長く、合併症が進行しているなど、血糖コントロールが難しい患者が多ければ、平均HbA1cは高くなります。
以上が、平均HbA1cが良いことと、医師の技量が優れていることには関係がないと考える理由です。
最後に、では、なぜ、クリニックの院長は、通院人数や平均HbA1cを提示するのでしょうか?
色々と考えてみると、面白いかもしれませんね。
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生