尿ケトンって何? ー 陽性(プラス +)になる原因(絶食や糖尿病)を含めた解説
尿ケトンって何? ー 陽性(プラス +)になる原因(絶食や糖尿病)を含めた解説
公開日: 2019年10月12日
最終更新日: 2022年12月30日
今回は、尿ケトンについて説明します。
ケトン体は、ブドウ糖の代わりに絶食時に産生されるエネルギー源です。
尿ケトンは、絶食時間が長いと認めます。
尿ケトンがでると危険なのは、
絶食時間が長いために増えるケトン体ではない場合です。
代表的には、非常に悪い糖尿病やアルコールの過剰摂取により、ケトアシドーシスをきたしたときです。
ケトアシドーシスになると、悪心・嘔吐・腹痛・錯乱など様々な症状がでて、命に危険を及ぼします。
目次
尿ケトンは、尿中のケトン体のことです。
尿ケトンの有無は、試験紙法によって確認しています。
ヒトの体では、エネルギー源として糖分(ブドウ糖・グルコース)を燃やしています。
血液中にあるブドウ糖は、全血液中に約5g前後と非常に少ないため、
普段は、ブドウ糖をグリコーゲンの形に変えて肝臓に貯蓄し、必要に応じて分解して使用しています。
絶食時間が長くなり、肝臓のグリコーゲンが少なくなると、エネルギー源は、グルコースから、脂肪へと切り替わります。
脂肪を肝臓で分解して作られるエネルギー源がケトン体です。
(軽度の血中ケトン体の上昇(ケトーシス)は、絶食後 12時間~14時間から認められます。)
つまり、ブドウ糖が利用できないときに、ブドウ糖の代わりに、脂肪から作るエネルギー源がケトン体です。
ケトンは水に溶けるため、血液中のケトンが増えると、尿中のケトン体も増えます。
尿ケトンが陽性になるときは、
① 絶食などで糖分が足りない時
② インスリンの作用不足があり、グルコースが細胞内で利用できない時
が代表的です。
尿ケトンが陽性となる状況としては、
1 絶食
2 非常な低炭水化物ダイエット
3 摂食障害
4 慢性的な嘔吐・下痢
5 激しい運動
6 妊娠
7 アルコール過剰摂取
8 糖尿病
があります。
→ インスリンと糖尿病(高血糖)の関係の記事
臨床的に、ケトン体が問題となるのは、ケトン体が過剰に蓄積しすぎた時です。
ケトン体は、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンからなります。
ケトン体には、酸が含まれるため、血液中に多くなりすぎると、血液が酸性になります。
(ケトアシドーシスと呼ばれます。)
血液のPhは、生体の化学反応をコントロースするため、一定の範囲内に厳密にコントロールされています。
そのため、ケトアシドーシスになると、生体の化学反応が上手く生じず、様々な問題が生じます。
ケトアシドーシスの自覚症状としては、
悪心・嘔吐
腹痛
混乱
呼吸困難
傾眠傾向
など多彩な症状を認め、生命を脅かすこともある危険な状態です。
こんなに恐ろしいケトアシドーシスですが、
生体はうまくできているもので、
絶食期間が長いだけでは、
ケトン体の血中濃度は一定範囲に保たれるため、ケトアシドーシスにはほとんどなりません。
(ただし、非常に長期間の絶食、新生児、妊婦、授乳中、極度の糖質制限食ではおこりえます。)
しかし、ケトン体の過剰蓄積がおこる場合があり、
代表的には次の2つの場合です。
① 非常に悪い糖尿病があり、尿ケトン体陽性(=糖尿病性ケトアシドーシス)
② アルコールの飲みすぎで、尿ケトン陽性(=アルコール性ケトアシドーシス)
以上です。
糖尿病の方で尿中ケトン陽性の場合には、インスリンの作用不足(=細胞内の糖利用障害)が考えられます。
インスリンの作用不足にも程度があり、
1型糖尿病のように完全にインスリンが枯渇してしまうと、
糖利用の障害と共に、エネルギー源である脂肪が動員され、大量のケトン体が産生され、ケトアシドーシスをきたします。
アルコールの過剰摂取による発症機序は複雑なので割愛します。
各種のケトアシドーシスの診断は、尿ケトンのみで行うことはなく、問診、身体診察、他の血液検査(血糖値・血液ガス検査)などをふまえて、総合判断します。
以上が尿ケトンの説明です。
尿ケトン単独では、臨床的に問題かどうかは、判定せず、その他の所見をふまえて総合判断していますが、
健康診断で、尿ケトンがプラスマイナスと多少陽性なだけなら、絶食時間が長かった影響かもしれませんね。
(尿ケトンに加えて、尿糖も陽性の方は、医療機関へ受診して下さい。)
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔
参考文献:
Fasting ketosis and alcoholic ketoacidosis Up to Date
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