血糖値の正常値はいくつ? ー 1日の血糖推移・正常範囲・男性と女性の差を含めた解説
血糖値の正常値はいくつ? ー 1日の血糖推移・正常範囲・男性と女性の差を含めた解説
公開日: 2019年10月14日
最終更新日: 2022年12月30日
ヒトの血糖値は、ホメオスタシスの働きにより、一定の範囲内にコントロールされています。
血糖値が高くなり、さまざまな合併症をきたす病気は糖尿病と呼ばれています。
健常者の血糖値はどのくらいで、
糖尿病ではどんな風に血糖値が変化しているのでしょうか?
今回は、そんな血糖値についての疑問にお答えします。
目次
血糖値は、一定の範囲内にコントロールされています。
健常者でも、絶食が続いた後の空腹時や、食物から糖分を取り込んだ後の食後には変動します。
健常者の空腹時(少なくとも8時間の絶食時)の血糖値は、100mg/dl未満です。
ほとんどの方の空腹時の血糖値は、70mg/dl ~ 99mg/dlに維持されています。
(妊娠中などの一部の人では、70mg/dl未満となります。)
食後は、食事中の糖分が取り込まれるため、血糖値が上昇します。
健常者では、食後2時間の血糖値は 140mg/dl未満です。
血糖値が70mg/dl未満に低下した場合には、低血糖と呼ばれます。
低血糖になると、動悸、振戦、発汗、意識障害などさまざまな症状が出現します。
→ 低血糖の詳しい解説 の記事
空腹時血糖値が、100mg以上~110mg/dL未満は、正常高値と呼ばれます。
この範囲の方では、糖尿病の可能性があり、糖尿病の精密検査である経口血糖負荷試験を施行することが推奨されています。
空腹時血糖値が、110mg以上~126mg/dl未満は、空腹時血糖異常(IFG:impaired fasting glucose)と呼ばれます。
若い頃は正常だった血糖値が徐々に上がってきていることを示すため、
空腹時血糖異常の方は、将来、2型糖尿病に進行する可能性があります。
空腹時血糖異常は、程度は少ないですが、糖尿病の血管合併症のリスクが高くなります。
空腹時血糖値が、126mg/dl以上は、糖尿病と診断されます。
食後血糖値は、食後2時間後に、140mg/dlを超えている場合は、糖尿病の可能性があります。
男性と女性の血糖値の違いについては、空腹時血糖値とHbA1cは、正常耐糖能の人では、男性の方が女性より高めであることが報告されています。
具体的な数値は参考値になりますが、空腹時血糖値は、男性 97.3mg/dl、女性 93.7mg/dl HbA1c 男性 5.8% 女性 5.7%です。
(1)
→ 糖尿病ってどんな病気? の記事
→ 高血糖とインスリンの関係について の記事
→ インスリンの解説
次に健常成人の一日の血糖を見てみましょう。
下の図は、健常成人(平均年齢 27歳の男女 12名を対象)として得られた一日の血糖推移(日内血糖変動)のグラフです。
(正確には、長時間持続して血糖測定を行うため、センサーを皮下に設置して測定しているため、
血糖値ではなく、皮下の間質液中のグルコース濃度になります。)
真ん中の太い線が、21人(3人は測定できず)の平均血糖値になります。
一日を通じた平均血糖値は、89mg/dlです。
食間の平均血糖値は、昼間 93mg/dl、夜間 82mg/dlです。
平均血糖値が最も高くなるのは、朝食後であり、132mg/dlです。
昼食後と夕食後は、それぞれ、118mg/dl、123mg/dlになっています。
健常者の血糖推移は、夜間は低めであり、朝食を食べると最高値に上がり、昼食、夕食後にも少し上がるという推移になっています。
参考文献:Freckmann G. et al. Continuous Glucose Profiles in Healthy Subjects under Everyday Life Conditions and after Different Meals. J Diabetes Sci Technol. 2007
ちなみに、妊娠後期の方では、血糖の平均値は、若干低くなります。
健常者の妊娠後期(33±2.3週)の平均血糖値は、早朝空腹時 71mg/dl、食後1時間 109mg/dl、食後2時間 99mg/dlと報告されています。
下図参照。
参考文献:
Hernandez TL. Patterns of glycemia in normal pregnancy: should the current therapeutic targets be challenged? Diabetes Care. 2011
ただし、今示したデータは、外国人のデータになりますので、日本人にそのまま当てはめる事ができるかは調査が必要です。
糖尿病は血糖値が高くなる病気とされていますが、
血糖降下薬を投与されていない糖尿病の方では、どのような血糖推移になっているのでしょうか?
下図は、日本人の糖尿病の血糖降下薬を投与前のHbA1c毎の日内血糖変動のグラフです。
重なっていて分かりずらいのですが、なんとなく、HbA1cが上昇するにつれて、血糖値は高くなってそうです。
これをHbA1c別に分けると、
以上のようになります。
HbA1cが上昇するにつれて、一日の血糖値は高くなっています。
血糖値は、空腹時血糖値、食後血糖値がありますが、両者ともに上昇しています。
さらに、ラインを引くと、
以上のようになります。
HbA1cが上昇するにつれて、空腹時血糖値、及び、食後血糖値が上昇しています。
他の文献では、空腹時・食後ともにHBA1c 7%未満から上昇するという報告もあります。
日本人の糖尿病患者さんには、
1 非肥満のインスリンの分泌不全型
2 軽度の肥満に伴うインスリン抵抗性 + インスリン分泌不全型
3 肥満に伴うインスリン抵抗性
の3タイプの方がいます。
調査対象に含まれていた患者さんによって、食後血糖から上昇する、空腹時血糖から上昇する
空腹時血糖から上昇する、空腹時と食後血糖値の両方が上昇する。
どちらの結果にもなりうるため、矛盾はないでしょうね。
文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔
参考文献:
Hajime M. Twenty‐four‐hour variations in blood glucose level in Japanese type 2 diabetes patients based on continuous glucose monitoring. J Diabetes Investig. 2018
Mori H. Glycemic Profiling in Patients with Drug-Naïve Type 2 Diabetes by Continuous Glucose Monitoring. J UOEH. 2018
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