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高齢者の高血圧の特徴とは|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

高齢者の高血圧の特徴とは

高齢者の高血圧の特徴とは|名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院|名東区の糖尿病専門医

高齢者の高血圧の特徴とは

公開日: 2021年8月5日

最終更新日: 2022年12月28日

 
高血圧は、年齢を重ねるにつれて多くなる病気です。
 
高血圧を治療せずに放置すると、生命に危険を及ぼしたり、生活の質(QOL)を損なう脳卒中や心筋梗塞などの重篤な病気をきたすリスクが高くなります。
 
高齢者は、中壮年者と比較し、全身の身体機能が低下しているなどの特徴があり、高齢者の血圧を管理する場合には、高齢者の特徴に配慮した対応が必要になります。
 
今回は、高齢者の高血圧の特徴について解説します。
 
 
高齢者の高血圧の特徴とは
 
 
 

高齢者における高血圧の有病率とは

 
2020年の時点では、日本の65歳以上の高齢者人口は、3617万人であり、総人口の28.7%を占めています。
 
その中でも75歳以上の人は、1871万人であり、全人口の14.9%を占めています。
 
高血圧は、年を取るごとに多くなる病気です。
 
平成30年国民健康・栄養調査によると、日本では、60歳代では、男性で72%、女性で51%が、70歳以上では男性で76%、女性で74%の人が、高血圧を患っています。
 
 
 

高齢者の高血圧はどんな病気のリスクになりますか?

 
高齢者の高血圧も、中壮年者と同じく、脳卒中や心筋梗塞などの血管の病気のリスクとなります。
 
高齢者では、認知症も生活の質(QOL)を損なう重大な問題です。
 
高血圧は、脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症などのさまざまなタイプの認知症のリスクを高めます。

 
また、腎機能も加齢に従い低下していることが多く、慢性腎不全などにも注意が必要です。
 
 
 

高齢者の高血圧の特徴とは

 
高齢者の高血圧は、中壮年者とは、次のように大きく異なる特徴があります。
 
 

高齢者の血圧は、動脈硬化をきたした結果、収縮期血圧が高くなりやすい。

 
高齢者の動脈は、加齢とともに、動脈硬化をきたし、弾力が減少しています。
 
体の中心を走行する大動脈は、心臓の拍動によって、血液が流れ込むと、大動脈は1割ほどゴムのように広がり、血液を一時的にため込むことができるようになっています。
 
加齢に伴う動脈硬化によって、大動脈が硬くなると、心臓のポンプ作用によって、流れ込んだ血液をため込みづらくなるため、心臓が収縮した時には、急激な血圧上昇をきたしやすくなります。
 
また、逆に拡張期には、血圧が下がりやすくなります。
 
その結果、収縮期血圧は高くなり、拡張期血圧が下がり、脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧)の差が大きくなります。
 
 

高齢者では内分泌系の機能が低下している。

 
また、血圧をコントロールしているレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系などの内分泌系の働きが低下し、60歳頃には、血液中のレニンは若い人の40%から60%に低下します。
 
その結果、血液中のアルドステロンも低下し、薬物による副作用で、高カリウム血症になりやすくなります。
 
 

高齢者は起立した時に血圧が下がりやすい。

 
高齢者では、自律神経系の働きが低下しており、起立した時に血圧が下がりやすくなります。
 
起立性低血圧は、起立してから3分以内に収縮血圧が少なくとも20mmHg、拡張期血圧が10mmHg低下する状態です。
 
高齢者の約18%には起立性低血圧を認めます。
 
起立性低血圧がなぜ問題かと言うと、起立した瞬間に血圧が下がり、脳への血流が不足し、転倒するなどのリスクになるためです。
 
 

高齢者は、塩分の過剰摂取により血圧上昇をきたしやすい。

 
高齢者では、中壮年者と比較し、腎臓の機能が低下しており、腎臓から尿中へと、ナトリウム(塩分)を排泄する能力が低下しています。
 
そのため、塩分を過剰に摂取すると、血圧が上昇しやすくなります。
 
 
 
高齢者の高血圧治療
 
 
 

高齢者の高血圧の治療について

 
高齢者の高血圧の治療も、壮年者と同じく、二次性高血圧を否定したのちに、生活習慣の改善、薬物療法によって治療します。
 
 

高齢者で注意すべき二次性高血圧

 
二次性高血圧は、別の病気や薬物の副作用によって血圧が高くなる高血圧を指します。
 
高齢者の二次性高血圧では、腎臓の動脈硬化により、腎臓への血液の流れが少なくなって生じる腎血管性高血圧や、原発性アルドステロン症や甲状腺の機能異常に伴う高血圧、薬物の副作用による高血圧に注意を払う必要があります。
 
薬物としては、漢方薬に含まれる甘草や、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、一部の抗がん薬などによる高血圧にも注意が必要です。
 
 

一般的な二次性高血圧の原因

  • 腎性高血圧(腎実質性疾患、腎嚢胞、腎腫瘍など)
  • 腎血管性高血圧(動脈硬化症、繊維筋性形成異常)
  • 副腎性高血圧(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫 他)
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
  • 神経性高血圧(心因性、家族性自律神経異常症、頭蓋内圧亢進)
  • 甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)
  • 高カルシウム血症
  • 先端巨大症
  • 薬物性高血圧(エストロゲン、副腎皮質ステロイド、抗うつ薬、NSAID等)

 
 

→ 高血圧症のタイプ 本態性高血圧と二次性高血圧の解説

 
 
 

高齢者の高血圧治療の注意点(生活習慣の改善)

 
高齢者でも、中壮年者と同じように、減塩、運動、体重減量、禁煙などの生活習慣の改善は、高血圧の治療として有用です。
 
高齢者では、四肢の筋力が低下したり、関節が悪いなど、全身の機能が低下していたり、他の病気を合併している場合もあるため、各人の病状に合わせて調節します。
 
→ 高血圧の治療法の解説
 
→ 高血圧の食事療法の解説
 
→ 高血圧の運動療法の解説
 
→ 高血圧とタバコ
 
 

高齢者の高血圧治療の注意点(薬物療法)

 
高齢者でも、高血圧の治療に使用する降圧薬は、中壮年者と同じ薬です。
 
ただし、高齢者は、中壮年者と比較し、腎機能が低下するなど、薬物代謝が低下してることが多く、薬が蓄積しやすく、薬の作用が強く出る点に注意が必要です。
 
そのため、降圧薬を使用する場合には、少量より開始します。
 
薬物の開始後には、起立時の血圧低下が生じる可能性があるため、起立時の血圧低下やふらつき、立ちくらみなどに注意を払う必要があります。
 
認知機能が低下している場合もあり、内服薬を1日1回にまとめ、合剤を使用するなど、飲み忘れを防ぎ、飲みやすくする工夫も必要です。
 
 
 

高齢者の高血圧の管理目標とは

 
高齢者でも中壮年者と同じように血圧を下げる事により、脳梗塞や脳出血など脳の血管の病気、心筋梗塞や心不全などの心臓の病気、あらゆる原因による死亡リスクが低下することが報告されています。
 
高血圧は認知症の発症のリスクになりますが、現時点では、高血圧の治療により、認知症の発症リスクを低下させるかは確定していません。
 
日本人は、他の国と比較して、高血圧の合併症として、脳卒中が多いことが知られており、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン 2019では、脳卒中の予防を考慮して、降圧目標が定められています。
 
高齢者の基本的な降圧目標は、65歳‐74歳の人では、130/80mmHg未満、75歳以上の人では、140/90mmHg未満が目標です。
 
ただし、高齢者の場合には、中壮年者と異なり、がんなどの他の病気を併存していたり、認知症が進行しているなど、他のさまざまな要素を加味して、降圧目標を決定します。

 
 
 

参考:高齢者で認められる食後低血圧とは

 
高齢者は、食後に血圧が下がり、意識消失をきたすことがあります。
 
メカニズムは明らかになっていませんが、食事に対する交換神経の反応の低下が関与していると考えられています。
 
予防のためには、食事をする間に水分摂取量を増やすか、食事を少しづつに分けて、食事回数を増やし、1日6回食べるなどの方法が用いられます。
 
 
 
以上です。
 
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
 
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。
 
 
 

参考文献
Satoshi Umemura et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019) Hypertens Res. 2019
 
Estefania Oliveros et al. Hypertension in older adults: Assessment, management, and challenges Clin Cardiol. 2020
 
Nikolaos Lionakis et al. Hypertension in the elderly World J Cardiol. 2012
 
 
 
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生
 

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