ゾルトファイ配合注とは - 適応・薬効・メリット・薬価・使い方などの特徴について
ゾルトファイ配合注とは - 適応・薬効・メリット・薬価・使い方などの特徴について
公開日: 2019年12月3日
最終更新日: 2022年12月29日
ゾルトファイ配合注フレックスタッチは、持効型インスリンのデグルデグと、ヒトGLP-1アナログのリラグルチドの混合製剤です。
本剤は、インスリン療法に適応のある2型糖尿病の方に適応があります。
ゾルトファイ 1キットには、300ドーズ:インスリン デグルデグ 300単位と、リラグルチド 10.8mgが含まれています。
ゾルトファイの投与単位は、混合製剤のため、単位ではなく、ドーズと呼びます。
1ドーズには、インスリン デグルデグ 1単位と、リラグルチド 0.036mg が含まれています。
ゾルトファイの最大のメリットは、トレシーバとビクトーザをそれぞれ単独で処方するよりも、薬剤費が、約4割 安くなる点です。
インスリン強化療法や、BOT療法の基礎インスリンを、ゾルトファイに変更すると、体重増加を抑制しつつ、血糖コントロールを改善できる可能性があります。
トレシーバとDPP4阻害薬の併用療法から、ゾルトファイへの変更も有効かと思います。
今後の臨床研究が期待される薬ですね。
目次
ゾルトファイ配合注は、2019年9月26日にノボノルディスクファーマより発売された注射製剤です。
持効型インスリンであるインスリン デグルデグと、ヒトGLP-1配合注射液であるリラグルチドが配合されています。
ゾルトファイは、インスリン デグルデグとリラグルチドの混合製剤です。
ゾルトファイは、1筒中にインスリン デグルデグ 300単位と、リラグルチド 10.8mgが入っています。
ゾルトファイは、混合製剤のため、投与単位は、単位ではなく、ドーズと呼びます。
ゾルトファイは、1キット中に300ドーズが入っています。
1ドーズの組成は、インスリン デグルデグ 1単位と、リラグルチド 0.036mgになります。
ゾルトファイの最高投与量は、1日50ドーズに制限されています。
これは、リラグルチドの国内で認可されている最高用量は 1.8mgであり、ゾルトファイ 50ドーズで、リラグルチド 1.8mgになるためです。
ゾルトファイは、インスリン療法が適応となる2型糖尿病に使用可能です。
1型糖尿病の基礎インスリン補充には使用できない事に注意が必要です。
ゾルトファイを使用する際に気になるのは、次の2点だと思います。
ゾルトファイの薬価は、2019年12月の時点では、次の通りです。
ゾルトファイ配合注フレックスタッチ(300ドーズ)5359円/キット
トレシーバとビクトーザの薬価は、次の通りです。
→ 薬価サーチ(外部リンク)参照
ゾルトファイ配合注をそれぞれ、トレシーバ・ビクトーザに換算すると、次のようになります。
トレシーバ 300単位とビクトーザ 10.8mgを合わせると、計 8726円です。
ビクトーザとトレシーバをそれぞれ単独で使用するより、約4割 安くなります。
ゾルトファイのメリットとデメリットは次の点だと考えます。
メリット
デメリット
日本人のインスリン分泌不全型の糖尿病には、高度肥満の方は少なく、基礎インスリンの補充量が、数十単位になる事はあまりありません。
基礎インスリンの補充量は、経験的には、数単位 ~ 20単位未満となります。
ゾルトファイの使用ドーズは、数単位 ~ 20単位未満と予想され、リラグルチドの投与量は、0.3mg ~ 0.6mg前後になります。
ゾルトファイを実際の臨床で使用する場合には、次の使用法が適当と考えます。
リラグルチドをインスリン療法と併用した場合には、下記のメリットがある事が報告されています。(1)
また、インスリン分泌が枯渇している1型糖尿病患者でも、リラグルチドを追加投与した場合には、低血糖を増やすことなく、HbA1c、血糖値、血圧、体重を有意に減少させたとの報告があります。(2)(3)
日本人のインスリン分泌不全タイプの2型糖尿病の方でも、トレシーバの代わりにゾルトファイを用いた際には、HbA1c、血糖改善、低血糖のリスク低減に期待が持てそうです。
リラグルチドの体重減少効果は、欧米人では報告されているものの、日本人では報告されていません。
→ GLP-1のダイエット(体重減少)効果とは リバウンドを含めた解説
しかし、DUAL Ⅰ Japan試験(ゾルトファイの国内第三相臨床試験)では、ゾルトファイ投与後52週後の体重の変化量は、次のように報告されています。
試験の最終的なインスリン投与量は分かりませんでした。
インスリンの使用量が多いほど、体重増加しやすくなります。
インスリンデグルデグ・リラグルチド群では、インスリン投与量が、インスリンデグルデグ群より少なく済んだ(27.7単位 対 34.8単位)ため、体重増加が抑えられたのではないかと推測します。
実際の臨床での体重増加の抑制効果は、検証が必要です。
BOT療法では、食後血糖の抑制を目的として、トレシーバにDPPⅣ阻害薬を併用する場合があります。
ビクトーザ0.3mgとDPPⅣ阻害薬の血糖降下作用は同程度です。
トレシーバ 9単位前後と、DPP4阻害薬を使用している場合には、同程度の血糖降下作用になる可能性があります。
GLP-1阻害薬とDPP4阻害薬に変更した場合の副次的効果は、少量のリラグルチドでも認められるかは不明です。
薬価については、トレシーバ10単位とDPPⅣ阻害薬(例:トラゼンタ5mg)を使用している例では、ゾルトファイに変更すると、薬剤費が20%ほど安くなります。
外来受診時の随時血糖値が非常に高く、糖尿病の教育入院が困難な糖尿病患者さんでは、血糖コントロールと糖毒性の解除のため、基礎インスリンの補充を開始する場合があります。
その場合には、トレシーバやライゾデグではなく、ゾルトファイが良い選択肢になりえます。
以上が、ゾルトファイの解説です。
皆さんの参考になれば幸いです。
ご興味があれば、他の記事もどうぞ。
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
参考文献:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ 医薬品インタビューフォーム 他
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生