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MODY(若年成人発症型糖尿病)の解説|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

MODY(若年成人発症型糖尿病)の解説

MODY(若年成人発症型糖尿病)の解説|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

MODY(若年成人発症型糖尿病)の解説

公開日: 2021年10月22日

最終更新日: 2022年12月28日

肥満の既往のない25歳未満の若年者が糖尿病を発症した場合に、第一に疑うのは、1型糖尿病です。

しかし、若年者に糖尿病をきたす稀な疾患として、MODY(maturity-onset diabetes of the young、若年発症成人型糖尿病)があり、診察時には常に念頭に置く必要があります。

今回は、MODY(maturity-onset diabetes of the young、若年発症成人型糖尿病)について解説します。

MODY(maturity-onset diabetes of the young、若年発症成人型糖尿病)とは

最も一般的な糖尿病である2型糖尿病は、食事・運動などの環境因子と、多数の遺伝因子が互いに影響しあうことによって発症します。

しかし、一部の糖尿病では、一つの遺伝子に異常があるかないかによって、糖尿病を発症するかどうかが決まってしまうものがあり、その代表的なものとして、MODY(maturity-onset diabetes of the young、若年発症成人型糖尿病)が挙げられます。

MODYは、通常25歳以下の若年成人に発症する糖尿病であり、糖代謝に関わる単一の遺伝子に異常(遺伝子変異、遺伝子全体 あるいは、一部の欠失など)をきたすことによって発症します。

MODYは、常染色体優性遺伝形式で遺伝する病気であり、MODYの人には、一部の例外を除き、糖尿病の家族歴があり、親族や近親者に糖尿病の人がいます。

MODYは、どのくらいの人に認められるの?

MODYは、糖尿病全体の1-5%程度を占めると推定されています。

日本人の糖尿病におけるMODYの頻度は明らかになっていません。

MODYはどんな時に疑われるの?

MODYの多くは、単一遺伝子の異常により、インスリンを分泌する膵臓の発生やインスリン分泌機能に異常をきたし、糖尿病を発症します。

そのため、下記に当てはまる若年発症の糖尿病の人の場合には、MODYの可能性があるため、注意が必要です。

MODYを疑う特徴

  • 35歳までに糖尿病を発症した
  • 著明な肥満歴がない
  • インスリン分泌が低下している
  • 1型糖尿病で認められる膵島自己抗体(抗GAD抗体、抗インスリン抗体など)が陰性である

MODYの種類について

MODYをきたす遺伝子として、14個の遺伝子が報告されています。

代表的なMODYとその原因遺伝子は次の6種類です。

MODYのタイプと対応する原因遺伝子

  • MODY1:HNF4A
  • MODY2:GCK(グルコキナーゼ)
  • MODY3:HNF1A
  • MODY4:IPF-1
  • MODY5:HNF1B
  • MODY6:NeuroD

欧米では、MODY2が過半数を占め、MODY3は、約25%~50%を占めると言われています。

日本人のMODYの原因遺伝子の頻度は明らかになっておらず、現在、調査を行っています。

次に、代表的なMODYの発症メカニズム、症状、診断年齢等を解説します。

MODY2:GCK遺伝子異常による若年発症成人型糖尿病

MODY2は、GCK(グルコキナーゼ)遺伝子異常により発症します。

GCK(グルコキナーゼ)は、肝臓や膵臓で細胞内の解糖系の最初のステップであるグルコースからグルコース6-リン酸への変換を触媒する酵素であり、この遺伝子に異常が生じて発症する糖尿病を、GCK遺伝子異常症と呼んでいます。

GCK遺伝異常による糖尿病は軽症のことが多く、耐糖能異常は、出生時より存在しますが、学校での検尿健診で診断のきっかけになることが多いです。

MODY2は、小児期に発見されない場合には、軽症糖尿病や妊娠糖尿病として診断される場合があります。

血糖値が全体的に高くなりますが、MODY2の約70%の人では、経口糖負荷試験(75gOGTT)の負荷後2時間後の血糖上昇が、54㎎/dl以内であると報告されており、耐糖能異常は、重篤ではありません。

MODY2の耐糖能異常は、終生あまり重篤化しない場合も多く、厳格な生活習慣制限や薬物治療が不要なことも多いです。

そのため、GCK遺伝子異常によるMODY2は、糖尿病というよりも、解糖系の酵素機能低下に伴う血糖調節のセットポイント異常とも考えられています。

MODY3:HNF-1Aの遺伝子異常による若年発症成人型糖尿病

HNF1Aは、転写因子と呼ばれる遺伝子の一つで、膵臓や腎臓等の分化・発生に関与しています。

そのため、HNF1Aに異常が生じると、膵臓の機能に異常が生じ、インスリンの分泌が低下し、若年期に糖尿病を発症します。

日本人のMODY3の診断年齢は、10歳前後に集中しており、学校検尿健診が診断のきっかけになることが多いです。

HNF-1A異常によるMODY3は比較的重症なため、1型糖尿病と診断されて、インスリン治療が継続されていることが少なくありません。

MODY3と1型糖尿病が大きく異なっている点は、血糖降下薬の一種であるSU薬への反応が良い点です。

この差は、1型糖尿病がインスリンを分泌させる膵臓のβ細胞が破壊されつくされてしまうのに対して、MODY3(HNF1α異常)では、β細胞内のインスリン分泌の機構に異常が生じていることが生じます。

MODY3の一般的な臨床経過としては、加齢とともにインスリン分泌は徐々に障害され、インスリン分泌能は低下していきます。

また、HNF1Aは、腎臓にも発現しており、HNF1α異常によって、SGLT2と呼ばれる糖の再吸収を行う遺伝子発現に異常をきたすため、尿中に糖が漏れやすくなります。

HNF1A異常によるMODY3を正確に診断する場合には、保険適応外になりますが、遺伝子診断を行う必要があります。

MODY5:HNF1B異常による若年発症成人型糖尿病

MODY5は、HNF1Bと呼ばれる遺伝子の異常により生じる若年発症成人型糖尿病です。

HNF1Bは、転写因子の一つで膵臓や腎臓の発生に関与しています。

MODY5の特徴としては、次の点が挙げられます。

MODY5の特徴

  • 25歳未満の若年時に糖尿病を発症する。
  • 腎臓の発生障害を伴い、膵臓の低形成、生殖器の異常を伴うことが多い。
  • 腎障害をきたしやすい。
  • 遺伝子異常のタイプとしては、点突然変異よりもエクソンの欠失が多い事から、遺伝子診断の際には、遺伝子構造解析が必要となる。
  • 常染色優性遺伝形式をとることが多いが、両親に変異を認めない孤発例も散見される。

MODY1:HNF4A遺伝子異常による若年発症成人型糖尿病

MODY1は、HNF4A遺伝子異常による糖尿病です。

HNF1Aは、転写因子と呼ばれる遺伝子の一つで、膵臓や肝臓等の分化・発生に関与しています。

MODY1の頻度は稀です。

MODY1の臨床的な特徴としては、巨大時と新生児のときの高インスリン血症による低血糖があります。

MODY1の治療する上での特徴については、MODY3と同じでSU剤への反応が良いと報告されています。

MODY4:PDX-1遺伝子異常による若年発症成人型糖尿病

MODY4は、PDX-1遺伝子異常による糖尿病です。

PDX‐1は、転写因子の一つであり、膵臓やβ細胞の発生や機能に重要な働きをしています。

MODY4の報告例は、世界で4家系のみであり、日本人での報告例はありません。

MODY6:NEUROD1遺伝子異常による若年発症成人型糖尿病

MODY6は、NEUROD1遺伝子異常による糖尿病です。

NEUROD1は、転写因子であり、膵内分泌細部、消化管内分泌細胞、神経細胞に発現します。

MODY6の頻度は、極めて稀です。

過去のMODY6の日本の報告例では、糖尿病を診断した年齢は、10~14歳と報告されています。

MODY(若年発症成人型糖尿病)の解説は、以上です。

若年時に発症するインスリン療法が必要な重篤な糖尿病の多くは、1型糖尿病ですが、MODY(若年発症成人型糖尿病)の可能性があることを念頭に置く必要があります。

アスクレピオス診療院では、糖尿病の専門家が診療しております。

糖尿病のことでお困りなら、ご相談ください。

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