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超速効型インスリン投与のベストタイミング - 食後の高血糖を抑えるためには

超速効型インスリン投与のベストタイミング - 食後の高血糖を抑えるためには

公開日: 2019年12月13日

最終更新日: 2020年3月4日

 
糖尿病を発症し、インスリンの分泌が足りなくなると、食後の血糖値が上昇してきます。
 
食後高血糖を抑えるためには、超速効型インスリン(例:ノボラピッド、ヒューマログ)が用いられます。
 
ところで、超速効型インスリンは、食前、食直前、食後のどのタイミングで投与するのが良いのでしょうか?
 
答えとしては、
 
超速効型インスリンを、食前 15分~20分に投与すると、食直前の投与と比較し、食後高血糖が改善し、低血糖のリスクが少なくなることが報告されています。

 
食事の摂取量が不安定な場合には、超速効型インスリンを食後に投与することがあります。
 
しかし、食後投与は、食前投与と比較して、低血糖のリスクが高くなります。

 
特殊な場合を除き、超速効型インスリンは、食前15分から食前20分前に投与した方が良いでしょう。
 
 
超速効型インスリンを注射するベストタイミングとは
 
 

 
 
 
 

健常者のインスリンはどのように分泌されているの?

 
 
糖尿病は、インスリンの作用不足により、高血糖をきたす病気です。
 
日本人に多い糖尿病のタイプは、インスリン分泌が低下する小太り・非肥満の糖尿病です。
 
インスリンが不足し始めると、負荷のかかる食後に高血糖が認められるようになります。
 
食後高血糖の是正のために、インスリンを補充する際には、健常者のインスリン分泌と同じようになるように、インスリンを補充します。
 
そのため、健常者の一日のインスリン分泌がどうなっているのかを知っておく必要があります。
 
下図は、健常者のインスリン分泌の日内変動です。
 
インスリンには、基礎分泌と呼ばれる一日中分泌されている基礎インスリンと、食事に応じて分泌されている追加インスリン分泌の2種類があります。
 
食事摂取に伴い食後には急激にインスリンが分泌されていることが分かります。
 
インスリン分泌の日内変動
→ Polonsky KS. J Clin Invest. 1988
 
糖尿病になると、食後のインスリン分泌から徐々に低下していきます。
 
インスリンを補充する場合には、健常者のインスリン分泌動態に近づけるように、インスリンを補充します。
 
 
 
 

インスリン製剤の皮下注射後のインスリンの血中濃度

 
食後の高血糖を抑制するためのインスリン製剤で市販されているものには、2種類あります。

  • 速効型インスリン(レギュラーインスリン)
  • 超速効型インスリン(例:インスリンアスパルト(ノボラピッド)・インスリンリスプロ(ヒューマログ))

 
以上の2種類です。
 
速効型インスリンを素早く吸収できるように改良したものが、超速効型インスリンになります。
 
下の図は、インスリンアスパルト(ノボラピッド)とレギュラーインスリンを皮下注射した後のインスリンの血中濃度の推移のグラフです。、
 

インスリンアスパルト(ノボラピッド)、速効型インスリンを皮下注した場合のインスリン血中濃度の推移

縦軸:血中インスリン濃度(pmol/l)
横軸:時間(時)


D. Slattery et al. Diabet Med. 2018より引用
 
超速効型インスリンの方が、皮下注射した後の立ち上がりが急峻であり、生理的なインスリン分泌に近いことが分かります。
 
ちなみに、インスリンアスパルト(ノボラピッド)とインスリンリスプロ(ヒューマログ)の吸収スピードは変わりません。
 
インスリンアスパルトとインスリンリスプロの皮下注射後の血中濃度の比較

縦軸:インスリン濃度(pmol/l)
横軸:時間


D. Slattery et al. Diabet Med. 2018より引用
 
両薬剤は、多少薬価やデバイス(注射キット)は異なりますが、どちらの薬を使用しても、薬効は大差ありません。
 
 
 
 

超速効型インスリンの投与タイミングは、食前、食直前、食後のどれが良い?

 
超速効型インスリンは、食前、食直前、食後のどのタイミングで投与すべきでしょうか?
 
下の図は、1型糖尿病の方を対象にして、インスリンポンプを用いて、超速効型インスリンを、食前20分、食直前、食後(食事開始20分後)に投与した際の血糖推移をみたグラフです。
 

超速効型インスリンの投与タイミングによる食後高血糖の違い

縦軸:血糖値(mg/dl)
横軸:食事開始後の時間(分)


D. Slattery et al. Diabet Med. 2018より引用
 
図をみると、食前20分に投与した場合に、最も食後の血糖値の山が低くなりますね。
 
また、食後(食事開始20分後)に投与した際には、食前20分、食直前投与と比較し、低血糖が多く認められました。
 
今回は、1型糖尿病の方にインスリンポンプを用いて、超速効型インスリンをボーラス投与していますが、
 
インスリンポンプによるボーラス投与は、超速効型インスリンの皮下注射と非常に類似しているため、超速効型インスリンの皮下注射も応用が可能と考えられます。
 
以上をまとめると、超速効型インスリンは、食事摂取の少し前(15分から20分)に投与するのが良さそうですね。
 
 
 
 

食後の血糖推移に影響を与えるもの

 
食後の血糖値は、さまざまな影響を受けるため、毎回、同じような血糖推移になるとは限りません。
 
投与タイミングを考える上では、この点に注意を払う必要があります。
 
食後の血糖値は、次の影響を受けることが知られています。

  • 食事中の脂質・蛋白質の含有量
  • 食事の食べ方
  • 胃内容の排出速度
  • グリセミックインデックス

 
 

食事中の脂質・蛋白質の含有量

 
食事中の食物中の脂質や蛋白質の含有量が増えると、食後血糖に影響を及ぼすことが報告されています。
 
例を挙げると、糖質(炭水化物)の量が同じでも、脂肪や蛋白を多く含む食事は、食後の高血糖を持続させることが報告されています。(1)(2)
 
下の図は、1型糖尿病の小児に炭水化物の量は同量にして、脂質や蛋白質の量を変える事により、食後の血糖推移が変化することを示したものです。
 

食事摂取後の蛋白含有量・脂質含有量の違いによる血糖推移

縦軸:血糖値 (mg/dl)
横軸:食後時間(分)
(●) 脂質少/蛋白少
(♦) 脂質少/蛋白高多 (▲) 脂質多/蛋白少
(□) 脂質多/蛋白多


 
Carmel E.M. Smart et al. Diabetes Care. 2013より引用
 
炭水化物は消化されると、グルコース(血糖)となるため、食後の血糖値は、吸収後にすぐに上昇します。
 
蛋白質や脂質も多く摂取すれば、食後の血糖上昇を引き起こすという事ですね。
 
(蛋白質や脂質は、すぐに糖として利用はできませんが、時間をかければ、肝臓で糖に作り替えることができます。)
 
 

食事の食べ方

 
食事の食べる速度や順番によっても、食後血糖の上昇の程度は変化します。
 
→ 糖尿病の食事の食べ方 ー 肥満・食後高血糖・血糖スパイクを抑える方法
 
 

胃内容の排出速度

 
糖尿病の合併症により、内臓の神経障害が進むと、胃腸を支配している神経が障害され、胃不全麻痺という病気になることがあります。
 
簡単に説明すると、食事を食べた際には、胃で消化した後に、胃から十二指腸、小腸へ食物が移動してきますが、これが障害されてしまい、胃からなかなか食物が排泄されなくなります。
 
すると、食後の血糖の吸収に異常が生じます。
 
また、一部の薬剤(例:GLP-1受容体作動薬)には、胃の蠕動を抑える働きがあるものがあります。
 
超速効型インスリンを投与した際のインスリンの吸収スピードと食物の糖分の吸収スピードが合わなくなると、食後に低血糖をきたすことがあります。
 
 

グリセミックインデックス

 
グリセミックインデックス (glycemic index)とは、食品ごとの血糖値の上昇度合いを表した数値です。
 
同じ食材でも、料理方法が違えば、栄養の吸収のしやすさが変わります。
 
食品中の糖分を消化・吸収しづらいものほど、食後の血糖値の上昇は緩やかになります。
 
 
 
 
以上をまとめると、超速効型インスリンは、食後血糖を抑えて、低血糖を回避するためには、食前15分から食前20分に投与すべきと考えられます。
 
食事が食べれるかどうか分からない、糖尿病の神経障害で胃の動きが悪い方では、食後に投与したり、他の種類のインスリンを使用も考慮した方が良いと考えます。
 
 
 
 
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
 
 
 
 
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生
 

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