一日の血圧には変動があります。
血圧は、早朝から徐々に血圧が上昇し、昼頃にピークとなり、夕方になると徐々に下がり、深夜の就寝時には最も低くなります。
朝は活動を始める時間帯のため、体全身に血液を供給するために血圧は高くなりますが、早朝の血圧が非常に高くなる人がいます。
本記事では、朝の血圧上昇をきたす原因や早朝高血圧の健康への影響について解説します。
血圧を測定する時間帯により、血圧の値が違うようなのですが、なぜですか?
血圧には日内変動があり、時間帯によって血圧は高くなったり、低くなったりします。
血圧は、通常、目が覚める数時間前に血圧が上がり始めます。
血圧は、日中は上昇を続け、正午にピークに達します。
その後、夕方になると徐々に血圧が下がり、就寝後の深夜には、血圧は最も低くなります。
代表的な異常な血圧のパターンとしては、早朝に血圧が高くなりすぎる場合(早朝高血圧)、本来低くなる夜間の血圧が下がらない場合(夜間高血圧)があります。
早朝高血圧とはどのようなものですか?
朝に血圧が上昇するのは、体に血液を供給するための自然な生理現象ですが、一部の人では、血圧が高くなりすぎる人がいます。
早朝高血圧は、診察室で測定した血圧は正常範囲であるものの、早朝に測定した自宅での血圧(家庭血圧)が高血圧の基準を超える(135/85mmHg以上)場合を指します。
早朝の時間帯は、一般的には、午前6時~午前10時です。
早朝高血圧には、二つのタイプがあり、夜間から血圧が高い人と、早朝になると血圧が急上昇する人がいます。
後者のように早朝に血圧が急激に高くなることを、モーニングサージと呼んでいます。
早朝に急激な血圧上昇(モーニングサージ)をきたしやすい人はどんな人でしょうか?
欧米人と比較し、日本人は、朝の血圧上昇をきたしやすいと報告されており、塩分摂取量が多いことがその一因として考えられています。
ほかに、モーニングサージを起こしやすい人の特徴として、アルコールを多量に飲む人、喫煙者、高齢者、睡眠時間が長い人、起きるのが遅い人などが挙げられます。
勤労者では、早朝の血圧が週末よりも月曜日に高くなる人が多く、心理的なストレスの影響も考慮されています。
加えて、高齢者では、寒い日には、朝の血圧が高くなりやすくなることが知られています。
早朝高血圧はどうして起こるのですか?
早朝に血圧が高くなる正確な理由は分かっていません。
早朝に血圧が高くなる理由として、一説には、交感神経の活性化などの自律神経が関与していると言われています。
降圧薬を内服中の人に、早朝の血圧上昇を認めた場合には、降圧薬の効果が、翌日の朝に切れている可能性があるため、注意が必要です。
降圧薬は、一般的に、朝に内服することが多いのですが、降圧薬の中には、効果時間が短く、一日中、降圧効果が持続しないものがあります。
このような作用時間の短い降圧薬を使用している人では、夜間就寝中に薬の効果が切れてしまい、朝方に血圧が高くなることがあります。
早朝高血圧のリスクについて教えてください。
朝の最初の4-6時間は、心臓発作、脳卒中、突然死などを最も起こしやすい時間帯です。
早朝の急激な血圧上昇は、これらの発症に関与している可能性が示唆されています。
日本人の早朝の高血圧の健康への影響を調べた研究として、代表的なものに、JHOP研究(Japan Morning Surge – Home Blood Pressure study)があり、この研究では、朝の血圧上昇は、脳卒中のリスクになることが報告されています。
朝の血圧は、どの程度まで上昇するといけないのでしょうか?
どのくらい朝の血圧が上昇すると、脳や心臓の病気を発症するリスクが高くなるかは、よく分かっていません。
朝の血圧上昇の程度は、夜間の血圧と起床2時間後の朝の血圧の差、あるいは、覚醒前後の2時間の血圧の差を用いて評価します。
朝の血圧上昇が健康に与える影響を調べた研究はいくつか報告されており、報告によって、結果は一定しません。
一説には、朝の血圧上昇が、収縮期血圧20mmHg未満の場合には、血管疾患等のリスク上昇に関与している可能性は低く、血圧上昇が少なくとも37㎜Hgを超える場合のみ、心臓の血管の病気や死亡リスクを上昇させると言われています。
朝の血圧上昇はどのようにすれば治りますか?
朝の血圧上昇や早朝高血圧に対する治療適応や治療法は確立されていません。
高血圧を治療中の人では、降圧薬の効果が夜間に切れている可能性があるため、降圧薬を長時間作用する薬に変更することにより、朝の血圧を下げることができる場合があります。
降圧薬を就寝前に飲むことで、朝の血圧を下げることは可能ですが、健康上の明らかなメリットは報告されていません。
降圧薬にはさまざまな薬があり、就寝時のα受容体遮断薬の投与が有効などの報告もありますが、特定のクラスの薬が推奨されることはありません。
早朝高血圧の治療適応と治療法については、明らかになっていない点が多く、今後の研究が望まれます。
朝の血圧上昇をきたす原因や早朝高血圧の健康への影響についての解説は、以上です。
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。