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インスリンの正しい打ち方 - 注射の手技や部位、気泡などの注意点の解説|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

インスリンの正しい打ち方 - 注射の手技や部位、気泡などの注意点の解説

インスリンの正しい打ち方 - 注射の手技や部位、気泡などの注意点の解説|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

インスリンの正しい打ち方 - 注射の手技や部位、気泡などの注意点の解説

公開日: 2019年12月15日

最終更新日: 2022年12月29日

 
インスリン製剤には、ペン型(ディスポ、カートリッジ交換型)とイノレットのような特殊な形状のものがあります。
 
形状は異なりますが、インスリンを打つときに注意すべき点は、だいたい同じです。
 
インスリンの皮下注射する際に、忘れやすく最も重要なことは、全く同じ場所にインスリンを注射し続けない事です。
 
インスリンを同じ場所に打ち続けると、皮膚の下がだんだんと硬くなります。
 
(インスリンボール、リポハイパートロフィーと呼ばれます。)
 
そこに、インスリンを注射すると、インスリンの吸収が安定せず、血糖値がばらつく原因になります。
 
インスリンを皮下注射する際には、毎回、最低 1cm ~ 2cm ずらして、違う場所に打つようにしましょう。
 
(前日に注射した場所も避けてください。)
 
 
インスリン皮下注射の方法と注意点
 
 

 
 
 
 

インスリン製剤の種類

 
インスリン製剤を発売している代表的なメーカーとしては、次のメーカーが代表的です。

  • ノボノルディスクファーマ
  • イーライリリー
  • サノフィ―

 
各社から、次のような色々なタイプのインスリン製剤が発売されています。

  • 超速効型 ・・・ ノボラピッド・ヒューマログ・アピドラ
  • 速効型  ・・・ ノボリンR・ヒューマリンR
  • 中間型  ・・・ ノボリンN・イノレットN・ヒューマリンN
  • 持効型  ・・・ ランタス・ランタスXR・レベミル・トレシーバ
  • 混合型  ・・・ ノボリン30R、ノボリン30mix、ヒューマリン3/7、ヒューマログミックス25、ヒューマログミックス50、ライゾデグ

 
基本的な投与方法は、どのインスリンもほぼ同じです.
 
ただし、懸濁製剤である中間型製剤と一部の混合型製剤では、インスリン皮下注射時に十分な転倒混和が必要です。
 
インスリンの注射器具には、さまざまな形状のものがあります。

  • ペン型(ディスポ型)
  • ペン型(カートリッジ交換型)
  • 特殊な形状(イノレット)

 
キャップの開け閉めや、単位の設定方法が少し異なりますが、基本的なインスリンの打ち方はほぼ一緒です。
 
ペン型インスリン
 
イノレット30R
 
ノボリン30R注フレックスペン イノレット30R注 の患者向け医薬品ガイドより引用
 
 
 
 

インスリンの打ち方

 
インスリンを打つ場合には、次の流れで行います。

  1. 注射の準備
  2. 空打ち
  3. 単位の設定
  4. 皮下注射
  5. 注射終了後の片づけ

 
 

注射の準備

 
注射の準備です。
 
注射の前に、インスリンカートリッジ、インスリンの針、インスリンの種類を確認し、インスリンカートリッジのキャップを外します。
 
ゴム栓を酒精綿で消毒し、注射針を取り付けます。
 
注射針の取り付け方は、ゴム栓に垂直にインスリン用の針(ペンニードルなど)を刺し、止まるまで回します。
 
針ケースと針キャップを取ります。
 
この時、針ケースは、インスリンの針をインスリンのカートリッジから外す際に使用しますので、捨てないでください。
 
 

空打ち

 
次に、空打ちを行います。
 
空打ちは、インスリンのカートリッジ内の空気を除去し、注射液がきちんと出るかを確認するために行います。
 
インスリンカートリッジの単位を2単位に合わせます。
 
針先を上に向けて、インスリン溶液中の気泡を上に集めます。
 
そして、針先を上に向けたまま、指で2-3回はじき、空気を上部に集めます。
 
そして、注入ボタンを押して、空気を外に出します。
 
インスリンの注射液が、しっかり出ていることを確認します。
 
 

単位の設定

 
投与する単位を設定します。
 
単位の設定の前に、インスリンカートリッジの外側の残量のメモリを確認して、残量があるかを確認します。
 
単位のダイヤル表示が、0であること確認してから、指示された単位をセットします。
 
 

皮下注射

 
インスリンカートリッジの準備ができたら、皮下に注射します。
 
注射自体は、酒精綿で消毒して、皮膚に垂直に針を刺して、ボタンを押すだけですので、難しくありません。
 
しかし、インスリンを注射する際にはいくつかの注意すべき点があります。

  • インスリン注射する場所
  • インスリン注射する場所は毎回変えよう
  • インスリン注射したら、10数えよう。

 
 

インスリン注射する場所

 
インスリンを注射する際の注射部位は、一般的には下図の通りです。
 
インスリンの注射部位
インスリン注射ガイド 日本糖尿病協会より引用
 
おへその周辺、腕、足を色々な場所に打つ事ができます。
 
特別な事情がない限りは、お腹へ打つことが推奨されます。(1)
 
その理由は、インスリンの吸収は、皮膚の温度や皮下の血流など様々な影響を受けるからです。
 
腕や太ももは、外部に露出しており、動かすことで、血流が変化するため、吸収動態が不安定になることがあります。
 
 

インスリン注射する場所は毎回変えよう

 
インスリンを皮下注射する場所は、毎回1cm~2cmずらします。(2)
 
投与場所も、下の図のように徐々に移動させます。
 
インスリンの注射部位のローテーション
Forum for Injection Technique (FIT), India The Indian Recommendations 2.0, for Best Practice in Insulin Injection Technique 2015より引用
 
その理由は、毎回同じ場所に注射すると、徐々に硬くなるからです。
 
体のどこでも、毎日毎日、何度も針を刺していると、そのうちその皮膚が固くなってくる気がしませんか?
 
インスリンも同じ場所に打ち続けると、皮膚の下に硬結ができることがあります。
 
この皮膚の下の硬い塊(皮下硬結)は、インスリンボールやリポハイパートロフィーと呼ばれます。
 
この塊にインスリンを注射すると、インスリンの吸収動態が不安定になり、血糖が不安定になる原因になります。
 
 
→ インスリンボール の記事
 
 

インスリン注射したら、10数えよう

 
インスリンを打つ前に、皮膚を次の図のようにつまみます。
 
インスリン注射時の皮膚のつまみ方
Forum for Injection Technique (FIT), India The Indian Recommendations 2.0, for Best Practice in Insulin Injection Technique 2015より引用
 
インスリンの針を、皮膚に垂直に刺します。
 
カードリッジのボタンを押して、インスリンを注射した後には、10数えます。
 
理由は、すぐに抜くと、インスリンの液が皮膚から逆流して漏れてくるからです。
 
インスリン注射してから、5~6秒以上おいてから、針を抜くのが一般的な方法です。
 
数を数える方が早い人もいるため、10数えるのが良いでしょう。
 
 

注射終了後の片づけ

 
インスリン注射が終わったら後片付けです。
 
針のケースをインスリンの針に付けて、注射針を回して、外します。
 
インスリンにキャップをつけます。
 
インスリンの針は、そのまま捨てると、ゴミ回収業者の人が回収する際に針刺し事故を起こす可能性があるため、堅牢な容器に入れて捨てましょう。
 
サラヤ針捨てボックス
堅牢な容器の例:サラヤ針捨てボックス
→ サラヤ株式会社(外部リンク)
 
処分方法は、各自治体に問い合わせてください。
 
名古屋市にお住まいの方は、通院中の医療機関に持参ください。
 
なぜ、名古屋市の家庭ごみの処理費用を医療機関が負担しなければならないのかは不明です。
 
 
 
 

中間型(NPH)インスリン製剤と混合製剤を打つ前には十分な転倒混和が必要

 
中間型のインスリンは、NPHインスリン(Neutral protamine Hagedorn insulin)と呼ばれ、インスリンにプロタミンが添加されることにより、作用時間の長時間化を達成しています(3)
 
NPHインスリンは、白色の懸濁液で、しばらく静置すると、白色の沈殿物と無色の上澄液に分離してします。
 
そのため、NPHインスリンを打つ前には、転倒混和を20回以上が必要です。
 
NPHインスリンを打つ前の調査結果では、2型糖尿病の患者さんのうち、10回以上ペンを傾けて転がしたのは、わずか10人のうち1人しかいなかったという報告があります。
 
懸濁が不十分だと、投与時にでてくるインスリン量が変わってしまい、NPHインスリンの含有量は、5%から214%の範囲と幅広く分布していたそうです。
 
これでは、インスリンの効果が強い日と、弱い日に分かれてしまい、低血糖のリスクが上昇します。
 
NPHインスリンを使用する場合には、良く懸濁できていないことが一般的のため、糖尿病の患者さんは、NPHインスリンを少なくとも20回含むペン先を混和しましょう。
 
注:混和が必要なインスリンは下記の通りです。

  • ヒューマリンN
  • ヒューマリン3/7
  • ヒューマログミックス25
  • ヒューマログミックス50
  • ノボリン30R
  • ノボラピッド30ミックス
  • ノボラピッド50ミックス
  • ノボラピッド70ミックス

 
ライゾデグは、プロタミンを使用した懸濁製剤ではないため、転倒混和の必要性はありません。
 
 
 
 
以上が、インスリンの打ち方についての解説になります。
 
インスリンを打つ場合には、毎回 1cm ~ 2cm 離して 違う場所に打つことを心がけましょう。
 
当院では、インスリンの導入から、インスリンの管理まで行っております。
 
糖尿病やインスリンでお困りのことがあれば、どうぞご相談下さい。
 
 
 
「参考文献」
 
ノボノルディスクファーマ株式会社 フレックスタッチの使い方
 
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 ミリオペンの正しい使い方
 
Nikhil Tandon et al. Forum for Injection Technique and Therapy Expert Recommendations, India: The Indian Recommendations for Best Practice in Insulin Injection Technique, 2017 Indian J Endocrinol Metab. 2017
 
Wikipedia : NPH insulin
 
Jehle PM et al. Inadequate suspension of neutral protamine Hagendorn (NPH) insulin in pens. Lancet. 1999 Nov 6;354(9190):1604-7.
 
川崎 恵美 他 臨床使用における懸濁インスリン製剤の懸濁性に関する検討―保管環境と混和法の及ぼす影響― 糖尿病 2012年55巻10号 p.753-760
 
大谷 稔男 インスリンボール (特集 最近のトピックス2013 Clinical Dermatology 2013) — (最近話題の皮膚疾患) 臨床皮膚科 67(5), 18-22, 2013-04
 
 
 
 
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
 
 
 
 
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生
 

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