空腹時血糖値が高いのに、HbA1cは正常になるのはなぜ?
空腹時血糖値が高いのに、HbA1cは正常になるのはなぜ?
公開日: 2019年11月22日
最終更新日: 2022年12月29日
健康診断で、空腹時血糖値は高いのに、HbA1cが正常範囲だったという経験がある方もみえるかと思います。
なぜ、そんな事がおこるのでしょうか?
また、この場合には何が考えられて、どうしたらよいのでしょうか?
今回は、そんな疑問にお答えします。
最初に、空腹時血糖値が高いと言っても、正常値より少し高いのか、かなり高いのかによって全く違います。
空腹時の血糖値は、健常者では、70mg/dl~99mg/dlの間に維持されています。
空腹時の血糖値が、100mg/dl~109mg/dlは、正常高値と呼ばれますが、これも正常範囲です。
空腹時の血糖値が、110mg/dl~125mg/dlまで上昇すると、空腹時血糖異常(IFG)と呼ばれます。
この段階で、空腹時の血糖値は正常よりも高いと判定されます。
空腹時の血糖値が、126mg/dl以上になると、糖尿病の診断基準を満たします。
→ 血糖値の正常値はいくつ? ー 1日の血糖推移・正常範囲・男性と女性の差を含めた解説
→ 糖尿病の診断基準 の解説
次に、同じ値の空腹時血糖値でも、人によって、どのくらいHbA1cの値がばらつくのかを見てみましょう。
下図は、糖尿病の診断基準を作成する際に使用した60歳未満の日本人 6658名のHbA1c(JDS値)と空腹時血糖値のデータです。
古いデータのため、HbA1cの表記が、現在と異なっています。
現在、使用されている値(NGSP値)に直すには、このグラフのHbA1c(JDS値)の値に0.4を足しましょう。
空腹時血糖値とHbA1cの値が一致しない理由には、さまざまな理由が考えられます。
1.HbA1cは、2-3カ月間の平均血糖値を反映する一方で、空腹時血糖値は、ワンポイントの血糖値しか見ていないから。
今日は、仕事のストレスや寝不足で、たまたま高いだけなどの場合もありえます。
2.空腹時血糖値が高いからと言って、食後血糖も高いとは限らない。
空腹時血糖値が高いと、食後血糖値も高い場合が多いのですが、常に高いとは限りません。
3.HbA1cは赤血球寿命の影響を受けるため。
そもそも、赤血球の寿命は、持病や人によって、異なります。
以上が、空腹時血糖値が高いのに、HbA1cが正常の人がいる理由です。
空腹時血糖値がすでに高く、糖尿病の診断基準を満たす人は、医療機関に受診し、治療を開始しましょう。
空腹時血糖がそこまで高くない人は、すでに糖尿病にかかっている可能性があったり、将来、糖尿病になるリスクも高くなります。
この方は、糖尿病の精密検査をするか、糖尿病の予防に努めるのが良いでしょう。
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参考文献・図の引用元:
Yutaka Seino et al. Report of the Committee on the Classification and Diagnostic Criteria of Diabetes Mellitus. J Diabetes Investig. 2010
清野 裕 他 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 (国際標準化対応版)糖尿病 2012年 55巻7号 p.485-504
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生