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糖尿病性神経障害とは ー 症状・機序・検査・治療薬を含めた解説

糖尿病性神経障害とは ー 症状・機序・検査・治療薬を含めた解説

公開日: 2019年11月3日

最終更新日: 2019年11月11日

 
糖尿病は、高血糖をきたし、さまざまな合併症をきたす疾患です。
 
糖尿病になると、脳から内臓・手足に至るまであらゆる神経が傷みます。
 
糖尿病でよく認められる神経障害は、末梢神経の障害です。
 
手足のしびれや痛みなどの自覚症状は、足先から生じることが多く、その症状は、手袋靴下型と言われる手袋や靴下を履いたような形で出現します。
 
末梢神経には、感覚神経、自律神経、運動神経があります。
 
感覚神経が障害されると、先ほどの手足のしびれや痛みに加えて、温度や痛みなどの感覚が鈍くなったり、足がどちらの方向を向いているか、分からなくなり、転びやすくなったりします。
 
自律神経が障害されると、悪心・嘔吐・下痢・便秘等の症状がでたり、起立時に血圧が大きく下がり、ふらつく原因にもなります。
 
糖尿病の神経障害は、初期には、自覚症状に乏しい事が多く、自覚症状がない人も含めると、長年、糖尿病を患っている人では、半数以上の人に生じます。
 
神経障害が進行し、重症化すると、足の痛み・温度が完全になくなり、潰瘍や下肢切断をきたす原因になることもあります。
 
糖尿病性神経障害の予防のために、血糖コントロールを頑張りましょう。

 
 
糖尿病神経障害
 
 
 
 

 
 
 
 

糖尿病になると、どの神経が傷むの?

 

糖尿病は、血糖値が高くなり、全身が傷む病気です。
 
→ 1.糖尿病の三大合併症
→ 2.糖尿病網膜症
→ 3.糖尿病性腎症
→ 4.糖尿病の足病変  の記事
 
糖尿病により、全身の神経は障害されます。
 
ヒトの体には、脳や各臓器の間で、情報のやり取りをするために、神経が張り巡らされています。
 
神経には、中枢神経と末梢神経があります。
 
中枢神経には、脳・脊髄があり、思考や命令の中枢を担っています。
 
末梢神経には、次の3つの神経があります。

  • 運動神経は、筋肉に命令を出して動かします。
  •  

  • 感覚神経は、温度・痛み・振動・位置などの知覚情報を中枢に伝達します。
  •  

  • 自律神経は、内臓や血管の動きの調節しており、交感神経・副交感神経の両者により、バランスが保たれています。

 
上記の神経が、互いに協調しつつ、全身の活動を調整をしています。
 
 

中枢神経と末梢神経の図

左:脳 – 脊髄 – 内臓と末梢神経 
右:脳 – 脊髄 – 全身と末梢神経


 
→ 中枢神経と末梢神経の説明(外部リンク)
 
糖尿病になると、これらの脳を含むすべての神経が障害されます。
 
糖尿病性神経障害があっても、最も多く見積もると、約半数の人には自覚症状はありません。(1)

 
 
 
 

糖尿病による末梢神経の障害

 
 

末梢神経障害はどこにでる?

 

糖尿病性末梢神経障害(*)は、糖尿病による神経障害の約75%を占めていると言われています。(2)
 
(* ここでは糖尿病性多発神経障害、遠位対称性多発ニューロパチーを指します。)
 
糖尿病性末梢神経障害では、感覚神経などの神経が障害されます。
 
ブドウ糖は、血液中を流れているため、高血糖の影響は、左右対称となり、神経が長くなるほど障害を受けやすくなります。
 
糖尿病による末梢神経の障害は、脳から最も遠い足の先・足の裏から徐々に始まります。

  1. 下腿(足の膝から足まで)
  2. 大腿・腕

 
上記のように、神経障害の範囲は拡大していきます。
 
症状が出現する場所は、靴下と手袋を履いたような形となる事から、手袋靴下型の神経障害と呼ばれています。
 
糖尿病性神経障害の図
Brian C. Lancet Neurol. 2014 より引用
 
上図では、Aの障害パターンになります。
 
(図は、手足の神経が障害され、手足の先になるほど、症状はひどくなる事を示しています。)

 
 

末梢神経障害の症状

 

末梢神経障害では、温度、痛覚、位置覚などの感覚の障害が出現します。(3)
 
温痛覚が異常をきたすと、下記の症状が出現します。

  • しびれ
  • 痛み(チクチクする、焼ける感じ)
  • 少しの刺激での痛み
  • 足の裏の違和感
  • 温度感覚の低下
  • 感覚の鈍麻(痛覚・温度)
  • 感覚の消失(痛覚・温度)

 
また、振動覚・位置覚などの深部感覚に異常をきたすと、次の症状がおこります。

  • バランスと協調の運動の障害

 
また、他の症状としては、下記の症状が生じます。

  • けいれん
  • 筋力低下

 
感覚障害が極度に進行すると、さらにひどい症状をおこします。

  • 足に潰瘍ができる。
  • やけどに気づかずに、低温やけどになる。
  • 怪我の痛みがなく放置し、感染症になる。
  • 歩き方が変になり、骨や関節が変形する。
  • 転んで骨折しやすくなる。

 
知覚の障害が進むにつれて、出現する症状もどんどんひどくなります。
 
→ 糖尿病の足病変 - 原因と壊疽・潰瘍予防のフットケア の記事

 
 

しびれや痛みのある人の頻度

 

糖尿病で足がしびれたり、痛む人はどのくらいいるのでしょうか?
 
発症20年経過した1型糖尿病では、約20%の人が糖尿病の神経障害を生じています。
 
また、10年以上経過した2型糖尿病では、約50%の人が何らかの神経障害をもっていると言われています。
(4)(5)(6)(7)
 
糖尿病による末梢神経障害は、下記のような特徴のある人に生じやすいと報告されています。(8)

  • 背の高い人
  • 糖尿病歴の長い人
  • 血糖コントロールの悪い人
  • 活動量の少ない人
  • 高齢者
  • 喫煙者
  • 高血圧
  • 肥満者

 
末梢神経障害のために痛みのある人は、約25%に及びます。(9)(10)

 
 

神経障害の疼痛管理

 

神経障害の疼痛の管理には、下記の薬が用いられています。(11)

  • 抗うつ薬(三環系抗うつ薬:アミトリプチン SNRI:デュロキセチン)
  • プレガバリン
  • トラマドール
  • カプサイシン

 
人によって効果のある人と効果が乏しい人があるため、病状に応じて使い分けが必要です。

 
 
 
 

自律神経の障害

 
 

自律神経障害が生じる場所

 

糖尿病では、体のさまざまな臓器を調節をしている自律神経も障害されます。
 
自律神経には、交感神経、副交感神経があり、互いに協調しながら、臓器の機能を調節しています。
 
自律神経は、目、心臓や血管、消化管(胃・小腸・大腸)、泌尿器(膀胱・性器)、皮膚など、全身に存在しています。

 
 

自律神経障害の症状

 

自律神経が障害される場所によってさまざまな症状が出現します。(12)
 
自律神経症が出現する場所は、心血管、消化管、泌尿器、皮膚、目と多岐にわたります。
 
具体的な症状については、下記の通りです。

  • 安静時の心拍数の増加
  • 無痛性心筋梗塞
  • 起立時に血圧が低下する。(起立性低血圧)増加
  • 悪心・嘔吐
  • 胃からなかなか食物が排出されない。(胃不全麻痺)
  • 腹部膨満
  • 便秘・下痢
  • 排尿できない(神経因性膀胱)
  • 失禁
  • 勃起しない
  • 発汗の増加・減少
  • 皮膚の乾燥

 
自律神経障害がある人は、自律神経障害がない人に比べて、死亡リスクが2倍以上になります。
 
糖尿病性神経障害の図
Brian C. Lancet Neurol. 2014 より引用
 
上図では、Dの障害パターンになります。
(図では心臓と腸が障害されています。)

 
 
 
 

単神経の障害

 

糖尿病性単神経障害は、運動神経などの太い神経が障害されることで発症します。(13)
 
神経障害は、神経が虚血になっておきる場合と、圧迫されるなどして障害される場合があります。

 
 

単神経障害がおこりやすい場所

 

糖尿病の単神経障害がよく生じる場所には、眼球運動を調節する運動神経(動眼神経)や、手を動かす運動神経(正中神経)があります。

 
 

単神経障害の症状

 

眼球運動を障害される神経が障害されると、ものが二重に見えます。
 
手の運動神経が障害されると、手に力が入りにくくなったり、動かなくなったりします。
 
脳梗塞の鑑別が必要なため、これらの症状が生じた場合には、MRIの撮像可能な病院へ行きましょう。
 
糖尿病性神経障害の図
Brian C. Lancet Neurol. 2014 より引用
 
上図では、Cの障害パターンになります。
(図では3か所障害されています)

 
 
 
 

神経根の障害

 

糖尿病では、脊髄付近の神経根も障害されることがあります。
 
糖尿病による神経根障害は、糖尿病性筋萎縮症とも呼ばれます。(13)
 
糖尿病の重症度や期間は無関係に、50歳以上の人では段階的に急激におこります。
 
症状は、太もも、臀部や脚の神経に影響を及ぼしている神経根が体の片側を支配しているため、身体の片側に出現しますが、ときに両側に出現します。
 
糖尿病性筋萎縮症の症状としては、腰、股関節、大腿の激しい痛みが生じたり、体重が減少したり、下肢の筋力の低下を認めたり、足がやせ細り、立ち上がりにくくなるなどを認めます。
 
数か月間持続したのち、徐々に自然に軽快しますが、筋力低下が持続することがあります。
 
このタイプの神経障害は、免疫抑制療法に反応する事があります。
 
また、神経根が障害されることで、胸部や腹部に帯状に分布する片側性の痛みや感覚異常が出現する場合があります。
 
腹部の筋力の低下により、腹壁が膨らむこともあります。
 
発症は、急速に出現する場合も、徐々に進行する場合もあり、一般に数か月持続し、その後、徐々に沈静化します。
 
糖尿病性神経障害の図
Brian C. Lancet Neurol. 2014 より引用
 
上図では、Bの障害パターンになります。
(図では、神経根障害により2か所が障害されています。)

 
 
 
 

治療で誘発される神経障害

 

一部の糖尿病患者では、インスリンなどの糖尿病治療薬による血糖値の急速な改善後に、手足の痛みや自律神経障害を認める事があります。
 
この症状は、時間とともに改善する事が多いです。(14)

 
 
 
 

その他の神経障害

 

一般的には、糖尿病の神経障害には、中枢神経の脳は含まれていません。
 
糖尿病では、脳梗塞のみならず、アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症などの各種の認知症のリスクも上昇することが報告されています。(15)

 
 
 
 

糖尿病性神経障害の診断と検査

 

糖尿病性神経障害を診断は、基本的に他の神経障害をきたす病気を除外しておこないます。
 
また、神経障害の評価には以下の事を行っています。(16)
 

  • 血液検査:蛋白分画、ビタミンB12、葉酸、甲状腺機能、糖脂質検査 他
  • 触覚  :足裏などと他の部位の感じ方が違うかどうか。10gモノフィラメントによるピンプリックテスト
  • 位置覚 :どの足の指を触っているか、足が向いている方向がわかるかどうか。
  • 振動覚 :音叉による振動が分かるかどうか
  • 腱反射 :打腱器で足の腱をたたき反応をみます。
  • 自律神経:臥位と立位で血圧が下がるかどうか(シェロングテスト)
  • 心臓の自律神経検査(CVR-R)
  • 運動・感覚神経:神経伝達速度検査

 
 
他にもいろいろとありますが、代表的なものは以上になります。

 
 
 
 

糖尿病神経障害を防ぐには?

 

糖尿病の神経障害は発症してしまうと、現在では、有効な治療法はありません。
 
そのため、予防が重要になります。
 
糖尿病による神経障害を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?
 
糖尿病は、血糖が高くなることで、臓器障害をきたす疾患です。
 
神経障害の予防に血糖コントロールは重要な役割を果たします。
 
1型糖尿病の人では、血糖管理を厳格にすると、神経障害の発症は顕著に抑えられます。(論文では 70~80%)
 
一方で、2型糖尿病の人では、血糖コントロールを改善しても、改善は、せいぜい数%とあまり抑制効果は期待できません。
(17)
 
2型糖尿病の人では血糖コントロールによる予防効果が少ない理由ははっきりしていません。
 
その理由としては、現時点では、糖尿病の発症前から神経障害に影響を与えている可能性や、脂質異常やインスリン抵抗性との関連が考えられています。
 
2型糖尿病の血糖管理の厳格化による神経障害の予防効果のデータは、主として海外から報告です。
 
日本人の糖尿病は、海外の肥満主体の糖尿病とは異なり、やせ・軽度肥満の糖尿病のため、血糖管理の効果は異なる可能性があります。
 
神経障害を予防するには、血糖管理に加えて、神経障害をきたすリスク因子は避けるため、禁煙し、適度に運動する方が良いでしょう。

 
 
 
 

以上が、糖尿病の神経障害の説明です。
 
糖尿病では、中枢神経から末梢神経までと幅広く障害され、運動神経、感覚神経、自律神経が障害されます。
 
神経障害による自覚症状も、手足のしびれから、悪心・嘔吐まで多彩な症状を認めます。
 
重症化すると、温度や痛みが分からなくなり、足の潰瘍を起こしたり、心筋梗塞になっても痛みがなかったりします。
 
神経障害を予防するために、糖尿病治療を頑張りましょう。

 
 

→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧

 

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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生

 

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