糖尿病によるだるさ(疲労感・全身倦怠感)の原因とは
糖尿病によるだるさ(疲労感・全身倦怠感)の原因とは
公開日: 2021年6月20日
最終更新日: 2022年12月29日
糖尿病による全身倦怠感は、一般的によく認められる症状です。
糖尿病による疲労感は、糖尿病の高血糖によって生じるものから、糖尿病の合併症によって生じるものなど、様々な原因で生じます。
糖尿病で疲労感を生じる原因としては、
以上のものが挙げられます。
糖尿病の全身倦怠感の治療の基本は、低血糖を避け、血糖コントロールを良好に保ち、バランスの取れた食生活と定期的な運動、十分な睡眠をとることです。
それでも改善しない場合には、原因の検索が必要なため、主治医の先生に相談しましょう。
目次
糖尿病は、インスリンの作用不足により、血糖値が高くなる病気です。
血糖値が高い状態が続くと、全身の血管が傷んだり、炎症が生じ、全身の臓器が故障してきます。
インスリンは、糖尿病の発症に非常に重要な働きをするホルモンです。
インスリンは、肝臓で作られる糖分の量を調節したり、血液中の糖分(血糖)を体(主に筋肉)の細胞に取り込ませる働きをしています。
インスリンの働きが弱くなると、肝臓が糖分を作りすぎたり、体(主に筋肉)の細胞に糖分を十分取り込ませる事ができなくなります。
→ 糖尿病はどんな病気? の記事
→ インスリンの解説
糖尿病による全身倦怠感は、一般的によく認められる症状です。
米国の調査では、糖尿病の約6割の人が、疲労感を感じていると報告されています。
糖尿病で体がだるくなる原因には、次のものが挙げられます。
では、それぞれについて解説します。
糖尿病になると、インスリンの作用不足で高血糖になることを先ほど説明しました。
インスリンの作用が極度に不足すると、細胞(主として筋肉)に糖分(ブドウ糖)を取り込めなくなり、エネルギー不足が生じます。
細胞に十分なブドウ糖が取り込めないと、疲労をきたす可能性があります。
糖尿病を治療する際に、血糖値を下げるために血糖降下薬を使用します。
血糖降下薬の代表的な副作用として、低血糖があります。
血液中の血糖値のレベルが下がりすぎると、脳や筋肉などで糖分が不足するため、疲労感を生じます。
また、低血糖の治療後に疲労を感じる場合があります。
→ 低血糖症 の解説
糖尿病は、初期には自覚症状をほとんど認めない病気ですが、糖尿病が悪くなり、非常に血糖値が高くなると、さまざまな症状を生じます。
代表的な症状は、次の通りです。
頻尿であれば、夜に何度もトイレに行く必要があり、睡眠不足となり、疲労感をきたします。
これらの症状は、間接的に、疲労感につながることがあります。
→ 糖尿病の自覚症状の解説
糖尿病を発症すると、全身に様々な合併症をきたします。
疲労をきたしうる糖尿病の合併症としては次の通りです。
糖尿病によって神経が障害されると、起立時に血圧が低下したり、足に壊疽ができたり、様々なことが生じます。
糖尿病性腎症は、初期には自覚症状を認めませんが、進行すると、腎臓から尿として体の外に老廃物を排泄できなくなります。
この状態は尿毒症と呼ばれ、体のだるさを生じます。
糖尿病では、脳の血管が詰まる脳梗塞や、各種の認知症のリスクが上昇します。
糖尿病による動脈硬化で、手足の血管が細くなると、筋肉が血流不足となり、疲労をきたします。
糖尿病になると、感染症に弱くなります。
感染による炎症が生じると、疲労感をきたす場合があります。
→ 糖尿病性腎症の解説
→ 糖尿病性神経障害の解説
→ 糖尿病と感染症の関係とは
糖尿病の方は、糖尿病でない人に比べて、うつ病や不安になりやすいと言われています。
糖尿病患者の大うつ病の有病率は、約12%と推定されており、軽度のうつ病、または、うつ症状は、15%~35%の人に存在します。(1)
うつ病の症状には、無気力、倦怠感、睡眠障害などがあります。
うつ病を発症すると、糖尿病の治療が困難となり、血糖コントロールが悪化したり、糖尿病の合併症を悪化させることがあります。
不安は、睡眠障害をひきおこします。
うつ・不安は、糖尿病に関連する疲労の原因です。
夜によく眠れないと、血糖コントロールが悪化し、太りやすくなります。
糖尿病患者では、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグ症候群、糖尿病神経障害による手足のしびれなどにより、十分な睡眠をとれない場合があります。
また、著しい高血糖がある場合は、尿量が増えて、夜間にトイレに何度も行くようになり、睡眠不足をきたします。
睡眠不足は、疲労の原因です。
2型糖尿病の成人では、身体活動が少ないほど、疲労感が強く傾向があることが報告されています。
2型糖尿病の疲労症状は、定期的な運動をおこなう事で改善できる可能性があることが示唆されています。
高血糖や肥満により、体に炎症が生じることが報告されています。
体に炎症が生じると、疲労感をひきおこしますが、運動を行うことで、血液中の炎症マーカー(CRP、IL-1β、TNF-αなど)が低下することが報告されています。
若い頃から体重が5kg以上増えた人や、肥満の人は、痩せている人や正常体重の人と比較し、糖尿病を発症しやすくなります。
肥満により疲労感が生じる原因には、次のものがあります。
糖尿病の人に使われる薬の副作用でも全身倦怠感を生じる場合があります。
例としては、コルチコステロイド、利尿薬、スタチン、β遮断薬などです。
糖尿病で全身倦怠感を認めた時には、低血糖を避け、良好な血糖コンロトールを保ち、睡眠を十分とるなど、規則正しい生活習慣を心がけます。
食事については、飽和脂肪酸とカロリー制限による体重の適性化、繊維成分の多い食事、オメガ脂肪酸の摂取などが有効である可能性が示唆されています。
運動については、主治医と相談して、定期的に行いましょう。
改善しない場合には、糖尿病の合併症、うつ病などの原因検索が必要です。
→ 糖尿病の運動療法 の解説
→ 糖尿病の食事療法 の解説
以上が、糖尿病による全身倦怠感の解説になります。
参考になれば幸いです。
糖尿病でお困りなら、糖尿病の専門家にご相談ください。
参考文献
Cynthia Fritschi et al. Fatigue in Adults with Type 2 Diabetes – An Overview of Current Understanding and Management Approaches Endocrinology 2012 他
→ 「糖尿病内科 in 名古屋」のブログ記事一覧
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文責・名古屋市名東区 糖尿病内科 アスクレピオス診療院 糖尿病専門医 服部 泰輔 先生