高血圧の薬代の解説
高血圧の薬代の解説
公開日: 2021年8月1日
最終更新日: 2022年12月28日
高血圧は、日本人の3人に1人が罹患している非常に多い病気です。
高血圧の治療は、生活習慣の見直しと、降圧薬の内服により行われます。
高血圧の薬代は、後発品を使用すれば、3種類の降圧薬を併用しても、10割負担で、一か月あたり1300円~2000円程度に収まります。
後発品を使用すれば、高血圧の治療にかかる薬代は、自己負担割合が3割なら、一日当たり3円~20円であり、缶コーヒー1本よりも安い費用で済みます。
今回は、高血圧の薬の種類、先発医薬品と後発医薬品の違い、当院で良く処方している高血圧の薬の費用について解説します。
高血圧の薬には、様々な種類があります。
→ 降圧薬の種類と特徴の解説
高血圧の人の血圧を下げる事により、脳や心臓などの血管の病気のリスクが減少します。
→ 高血圧の合併症の解説
この降圧薬による治療効果は、降圧薬の種類よりも、血圧をどれだけ下げるかによって、決まります。
妊娠中などの特殊な状況を除き、高血圧の第一選択としては、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬が用いられます。
上記の薬を単剤で使用しても、降圧が不十分な場合は、2種類の降圧薬を併用します(例:Ca拮抗薬とARB、Ca拮抗薬とACE阻害薬)。
さらに血圧を下げたい場合には、上記の降圧薬を3種類併用したり、他のクラスの降圧薬を追加します。
また、糖尿病性腎症があったり、心不全や心筋梗塞などの心臓の病気がある場合には、病気の予後を良くする作用を持つ降圧薬があるため、それらの薬を優先して使用する場合があります。
調剤薬局で、処方箋を出すと、薬剤師の人から、先発医薬品(先発品)にするか、後発医薬品(後発品、ジェネリック医薬品)にするかを尋ねられることがあります。
この「先発医薬品」と「後発医薬品」の違いとは何なのでしょうか?
先発医薬品は、製薬会社が開発し、最初に発売された薬であり、新薬とも呼ばれています。
後発医薬品は、先発医薬品の再審査期間や20年~25年の特許期間が終了した後に発売される医薬品です。
後発医薬品は、同じ成分、同じ効き目の薬とされており、ジェネリック医薬品とも呼ばれています。
先発医薬品と後発医薬品の最も大きな違いは、価格です。
後発医薬品は、先発医薬品に必要な研究開発費が抑えられるため、薬の価格(薬価)が安く設定されています。
ジェネリック医薬品は、効き目や安全性が先発医薬品と同等で有ることを国が審査しているとされていますが、2021年には、複数の後発医薬品の製造メーカーが、国が認めていない方法で医薬品を製造していたことが判明し、業務停止処分を受けています。
後発医薬品の安全性が心配な方には、オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG:Authorized Generic)がお勧めです。
オーソライズド・ジェネリック医薬品には、新薬の製薬企業から許諾を得て製造した、原薬、添加物および製法等が先発医薬品と同一のジェネリック医薬品があります。
薬局で後発医薬品を勧められた際には、これらのオーソライズド・ジェネリック医薬品を希望するのはいかがでしょうか?
(*各オーソライズド・ジェネリック医薬品の安全性や品質については、調剤薬局にてお問い合わせ下さい。)
当院でよく使用する降圧薬、簡単な薬の説明、薬の価格(薬価)、1ヵ月の薬代について解説します。
薬の価格(薬価)は、毎年、改定されるため、記載時の費用は、2021年10月時点のものになります。
薬代は、院内処方、院外処方によって調剤料が異なりますので、調剤料を含めない、純粋な薬の費用です。
一か月の薬代は、30日分で計算しています。
アムロジピンは、Ca拮抗薬です。
降圧作用が強く、効果は長時間持続し、安全性が高く、価格が安価なため、よく使用されています。
アムロジピンは、2.5mg、5mg、10mgの3用量が販売されています。
先発品はファイザー社が開発したノルバスクであり、後発品はアムロジピンです。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は、アムロジピン錠「ファイザー」になります。
後発品のアムロジピンについては、ファイザー社以外の後発品メーカーの薬は、用量が増えるにつれて薬価が若干高くなります。
一か月の薬代は、先発品だと、609円~1656円、後発品だと、303円です。
(3割負担なら、この金額の3割です。)
テルミサルタンは、ARBです。
降圧作用が強く、副作用が少なく、長時間効果が持続します。
テルミサルタンには、脂肪細胞の分化に関わるPPARγの刺激作用が他のARBの5倍あり、糖代謝や脂質代謝に良い影響を及ぼす可能性が示唆されています。
先発品はミカルディスであり、後発品はテルミサルタンです。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は、テルミサルタン錠「DSEP」になります。
一か月の薬代は、先発品だと、1380円~3849円、後発品だと、429円~1227円です。
(3割負担なら、この金額の3割です。)
イルベサルタンは、ARBです。
降圧作用が強く、副作用が少なく、ミカルディスよりは短いものの、まずます長時間効果が持続します。
イルベタンの他のARBにはない効能としては、尿酸値を若干下げる作用があります。
先発品はアバプロ、または、イルベタンであり、後発品はイルベサルタンです。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は、イルベサルタン錠「DSPB」になります。
一か月の薬代は、先発品だと、1332円~3876円、後発品だと、483円~1470円です。
(3割負担なら、この金額の3割です。)
アジルサルタンは、ARBです。
アジルバは、アジルサルタンの先発品です。
アジルバは、2012年に武田薬品工業より発売された比較的新しいARBであり、2021年10月の時点では、後発品はありません。
アジルバの特徴は、他のARBより降圧作用が強いことです。
一か月の薬代は、2814円~6306円と他のARBと比較し、高めです。
(3割負担なら、この金額の3割です。)
ナトリックスは、サイアザイド系の利尿薬です。
ナトリックスは、安価であり、先発品しかありません。
利尿薬は、降圧作用がCa拮抗薬やARBと比較すると強くなく、電解質異常などの副作用が多いため、降圧剤を単剤、もしくは、二剤併用でも降圧効果が不十分なときに追加して使用します。
一か月の薬代は、先発品だと、303円~561円です。
(3割負担なら、この金額の3割です。)
カルベジロールは、αβ遮断薬です。
カルベジロールは、心保護作用があり、心筋梗塞後の心不全などの予後を改善するため、心疾患のある人に良く使用されます。
先発品は、アーチストであり、後発品は、カルベジロールです。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は、カルベジロール錠「DSEP」になります。(2021年8月17日発表)
アーチストには、4用量が販売されていますが、高血圧の治療としては、1日1回10mg ~ 20mgを使用します。
一か月の薬代は、先発品だと、1014円~1932円、後発品だと、420円~498円です。
(3割負担なら、この金額の3割です。)
アイミクスは、アムロジピンとイルベタンと合剤です。
アイミクスには、LDとHDがあり、LDはlow dose(低用量)、HDはhigh dose(高用量)を意味しています。
アイミクスLDには、アムロジピン5mg・イルベタン100mgが、アイミクスHDには、アムロジピン10mg・イルベタン100mgが含まれています。
Ca拮抗薬とARBの合剤には多くの種類がありますが、アムロジピン10mgの最高用量が含まれているのは、アイミクスだけです。
先発品は、アイミクスであり、後発品は、イルアミクスです。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は、イルアミクス錠「DSEP」になります。
一か月の薬代は、先発品だと、2853円~3258円、後発品だと、972円~1116円です。
ミカムロは、アムロジピンとテルミサルタンと合剤です。
ミカムロには、APとBPの2用量があります
ミカムロAPには、アムロジピン5mg・テルミサルタン40mgが、ミカムロBPには、アムロジピン5mg・テルミサルタン80mgが含まれています。
先発品は、ミカムロ配合錠であり、後発品は、テラムロ配合錠です。
オーソライズド・ジェネリック医薬品は、テラムロ配合錠「DSEP」になります。
一か月の薬代は、先発品だと、2697円~4014円、後発品だと、1026円~1545円です。
当院でよく使用する降圧薬を処方した場合の1か月の薬代の目安は、次の通りです。
降圧剤1種類で治療する場合は、先発品なら、600円~6000円、後発品であれば、300円~1500円です。
降圧剤2種類で合剤を使用して治療する場合は、先発品なら、2700円~4000円、後発品であれば、1000円~1500円になります。
降圧剤3種類で合剤と利尿薬を使用して治療する場合は、先発品なら、3000円~4600円、後発品であれば、1300円~2000円になります。
(*3割負担なら、上記の金額の3割です。)
高血圧の薬代は、自己負担割合が3割で後発品を使用すると、1日3円~20円程度です。
以上です。
高血圧を治療して、収縮期血圧を10mmHg、または、拡張期血圧を5mmHg下げると、高血圧による心臓や血管の合併症は、約20%減少し、すべての原因による死亡リスクは10‐15%減少します。
→ 血圧を下げるとどうなる? ー 高血圧を改善すると得られる予防効果とは
高血圧の人は、高血圧を放置せず、治療をしましょう。
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生