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インスリンボールとは – インスリン注射による皮膚の硬結 治療・改善方法の解説

インスリンボールとは – インスリン注射による皮膚の硬結 治療・改善方法の解説

公開日: 2019年12月17日

最終更新日: 2019年12月17日

 
インスリン皮下注射を行うと、時々、皮膚の下に塊ができます。
 
皮膚の下にできる塊には、アミロイドの沈着したインスリンボールと、脂肪が肥大したリポハイパートロフィーの2種類があります。
 
インスリンボールは、皮下にできる比較的硬い2cm ~ 5cmの塊です。
 
インスリンボールにインスリンを注射しても、インスリンは上手く吸収できません。
 
その結果、インスリンの単位数は多くなり、血糖コントロールは不安定になります。
 
防ぐためには、インスリンを同じ場所に続けて打つのを避け、正しい打ち方を覚えましょう。
 
インスリン注射をしている人は、時々、皮膚の下に塊がないかをチェックしましょう。
 
 
インスリンボールとインスリンアミロイドーシス
 
 

 
 
 
 

インスリンボールとは

 
インスリンの皮下注射を繰り返し行っていると、時々、皮膚の下に塊ができます。
 
この皮下にできる塊には、インスリンボールと、インスリンリポハイパートロフィー(インスリンによる脂肪肥大)があります。
 
インスリンリポハイパートロフィーは、脂肪の肥大したもののため、比較的柔らかい腫瘤です。
 
インスリンボールは、皮膚の下にインスリン由来のアミロイドが沈着した硬い腫瘤です。
 
 
 
 

インスリンボールのサイズ

 
インスリンボールの大きさは、多くの文献では、2cm ~ 5cmと報告されています。
 
下図は、インスリンボールの写真です。
 
インスリンアミロイドーシス
Nagase T et al. Am J Med. 2014
 
写真の腹部には、二つの丸いボール様の塊があり、これがインスリンボールです。
 
 
 
 

インスリンボールの頻度

 
インスリンボールの頻度は不明です。
 
インスリン治療中の糖尿病患者 182名を対象にして、インスリンによるアミロイドの沈着を調査した研究では、MRIによりアミロイド沈着が強く疑われた人は、約15%(28例)、そのうちの15例では、腫瘤を触知したと報告されています。
 
インスリンによりアミロイドが沈着するまでには、相応の時間が必要であり、調査した糖尿病患者さんの治療歴の影響を受けるため、このデータからでは、本来の頻度は分かりません。
 
インスリン使用中の糖尿病患者さんの数%と少なくない人には、インスリンボールがあると考えた方が良いでしょう。
 
 
 
 

インスリンボールができやすい人

 
インスリンボールの報告例は、10年以上のインスリン注射を使用している例が多いです。
 
インスリンの皮下注射を3年から4年使用した症例でも、アミロイドの沈着を起こした報告もあります。
 
 
 
 

インスリンボールができると、血糖コントロールが悪化する!?

 
インスリンボールができると、何か不具合があるのでしょうか?
 
インスリンボールの問題点は、皮下に注射したインスリンが吸収されなくなり、血糖コントロールが悪化することです。
 
下図は、患者さん4名(A.B.C.D)に、超速効型インスリン(ノボラピッド)10単位を、
 
黒丸:インスリンボールの部位に打った時
白丸:正常皮膚にインスリンを打った時
 
の血中のインスリン濃度の推移です。
 

インスリンボールとインスリンの血中濃度

縦軸:血液中インスリン濃度
横軸:時間(分)
A.B.C.D:別々の患者
黒丸:正常皮膚
白丸:インスリンボール


 
上の図をみると、人により程度の差はありますが、インスリンボールの所に打った場合には、インスリンが上手く吸収されていません。
 
インスリン注射を、インスリンボールの所に打っている人は、次の副作用があります。

  • 血糖コントロールが不安定になる。
  • インスリン量が多く必要になります。

 
具体的なインスリンの単位数としては、インスリンをインスリンボールの部位から、正常皮膚に注射すると、インスリンの平均1日単位数が、約34% 減少したと報告されています。(1)
 
インスリンの単位数は、インスリンボール部位への注射では、30単位 ~ 116単位であったものが、正常皮膚への注射では、17単位~35単位に減少しています。
 
 
 
 

インスリンボールができた時の対処法

 
インスリンボールができてしまった時の対処法です。
 
インスリンの吸収を良くするためには、インスリン注射をインスリンボールではない正常の皮膚に打ちます。
 
他の方法としては、インスリンボールの切除になります。
 
インスリンボールが自然に小さくなるかどうかを、MRIを用いて長期間(平均7年)観察した報告では、インスリンボールのサイズは、不変または軽度縮小したものが多数を占めていました。
 
インスリンボールが自然に退縮し、消失する事は、望めないと考えた方が良いでしょう。
 
 
 
 

インスリンボールができるのを防ぐには

 
インスリンボールができるのを防ぐには、同じ場所に続けてインスリンを打たない、打つ場所を変えるなどの正しくインスリンを打つことが必要だと考えられます。
 
→ インスリンの正しい打ち方 - 注射の手技や部位、気泡などの注意点の解説 の記事
 
 
 
 
以上が、インスリンボールについての解説になります。
 
当院では、インスリンの導入から、インスリンの管理まで行っております。
 
糖尿病やインスリンでお困りのことがあれば、ご相談下さい。
 
 
 
 
参考文献
 
Nagase T et al. Insulin-derived amyloidosis and poor glycemic control: a case series. Am J Med. 2014
 
Ansari AM et al. Current insight in the localized insulin-derived amyloidosis (LIDA): clinico-pathological characteristics and differential diagnosis. Pathol Res Pract. 2017
 
矢部 沙織 他 インスリン注射部位におけるインスリン由来アミロイドーシスにより著しい血糖コントロール悪化を認めた1例 糖尿病 2015年58巻1号 p.34-40
 

永瀬 晃正 科研インスリン由来アミロイドーシスの病態と発症メカニズムおよび構造と毒性の研究 科研研究報告書

 
 
 
 
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」の記事一覧
 
 
 
 
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生