高血圧は、長期にわたり、動脈を中心とした血管に高い圧力が加わり続けることで、さまざまな合併症をひきおこす病気です。
健康診断で高血圧を指摘されたとき、自宅で血圧が高いことに気が付いたときは、はじめに、正しく血圧が測定できているかを確認しましょう。
そして、自宅で測定した血圧が135/85mmHg以上と高い場合は、あなたは高血圧症の診断になります。
高血圧の約9割は、本態性高血圧症と呼ばれる明らかな原因のない高血圧ですが、一部の人には、ホルモン異常などの原因がある高血圧(二次性高血圧と呼びます)の可能性があります。
二次性高血圧では、高血圧の原因を治療すると血圧が正常化したり、高血圧の治療方針が変わる場合があります。
そのため、高血圧の治療前に、二次性高血圧の鑑別が必要です。
高血圧は、ほとんど自覚症状のない病気ですが、ホルモンの異常が存在すると、さまざまな自覚症状を生じる場合があります。
最近、急に血圧が高くなったと感じたとき、血圧が高い以外の自覚症状を認めるときは、一度、高血圧の専門家に相談しましょう。
高血圧の治療は、生活習慣の見直しと、降圧薬による薬物療法がメインです。
生活習慣の見直しとしては、適性体重の維持、減塩(1日6g未満)、節酒、野菜や果物・魚などの摂取などの食事療法、定期的な運動、ストレス解消などが、血圧を下げるのに効果的です。
高血圧は、自覚症状がほとんどない病気ですが、放置すると、生命に危険を及ぼすような重篤な合併症を発症します。
高血圧は、放置せずに治療しましょう。
高血圧の治療を行う前に、自宅で血圧を測定しよう。
健康診断などので高血圧を指摘されたときは、初めに、自宅で血圧を測定しましょう。
高血圧の人の中には、白衣高血圧と呼ばれる診療所などで緊張してしまい血圧が上昇するタイプの高血圧の人がみえます。
白衣高血圧の人は、健康診断で著しい高血圧をきたし、医療機関への受診が推奨されることが多いのですが、健康診断で高血圧を指摘された場合には、ご自身で血圧を測定してみましょう。
自宅で測定した血圧が高くない場合には、白衣高血圧の疑いがあります。
白衣高血圧は、将来の血圧が高くなるリスクがあるため、白衣高血圧を認めた場合にも、医師に相談しましょう。
血圧が高くなった原因を検索しよう。
高血圧の約90%は、本態性高血圧と呼ばれる血圧が高くなった理由が不明の高血圧です。
しかし、一部の高血圧の人には、高血圧をきたしたホルモン異常などの病気や原因があります。
これらの何らかの原因のある高血圧は、二次性高血圧と呼ばれています。
二次性高血圧の人では、原因を除去することで血圧が正常化したり、最適な治療方法が変わる場合があります。
そのため、高血圧の治療前に、二次性高血圧の検索を行いましょう。
次は、二次性高血圧の例になります。
「二次性高血圧の例」
- 腎性高血圧(腎実質性疾患、腎嚢胞、腎腫瘍など)
- 腎血管性高血圧(動脈硬化症、繊維筋性形成異常)
- 副腎性高血圧(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫 他)
- 睡眠時無呼吸症候群
- 神経性高血圧(心因性、家族性自律神経異常症、頭蓋内圧亢進)
- 甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)
- 高カルシウム血症
- 先端巨大症
- 薬物性高血圧(エストロゲン、副腎皮質ステロイド、抗うつ薬、NSAID等)
二次性高血圧には一般に含まれませんが、肥満や若い頃からの体重増加も血圧が高くなる原因となります。
二次性高血圧かどうかは、病歴を聴取したり、血液検査などを行わないと分からない場合が多いのですが、下記の特徴がある方は、治療前に専門家に相談しましょう。
「二次性高血圧が疑われる人の特徴」
- ここ数年で血圧が上昇してきた人
- 若年者で高血圧を指摘された人
- 特徴的な血圧上昇パターンを認める人
- 高血圧以外の身体の異常や自覚症状を認める人
高血圧の治療は、高血圧の原因の除去、生活習慣の改善、薬物療法が中心です。
高血圧は、生活習慣病と呼ばれるように生活習慣がその発症や悪化に深く関与しています。
そのため、高血圧の治療には、悪い生活習慣を改めることが必要です。
高血圧の生活習慣の改善のポイントは次の通りです。
「高血圧の生活習慣の改善のポイント」
- 太りすぎや肥満の場合は、体重を減らす
- 食事内容を見直す(減塩、野菜・果物・魚の摂取)
- 定期的に運動する
- 禁煙、タバコを減らす
- アルコールを控える
- ストレスをため込まない
太りすぎや肥満の人は、体重を減らす
肥満の人や若い時から体重が増えた人では、血圧が高くなりやすくなります。
体重を減らすと、どのくらい血圧が下がるかについては、文献により差はありますが、体重を1kg減らすと、血圧は約1mmHg低下すると報告されています。
食事内容を見直す(減塩、野菜・果物・魚の摂取、アルコールを控える)
高血圧の食事療法では、減塩、野菜・果物・魚の摂取、アルコールを控えめにすることが必要です。
太りすぎ・肥満の人の場合は、体重を減らすために、カロリー制限も同時に行います。
詳細は、高血圧の食事療法の解説記事を参照して下さい。
「高血圧の食事のポイント」
- 適正なカロリー摂取
- 減塩(1日6g/日未満)
- 野菜や果物を摂取する
- コレステロールや飽和脂肪酸の取りすぎを避ける
- 魚を摂取する
- アルコールを控える。(純アルコール換算で1日20ml/日以下)
定期的に運動する
運動には、有酸素運動、レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)、ストレッチなどの種類があります。
有酸素運動、レジスタンス運動は、血圧を下げる効果があることが報告されています。
血圧が高い人は、適度な運動を1日30分以上、できれば毎日、定期的に行いましょう。
10分以上の運動であれば、合計1日30分以上でも問題ありません。
運動前には、ケガ防止のために、5分~10分のウォームアップを行いましょう。
禁煙、タバコを減らす
タバコの煙には、血管の壁を傷つける有害物質が含まれており、動脈硬化を促進します。
タバコは、脳卒中や心筋梗塞などの高血圧の血管合併症のリスクを上昇させます。
タバコは、なるべく減らしましょう。
ストレスをため込まない
急性のストレスは一時的な血圧上昇の原因になりますが、おそらく高血圧の原因にはなりません。
慢性的なストレス、特にストレスに対して適応できない場合には、高血圧を引き起こす可能性が高いと考えられています。
瞑想や音楽療法などを行い、ストレスを緩和すると、血圧が低下することが知られています。
定期的な運動と十分な睡眠もストレス解消に役立ちます。
高血圧の薬物療法(高血圧の薬の選び方)
高血圧の薬は、一般的に、降圧薬と呼ばれます。
高血圧の合併症の予防効果のほとんどは、血圧を適性範囲に下げられるかどうかで決まります。
そのため、降圧薬を選択する際には、血圧を目標値まで下げられるかどうかが最も重要です。
また、医師は、血圧の薬を処方する場合に、次のことを念頭において処方しています。
高血圧の薬の選択基準
- 降圧作用(主作用)
- 副次的効果(プレイオトロピック効果)
- 薬に対するアレルギーの有無
- 他の薬との相乗作用
- 薬の副作用
- 薬価
降圧薬には、さまざまな薬が販売されていますが、薬の種類によって、血圧の下がり方が異なったり、効いている時間が異なることが知られています。
同じ種類の薬を増量すれば、より血圧が下がることが多いのですが、同じ種類の薬は増量するにつれて、効果が頭打ちとなり、徐々に血圧が下がりにくくなります。
一方で、薬の副作用は、薬を増量すれば増量するだけ、起きやすくなるため、同じ種類の薬を増量する代わりに、複数の種類の薬を併用する場合があります。
降圧薬の中には、心臓や腎臓などの臓器を保護する働きを持つものがあったり、尿酸値を下げるなどの別の良い効果をもつものがあります。
この本来の効果以外に期待できる良い効果を、副次的効果と呼びます。
この降圧薬の副次的効果も、どの降圧薬を処方するかのポイントになります。
血圧が高いことに気づいたときの対応と高血圧の治療法の解説は、以上です。
アスクレピオス診療院では、糖尿病や高血圧の生活習慣病の専門家が治療に当たっています。
高血圧のことでお困りなら、当院にご相談ください。