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糖尿病になると感染症になりやすい - HbA1cと感染症リスクの関係を含めた解説|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

糖尿病になると感染症になりやすい - HbA1cと感染症リスクの関係を含めた解説

糖尿病になると感染症になりやすい - HbA1cと感染症リスクの関係を含めた解説|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

糖尿病になると感染症になりやすい - HbA1cと感染症リスクの関係を含めた解説

公開日: 2020年2月8日

最終更新日: 2022年12月29日

 
糖尿病になると、様々な感染症にかかりやすくなります。
 
イギリスの研究では、糖尿病の人は、糖尿病のない人に比べて、感染症のために投薬が必要となるリスクは、1.3倍高く、感染症で入院が必要となるリスクは、1.8倍高くなることが報告されています。
 
HbA1cが高くなるほど、感染症のリスクは上昇し、感染症の中でも、骨・関節の感染症、心内膜炎、敗血症などの一部の重篤な感染症は、より発症しやすくなります。
 
驚くべきことに、HbA1cを7%未満にコントロールしても、糖尿病の人では、投薬治療を要するリスクが、1.2倍、入院治療を要するリスクは、1.7倍となり、糖尿病のない人と同程度まで下がりません。
 
糖尿病の血糖管理を厳格にしても、感染症のリスクは健常者並みには下げられないかもしれません。
 
しかし、高血糖は感染症のリスクを高めるため、感染症の予防のためには、血糖コントロールをなるべく良い状態に保ちましょう。
 
 
糖尿病とHbA1cと感染リスク
 
 

 
 
 
 

今回、紹介する臨床研究の内容

 
糖尿病になると、感染症にかかりやすくなる事が知られています。
 
では、糖尿病の血糖コントロールを改善すると、感染症のリスクをどの程度下げる事ができるのでしょうか?
 
今回、紹介する臨床研究は、糖尿病の血糖コントロールを改善する事によって、どの程度、感染症のリスクは低減できるかを検討したイギリスの研究になります。
 
本研究は、イギリスのプライマリケア(家庭医)のデータベース(Clinical Practice Research Datalink) を利用して行われたものです。
 
対象者は、40歳~89歳の糖尿病患者 85312人(2型糖尿病 78964人、1型糖尿病 4496人、成因不明 1852人)、及び、コントロール群として、糖尿病ではない人 153341人が選出されました。
 
これらの対象となった人々が、2010年から2015年の間に何らかの感染症を発症したかどうかを調査することにより、糖尿病の血糖コントロール(HbA1c)と感染症の発症リスクとの関係を評価しました。
 
本研究の糖尿病患者さんの平均HbA1cは、2型糖尿病 7.4%、1型糖尿病 8.3%でした。
 
 
 
 

糖尿病の人は、糖尿病でない人より、HbA1cに関わらず、感染症のリスクは高くなる。

 
糖尿病の人と、糖尿病のない人の感染症のなりやすさを比較した結果、驚くべき事が判明しました。
 
下の図は、糖尿病のない人と、糖尿病の人をHbA1c別に区分し、何らかの感染症を発症し、投薬されたり、入院が必要になった人の割合を表した図です。
 
糖尿病でない人の発生リスクを1としています。
 

糖尿病・非糖尿病患者の感染リスクの図.

A 感染症による薬の処方
B 感染症による入院
縦軸:発生リスク
横軸:HbA1c(%)
Non-DM: 糖尿病のない人


Critchley JA et al. Diabetes Care. 2018より引用
 
糖尿病患者全体は、糖尿病のない人に比べて、感染症で投薬が必要となるリスクは、1.3倍高く、感染症で入院するリスクは、1.8倍高かったと報告されています。
 
驚くべきことに、HbA1cを7.0%未満にコントロールしても、糖尿病がある人は、糖尿病がない人と同程度まで感染症のリスクは下がりませんでした。
 
1型糖尿病と2型糖尿病患者で感染症のリスクを比較した際には、感染症により、投薬したり、入院が必要となるリスクは、1型糖尿病の方が、2型糖尿病よりも高くなりました。
 
(糖尿病のない人を1とした場合のリスクは、1型糖尿病 投薬 1.56 入院 3.34、2型糖尿病 投薬 1.29 入院 1.7です。)
 
HbA1cが良好でも、糖尿病があると感染症のリスクが高くなる理由は分かっていません。
 
一つの可能性としては、HbA1cは、血糖値を反映すると言っても、ある程度のばらつきがあります。
 
→ 空腹時血糖値が高いのに、HbA1cは正常になるのはなぜ? の解説記事
 
HbA1cの正常範囲の人の中に、血糖値が健常者のようにフラットではなく、日内の血糖変動が激しい人や低血糖を頻発している人が含まれているからかもしれませんね。
 
→ 血糖値の正常値 の解説記事
 
 
 
 

HbA1cが高いほど、感染症のリスクは高くなり、入院も増える。

 
次に、糖尿病の人の中で、どのような人だと、感染のリスクは高くなるのでしょうか?
 
先ほどの図を見て頂くと分かるように、HbA1cが高い人、つまり、血糖コントロールの悪い人ほど、感染症にはなりやすく、入院する人も多くなります。
 
HbA1c 11%以上とかなり血糖コントロールが悪い人では、HbA1c 6%台の人と比較して、投薬が必要になるリスクは、1.4倍となり、入院するリスクは、約3倍に上昇します。
 
血糖コントロールが悪くても、誰も彼もが感染症になるわけではなく、思ったよりも、リスクは高くならないといった印象ですね。
 
糖尿病の罹患歴(5年未満、5-15年、15年以上)を比較した場合には、罹患歴長い人ほど、処方、入院のリスクは上昇します。
 
(5年未満を1とした場合のリスクは、5-15年 処方 1.1 入院 1.23、15年以上 処方 1.2 入院 1.54になります。)
 
 
 
 

糖尿病になると、ほとんどの感染症の感染リスクが上昇する。特に、骨と関節、心内膜炎、結核、敗血症などの重篤な感染症のリスクは、HbA1cが高くなると顕著に増加する。

 
最後に、糖尿病になるとなりやすくなる感染症にはどのようなものがあるのでしょうか?
 
今回の研究では、糖尿病の人と、糖尿病でない人と比較した場合には、下記のような多くの感染症のリスクが上昇したと報告されています。

  • 骨・関節の感染症
  • 胆のう炎
  • 心内膜炎
  • 目の感染
  • 胃腸感染症
  • 感染性外耳炎
  • 上下気道感染症
  • 真菌症(カンジタ症など)
  • 肺炎
  • 敗血症
  • 蜂巣炎
  • 術後創部感染
  • 結核
  • 尿路感染

 
ほとんどの感染症と考えた方が良さそうですね。
 
この中でも、骨・関節の感染症、心内膜炎、敗血症は、HbA1cが高くなると、感染リスクが増える傾向が強いようです。
 
下図は、HbA1c別でどの程度感染者が増えるのかを示した例になります。
 

糖尿病の血糖コントロールと敗血症、手術創部、骨関節の感染症リスクの図

左:敗血症 
中央:手術創部 
右:骨・関節
縦軸 1000人あたりの感染者数
横軸:controls(糖尿病のない人)、HbA1c(%)


 
 
糖尿病の血糖コントロールと上気道感染・蜂窩織炎・カンジタ症の感染リスクの図

左:上気道炎 
中央:蜂窩織炎
右:カンジタ症
縦軸 1000人あたりの感染者数
横軸:controls(糖尿病のない人)、HbA1c(%)


 
Critchley JA et al. Diabetes Care. 2018より引用
 
提示した感染症は一部ですが、どの感染症も、糖尿病のない人より糖尿病のある人の方が、また、HbA1cが高くなるほど、感染者数が増える傾向がある事が分かります。
 
 
 
 
糖尿病の人は、糖尿病のない人に比べて、基本的に感染症に弱くなります。
 
糖尿病のHbA1cが高ければ高いほど、顕著にリスクが上昇する感染症もあるため、なくべく血糖コントロールは良い状態に保ちましょう。
 
 
 
参考文献
 
Critchley JA et al. Glycemic Control and Risk of Infections Among People With Type 1 or Type 2 Diabetes in a Large Primary Care Cohort Study. Diabetes Care. 2018
 
 
 
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」のブログ記事一覧
 
 
 
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生
 

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